心晴と手乗り陰陽師

乙原ゆん

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7.学校(3)昼休み

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 給食の時間が終わって食器を片付けると、こっそり取り分けておいたパンのかけらを持ってランドセルへと向かった。
「ハムアキラ、大丈夫?」
「うきゅぅ……お腹が減ったのじゃ」
 ハムアキラはランドセルの中でぐったりしていた。
「大丈夫? ごめんね、ちょっとしかないけど、これ食べて」
「おぉ! ありがとうなのじゃ!」
 途端に元気を取り戻し、パンにかじりついた様子に安心する。
「あと二時間だから、そのまま待っててね」
「うむ、わかったのじゃ」
 あんまり長くランドセルの前にいるのもおかしいから、そっと蓋を閉めて席に戻ると図書館の本を取り出した。
 昼休み、ほとんどの男子と女子の半数は校庭に遊びに行っている。残った子達は教室の中でおしゃべりしたり手紙をやり取りしたりしていた。ちょっとうらやましく思いながら、黙って本を開く。
 もう少しで昼休みが終わるという時間だった。バラバラとすごい音が聞こえて顔を上げると、さっきまで晴れていた空が暗くなり一気に雨が降って来ていた。
「窓、閉めなきゃ!」
 田辺さんが窓際に急いでいるのを見て、私も一緒に窓を閉めに行く。
「すごい、ハムアキラの予報、あたったんだ」
 校庭に出ていたクラスメイトが教室へと駆け込んできた。
「まじで雨が降ってきた」
「むっちゃ濡れたし」
「藤崎、すげー!」
 四限目の終わりに話した男子達の声を聞いて、他の子が集まってくる。
「何、藤崎さんがどうしたの?」
「昼から雨降るって、天気を当てたんだ」
「天気予報見てきたんじゃなくて?」
「予報は晴れだったぜ」
「なら、すごいじゃん!」
「藤崎さん、どうやって当てたの?」
「えっと、占いで……友達が……」
 一気に皆の視線が集まって、言葉がうまく出てこない。
「え、藤崎さん、占い出来るの⁉」
「天気予報より当たる占いってすごいじゃん」
「ねぇ、占いって私の事占える?」
「あ、瑠奈、ずるい」
「私も今度占ってよ」
「えっと……」
 返事をしようとしたところで、先生が教室へ入ってくる。
「雨が降ってきたから五限目は、体育館に変更だ」
「よっしゃー!」
 短距離走が嫌いと言っていた男子が喜び、先生が苦笑する。
「皆まだ着替えてないようだが、遅刻はしないようにな」
「はい!」
 皆の視線が時計に行き、慌てて席に戻っていく。
 占ってって言われたけど、どうしよう。体操服を取り出しながら、帰ってからハムアキラに相談しようと思っていると、視線を感じた。
 振り向くと土御門君と目が合った。それは一瞬のことで、すぐに視線は外れて背を向けられる。男子は隣のクラスで着替えるから、隣のクラスの女子と入れ違いに、体操服を持って教室を出ていった。
 占いに興味があるようにも見えないし、気のせい、かな……?
 たまたま、目があっただけだよね……?
 考えるけれど、心当たりはない。
 その時、予鈴が鳴った。私は遅刻しないよう、慌てて体育館に向かった。
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