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9.宿題
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「ふぅ」
宿題を終わらせて鉛筆を置いたら、寝そべりながら理科の教科書を読んでいたハムアキラが飛び起きた。
「心晴、終わったか?」
「うん。あとは明日の準備をしたら遊べるよ」
「やったなのじゃ!」
いそいそと教科書を閉じて片付け始めるハムアキラ。私も急いで終わらせようと時間割を手に取ったところで、今日あったことを思い出して手を止めた。
「あっ……」
「どうかしたのじゃ?」
ハムアキラがきゅるんとした瞳で私を見上げる。
どうしよう。言ってもいいのかな。
ハムアキラは、私の反応を待っているのか何も言わない。
「その、ランドセルの中から、教室の中見てなかったの?」
「見つかったら心晴が困ると聞いて、ちゃんとランドセルの中で気配を殺して眠っておったよ」
「そっか……」
私は迷った末に今日あったことを最初から話していく。
「今日、ハムアキラが言った通りに雨が降ったじゃない?」
「うむ。わしの見立て通りじゃ」
腕は錆びついてはおらぬのじゃ、とハムアキラは満足げに頷く。
「クラスメイトに今日雨が降るって言っちゃったんだ」
「ほう、それで?」
「なんでわかったかって聞かれて、占いでって言ったの」
「心晴が占ったと言ったのかの?」
「ううん。でも、ちゃんと伝えられなくて、占いが出来るなら占って欲しいって言われたの。ハムアキラ、どうしたらいい? ハムアキラの占いって、難しいんだよね?」
「心晴はどうしたいのじゃ?」
答えられなくて黙り込んだ私を、ハムアキラはまっすぐに見つめる。
「心晴がどうしたいのかわかったら、わしも手伝えるかもしれぬ」
ハムアキラのつぶらな瞳が、優しげな色を宿す。
言って、いいのだろうか。
田辺さん達のお願いを断わって嫌われるのは怖いけど、ハムアキラに嫌われるのはもっと嫌だ。私の気持ちを読んだように、ハムアキラは言う。
「わしらは『友達』なのじゃろ? 友達ならば困った時は、助け合うのじゃ。これも、違うのか?」
「そんなことない、ハムアキラ……、ありがとう……!」
そっとハムアキラを両手の上に乗せると、頬ずりをした。
「わぁぁぁ、心晴、急に高いのじゃ!」
「あっごめんなさい」
そっとハムアキラを机の上に下ろして、改めてお願いする。
「お願い、ハムアキラ、助けてくれる?」
「うむ、もちろんなのじゃ!」
力強く頷くハムアキラは小さいのに、とても心強かった。
宿題を終わらせて鉛筆を置いたら、寝そべりながら理科の教科書を読んでいたハムアキラが飛び起きた。
「心晴、終わったか?」
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「あっ……」
「どうかしたのじゃ?」
ハムアキラがきゅるんとした瞳で私を見上げる。
どうしよう。言ってもいいのかな。
ハムアキラは、私の反応を待っているのか何も言わない。
「その、ランドセルの中から、教室の中見てなかったの?」
「見つかったら心晴が困ると聞いて、ちゃんとランドセルの中で気配を殺して眠っておったよ」
「そっか……」
私は迷った末に今日あったことを最初から話していく。
「今日、ハムアキラが言った通りに雨が降ったじゃない?」
「うむ。わしの見立て通りじゃ」
腕は錆びついてはおらぬのじゃ、とハムアキラは満足げに頷く。
「クラスメイトに今日雨が降るって言っちゃったんだ」
「ほう、それで?」
「なんでわかったかって聞かれて、占いでって言ったの」
「心晴が占ったと言ったのかの?」
「ううん。でも、ちゃんと伝えられなくて、占いが出来るなら占って欲しいって言われたの。ハムアキラ、どうしたらいい? ハムアキラの占いって、難しいんだよね?」
「心晴はどうしたいのじゃ?」
答えられなくて黙り込んだ私を、ハムアキラはまっすぐに見つめる。
「心晴がどうしたいのかわかったら、わしも手伝えるかもしれぬ」
ハムアキラのつぶらな瞳が、優しげな色を宿す。
言って、いいのだろうか。
田辺さん達のお願いを断わって嫌われるのは怖いけど、ハムアキラに嫌われるのはもっと嫌だ。私の気持ちを読んだように、ハムアキラは言う。
「わしらは『友達』なのじゃろ? 友達ならば困った時は、助け合うのじゃ。これも、違うのか?」
「そんなことない、ハムアキラ……、ありがとう……!」
そっとハムアキラを両手の上に乗せると、頬ずりをした。
「わぁぁぁ、心晴、急に高いのじゃ!」
「あっごめんなさい」
そっとハムアキラを机の上に下ろして、改めてお願いする。
「お願い、ハムアキラ、助けてくれる?」
「うむ、もちろんなのじゃ!」
力強く頷くハムアキラは小さいのに、とても心強かった。
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