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第3章 校外学習で色々稼ごう

44.不思議な猫

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「おお、エンセリアとティアナじゃないか」

 森の中からエンセリアとティアナの姿が見えたので俺は朝のあの門の近くから声を掛ける。

 日はもう沈みかけていて、空は茜色に染まり始めていた。

「遅くなりました」

「いや、日が沈む前だから遅れてはいないから大丈夫だし、ボク達は記憶転移メモリアルテレポートで尚且つ早めに切り上げて来たからな」

 俺がそういい大丈夫だと言ったのだが、さっきからずっと小走りでこちらに来てくれる。

 近づくにつれ、エンセリアが白い何かを抱えてることに気がつく。

「見るんだぞ! これは森の中で拾ってきたんだぞ~」

 抱えていたのは白猫のようだった。

「可愛い~! 私たちが会ったのは魔物達が2回だけだったよ」

 カリスがエンセリアの持つ猫を撫で始める。

「私たちは魔物達に5回も会いました。そして、帰り道でこの白猫に会いましたね」

「よく、そんな魔物がよくでるところでこんな戦闘力が無さそうな猫がいたものだな」

 森は冒険者が護衛に何人かついて商人は街を行き来したり、防壁で街とは別々にしたりというように決して安全な環境とはとても言い難い。そんな環境でよく生きながらえたと関心した。

「それでカリスとセシリアに相談なんだけど、ボク達でこの子を保護しないか? このままこの森にいたら危ないと思うんだぞ」

「私はエンセリアさんの意見に賛成しました。それでセシリアさんとカリスさんはどうでしょうか?」

 どうやらティアナとエンセリアの方では保護という方向で決まっているらしい。
 俺としても、猫はどちらかと言うと好きなので歓迎だ。

「私は構わないよ」

 カリスも快く賛成してくれたようだ。

「ボクも歓迎という方向なんだが、一応病気とか怪我とかが無いか調べさせてくれ」

 そう言い俺はエンセリアから猫を渡してもらった。
 そして、芝生より少し草が茂ってて踝くらいまで丈がある草むらに寝かせる。

 念のため先に、本当に猫か確かめる。
 ダンジョンの下層には魔法やスキルを使うものがいるらしいから、ないとは思うがこれが罠で何らかの魔法が仕掛けられているような類いだと困るからだ。

 その可能性は低いと思うが念の為だ。

 高位魔法効果開示エフェクトオープンを使い魔法が使われてないか調べる。これなら並大抵の術者では事前にされることを分かって数日かけて対策して特定魔法スペシフィック抵抗レジストを構築しなければ対応出来ないレベルの魔法だ。

 それほど高位な魔法は魔法陣を幾つか作って周りから魔力を大量に集めて、しっかり調整を施さなくてはならない。

 まだ魔力の残量も帰りに気分で何となく使った記憶転移メモリアルテレポートを除けば使ってないも同然である故に八割と少し程度あると思う。それに必要な分の魔力を集めるための魔力としては予定では3割程度なので十分だ。
 あとの五割はあと1回だけ転移できる程度の魔力を残しておく。そうしないと何かあった時に何も出来ないからな。


 早速俺は実行に移す。

 地面に並行の魔方陣が6個ほど浮かんでくる。大きさは大きいもので数メートルほどのものだ。

 そして、俺の目の前には白い光の板のようなものが出現する。もしもだがあの猫に魔法があったとした時にはその魔法の効果が表示される仕組みだ。

 10秒ほどすると魔方陣の色が黒っぽくなる。これで準備完了だ。

 魔方陣で集まった魔力をその魔法のものへと利用していく。

 もちろん、白い光の板のようなものには何も――!?


 俺が目にしたのは文字が表示された板だった。

 そこに書かれていた内容は『本来の姿(人間)から白猫に自身の意思で解除するまで化ける効果を持続』というものだった。

 つまり、これは猫ではなく誰かということだ……。
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