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37 熊さんとお嬢さんと男臭 ※R15
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「ん……ふ、あん……」
「はっ……あ、ぁあ……」
感極まったようなアレキサンダーが夢中になってアビゲイルの舌を貪りながら、彼女の細腰に腕を回してきた。ぎゅっと体を密着させられて、アレキサンダーの固い胸板の上でアビゲイルの豊麗な胸が形を変える。
そろそろと伸びてきたアレキサンダーのもう片方の手がアビゲイルの胸に触れ、その大きな手にようやく収まるような大きさのそれをやわやわと揉み始めた。
「あっ……んぅ……」
薄いブラウス越しに揉みながら、ごつごつした指先で先端を探して、とうとう見つけるとぐりぐりと弄び始める。アビゲイルは思わずアレキサンダーから唇をちゅっと離して抗議めいた目で睨んだ。
「んぁっ……ん、ふぅん……もう、だめですよ……」
「どうして……」
「……もう、アレク様のエッチ。今日はキスだけ」
「……すまん」
抗議するアビゲイルを宥めるようにその背をアビゲイルの胸から離した大きな手で撫でるアレキサンダーがなんだか優しくてきゅんとしてしまう。
もう今朝までの腕の痛みも忘れて、アビゲイルはアレキサンダーの首に腕を回して抱き着いた。応えるように抱きしめ返してくれるのが嬉しいし、大きな体で抱きしめてくれるのが気持ちよくてくらくらしてくる。
「……お母様を説得しなくちゃ」
「ああ、そうか……そういえば、アビーは家出してきたんだった」
「ラリマール殿下に連れ出されただけなんですけどね。けれど、いつまでもギスギスしてるの嫌ですし、居なくなって心配してるだろうし、今日にも帰らないと。ラリマール殿下の魔法陣、ちょっと嫌だけど馬車よりは早く着きますものね……やだけど」
「……帰ってしまうのか」
「ええ……寂しい? アレク様」
「寂しい……な」
「ん……じゃあ、なるべく早く戻って来れるように、家族を説得します」
「……ありがとう。けれど、無理はしないでくれ」
「浮気しちゃ嫌ですからね。プロのお姉さんも禁止です。お褥役の女性がお部屋に居ても帰してくださいね。あっ、もちろん乱暴は駄目ですよ?」
「それは勿論……。君こそその、都の見目麗しい男性陣には……」
「大丈夫です。もう放蕩は卒業しましたもの」
顔を見合わせてお互いにクスクスと笑ってから、今一度唇を合わせ始めた。
心を寄せ合わせた相手とのキスはどれだけしても気持ちいい。ときどき息をするのを忘れてしまうくらいに。キスだけのはずだったのに体が熱くなる。
そういえば今は午前中なのだけれど。キスだけ、なんて言ってしまったけども。正直もうこのまま抱かれちゃってもいいかなあなんて。
唾液の糸を引きながら唇を離すと無謀にも気を許し、自らブラウスのボタンをはずしかけたとき、コンコンと部屋のドアにノックの音が響いた。
「殿、そろそろお仕事の時間でございます……」
家令や執事というものは、主人に断りなく部屋への入室ができるものなのだが、主人であるアレキサンダーがアビゲイルと二人きりで部屋に居るからか、気を利かせてドア越しに声をかけている。
そういえば、自分はいいとしてアレキサンダーには領主として、辺境騎士団総団長としての仕事があるのだった。アビゲイルはその気になって脱ごうとした自分が恥ずかしくなった。酩酊していたような気分が一気に覚醒する。
タイムリミットの訪れに一つ二つ外してしまったブラウスのボタンを慌てて留めようとしたが、慌てすぎてうまくいかない。
その様子を見て、クス、と笑ったアレキサンダーが大きな手とごつごつした太い指で器用にアビゲイルの小さなボタンを留めてくれた。
その日、辺境騎士団の闘技場に現れたアレキサンダーの傍らにこのあたりでは滅多にいない美姫が寄り添っているのを見て、騎士たちは目を見開くとともに色めきだった。
「誰だあの美人」
「総団長のお客だそうだ」
「都のお姫様だろう、あの細っこさ」
「そんなお姫様がこんな筋肉祭りみたいな鍛錬場に、一体何の用で……」
「そんな方がいついらしたのだ?」
「ラリマール殿下がつれてきたそうだ」
「成程、あの人の気紛れね」
今日は騎士団の鍛錬があるとのことで、騎士団の鍛錬というものを見たことがないとアビゲイルが言ったので、「じゃあ見学に来るか?」とアレキサンダーに誘われた。
一応そばに家令のジェフと侍女らについてきてもらったので、アレキサンダーがアビゲイルのそばを離れても不自由はないようになっている。
闘技場の客席に座って辺境騎士団の鍛錬風景を見守る。アレキサンダーが号令をかける中、騎士たちが一糸乱れぬ剣裁きを繰り出している。
広い闘技場内で怒号のような号令と掛け声が響く、いわば男臭い空間を見守るアビゲイルの横に、何故か満面の笑みを浮かべた家令のジェフと、侍女が二人控えてアビゲイルの世話をしてくれている。
基礎体力のトレーニング、剣術の型の訓練ののち、二人一組となっての体術の組手。
ジェフが騎士らが訓練に取り組む様子を、型と技の名称や由来などを交えてアビゲイルに説明してくれるので勉強になる。
流石に隣国との国境警備の要であり、土地柄魔物も多く出没するため、彼ら辺境騎士団と呼ばれる騎士らの体術や剣術は、帝都の騎士団とは違ってより実践的で、ともすれば殺傷能力の高い技も多いのが特徴のようだ。
もちろん殺傷能力の高い技の練習などは、武器は木剣に布を巻いたような物を使っているようなので問題はないらしいが、どの技ももし真剣でヒットしていたら致命傷になりうるようなものばかりで、アビゲイルはちょっとした畏怖を感じていた。
けれどもその目はおよそ貴族の淑やかな令嬢のものじゃなくて、いわば研究者のような観察眼で彼らを見て、疑問をジェフに投げかけるアビゲイルの姿を、ジェフや侍女などは驚いていたようだ。
それは女優であった前世において、いろんな役を演じるにあたり、アクションも研究していたことがあるので、その癖が出てしまっているなあとアビゲイルは苦笑した。
小休憩を挟んだのち、模擬試合をすることとなった。
アレキサンダーは模擬試合の勝ち抜き戦での優勝者との勝負となるようで、辺境騎士団総団長であるアレキサンダーと闘えるとあって、騎士の皆が地響きが起こりそうなほどの声で喜びの雄たけびをしていた。
「アレク様はこの屈強な皆さまの中で一番お強いのね」
「左様でございます、姫君。騎士らはみな殿に憧れて入団してきた者ばかりでして」
「殿様は男子には人気があるんですけれどもねえ。私ら使用人にもお優しいし、立派な御領主様なんですが、女性にあまり人気がおありでないので」
「そうですな。姫君が殿を見初めてくださって、私どもも胸を撫でおろしておりますぞ」
「見初めたって……」
ちら、とアレキサンダーのほうを見ると、こんなに離れた位置にいるのに、アビゲイルの視線に気が付いてくれたらしく、こちらを見てウルトラマリンブルーの目を細めてニコリと笑ってくれた。
はあ……日の光の中で見ると、あのウルトラマリンブルーの瞳は一層綺麗だ。
あの綺麗な瞳の偉丈夫が、さっき彼氏になってくれた人だと思うと頬に熱がこもる。
思わずにやけてしまった顔をやっとのことで引き締めて、アレキサンダーに向かって手を小さく振ると、向こうも振り返してくれたのが嬉しい。
アレキサンダーはそのことに気付いたらしい傍らにいた部下の騎士に何やら冷やかされているようだったけれど。
と、アビゲイルの近くに何やら風を切るような音がして、巻き上がったつむじ風とともに青いローブ姿の美丈夫が姿を現した。隣国ルビ・グロリオーサ王弟ラリマールその人であった。
「……やあ、アビゲイルちゃん。また今日は男臭い場所にいるねえ」
「ラリマール殿下、おはようございます」
「どう、守備は?」
「守備とはなんですの?」
「あれ、昨日アレックスと目くるめく夜を過ごしたんじゃないの?」
「……え」
「あれ? 君たちにもっと仲良くなってもらいたくて、アレックスを焚きつけてやったんだけど」
へらりと言ったラリマールに、アビゲイルがぽかんとした表情で見ている中、ジェフが慌てて会話に混ざってきた。
「あ、あの、ラリマール殿下。そのことに関して、私どものほうでもちょっとした行き違いのような物がございまして……!」
「え、行き違い?」
かくかくしかじかを話し出すジェフに、ラリマールは聞いていくうちにぶふぉーと噴き出して大爆笑していた。
そんなラリマールを見てアビゲイルは、昨夜のアレキサンダーの怒りの原因はこの人にもあるのかと頭が痛くなったりもした。
まあでも、あの件があったからアレキサンダーとの仲が進展したのは確かで、まさに怪我の功名なのかなあと、アビゲイルはまだ鈍い痛みが残る右肩をそっとさすり上げた。
「はっ……あ、ぁあ……」
感極まったようなアレキサンダーが夢中になってアビゲイルの舌を貪りながら、彼女の細腰に腕を回してきた。ぎゅっと体を密着させられて、アレキサンダーの固い胸板の上でアビゲイルの豊麗な胸が形を変える。
そろそろと伸びてきたアレキサンダーのもう片方の手がアビゲイルの胸に触れ、その大きな手にようやく収まるような大きさのそれをやわやわと揉み始めた。
「あっ……んぅ……」
薄いブラウス越しに揉みながら、ごつごつした指先で先端を探して、とうとう見つけるとぐりぐりと弄び始める。アビゲイルは思わずアレキサンダーから唇をちゅっと離して抗議めいた目で睨んだ。
「んぁっ……ん、ふぅん……もう、だめですよ……」
「どうして……」
「……もう、アレク様のエッチ。今日はキスだけ」
「……すまん」
抗議するアビゲイルを宥めるようにその背をアビゲイルの胸から離した大きな手で撫でるアレキサンダーがなんだか優しくてきゅんとしてしまう。
もう今朝までの腕の痛みも忘れて、アビゲイルはアレキサンダーの首に腕を回して抱き着いた。応えるように抱きしめ返してくれるのが嬉しいし、大きな体で抱きしめてくれるのが気持ちよくてくらくらしてくる。
「……お母様を説得しなくちゃ」
「ああ、そうか……そういえば、アビーは家出してきたんだった」
「ラリマール殿下に連れ出されただけなんですけどね。けれど、いつまでもギスギスしてるの嫌ですし、居なくなって心配してるだろうし、今日にも帰らないと。ラリマール殿下の魔法陣、ちょっと嫌だけど馬車よりは早く着きますものね……やだけど」
「……帰ってしまうのか」
「ええ……寂しい? アレク様」
「寂しい……な」
「ん……じゃあ、なるべく早く戻って来れるように、家族を説得します」
「……ありがとう。けれど、無理はしないでくれ」
「浮気しちゃ嫌ですからね。プロのお姉さんも禁止です。お褥役の女性がお部屋に居ても帰してくださいね。あっ、もちろん乱暴は駄目ですよ?」
「それは勿論……。君こそその、都の見目麗しい男性陣には……」
「大丈夫です。もう放蕩は卒業しましたもの」
顔を見合わせてお互いにクスクスと笑ってから、今一度唇を合わせ始めた。
心を寄せ合わせた相手とのキスはどれだけしても気持ちいい。ときどき息をするのを忘れてしまうくらいに。キスだけのはずだったのに体が熱くなる。
そういえば今は午前中なのだけれど。キスだけ、なんて言ってしまったけども。正直もうこのまま抱かれちゃってもいいかなあなんて。
唾液の糸を引きながら唇を離すと無謀にも気を許し、自らブラウスのボタンをはずしかけたとき、コンコンと部屋のドアにノックの音が響いた。
「殿、そろそろお仕事の時間でございます……」
家令や執事というものは、主人に断りなく部屋への入室ができるものなのだが、主人であるアレキサンダーがアビゲイルと二人きりで部屋に居るからか、気を利かせてドア越しに声をかけている。
そういえば、自分はいいとしてアレキサンダーには領主として、辺境騎士団総団長としての仕事があるのだった。アビゲイルはその気になって脱ごうとした自分が恥ずかしくなった。酩酊していたような気分が一気に覚醒する。
タイムリミットの訪れに一つ二つ外してしまったブラウスのボタンを慌てて留めようとしたが、慌てすぎてうまくいかない。
その様子を見て、クス、と笑ったアレキサンダーが大きな手とごつごつした太い指で器用にアビゲイルの小さなボタンを留めてくれた。
その日、辺境騎士団の闘技場に現れたアレキサンダーの傍らにこのあたりでは滅多にいない美姫が寄り添っているのを見て、騎士たちは目を見開くとともに色めきだった。
「誰だあの美人」
「総団長のお客だそうだ」
「都のお姫様だろう、あの細っこさ」
「そんなお姫様がこんな筋肉祭りみたいな鍛錬場に、一体何の用で……」
「そんな方がいついらしたのだ?」
「ラリマール殿下がつれてきたそうだ」
「成程、あの人の気紛れね」
今日は騎士団の鍛錬があるとのことで、騎士団の鍛錬というものを見たことがないとアビゲイルが言ったので、「じゃあ見学に来るか?」とアレキサンダーに誘われた。
一応そばに家令のジェフと侍女らについてきてもらったので、アレキサンダーがアビゲイルのそばを離れても不自由はないようになっている。
闘技場の客席に座って辺境騎士団の鍛錬風景を見守る。アレキサンダーが号令をかける中、騎士たちが一糸乱れぬ剣裁きを繰り出している。
広い闘技場内で怒号のような号令と掛け声が響く、いわば男臭い空間を見守るアビゲイルの横に、何故か満面の笑みを浮かべた家令のジェフと、侍女が二人控えてアビゲイルの世話をしてくれている。
基礎体力のトレーニング、剣術の型の訓練ののち、二人一組となっての体術の組手。
ジェフが騎士らが訓練に取り組む様子を、型と技の名称や由来などを交えてアビゲイルに説明してくれるので勉強になる。
流石に隣国との国境警備の要であり、土地柄魔物も多く出没するため、彼ら辺境騎士団と呼ばれる騎士らの体術や剣術は、帝都の騎士団とは違ってより実践的で、ともすれば殺傷能力の高い技も多いのが特徴のようだ。
もちろん殺傷能力の高い技の練習などは、武器は木剣に布を巻いたような物を使っているようなので問題はないらしいが、どの技ももし真剣でヒットしていたら致命傷になりうるようなものばかりで、アビゲイルはちょっとした畏怖を感じていた。
けれどもその目はおよそ貴族の淑やかな令嬢のものじゃなくて、いわば研究者のような観察眼で彼らを見て、疑問をジェフに投げかけるアビゲイルの姿を、ジェフや侍女などは驚いていたようだ。
それは女優であった前世において、いろんな役を演じるにあたり、アクションも研究していたことがあるので、その癖が出てしまっているなあとアビゲイルは苦笑した。
小休憩を挟んだのち、模擬試合をすることとなった。
アレキサンダーは模擬試合の勝ち抜き戦での優勝者との勝負となるようで、辺境騎士団総団長であるアレキサンダーと闘えるとあって、騎士の皆が地響きが起こりそうなほどの声で喜びの雄たけびをしていた。
「アレク様はこの屈強な皆さまの中で一番お強いのね」
「左様でございます、姫君。騎士らはみな殿に憧れて入団してきた者ばかりでして」
「殿様は男子には人気があるんですけれどもねえ。私ら使用人にもお優しいし、立派な御領主様なんですが、女性にあまり人気がおありでないので」
「そうですな。姫君が殿を見初めてくださって、私どもも胸を撫でおろしておりますぞ」
「見初めたって……」
ちら、とアレキサンダーのほうを見ると、こんなに離れた位置にいるのに、アビゲイルの視線に気が付いてくれたらしく、こちらを見てウルトラマリンブルーの目を細めてニコリと笑ってくれた。
はあ……日の光の中で見ると、あのウルトラマリンブルーの瞳は一層綺麗だ。
あの綺麗な瞳の偉丈夫が、さっき彼氏になってくれた人だと思うと頬に熱がこもる。
思わずにやけてしまった顔をやっとのことで引き締めて、アレキサンダーに向かって手を小さく振ると、向こうも振り返してくれたのが嬉しい。
アレキサンダーはそのことに気付いたらしい傍らにいた部下の騎士に何やら冷やかされているようだったけれど。
と、アビゲイルの近くに何やら風を切るような音がして、巻き上がったつむじ風とともに青いローブ姿の美丈夫が姿を現した。隣国ルビ・グロリオーサ王弟ラリマールその人であった。
「……やあ、アビゲイルちゃん。また今日は男臭い場所にいるねえ」
「ラリマール殿下、おはようございます」
「どう、守備は?」
「守備とはなんですの?」
「あれ、昨日アレックスと目くるめく夜を過ごしたんじゃないの?」
「……え」
「あれ? 君たちにもっと仲良くなってもらいたくて、アレックスを焚きつけてやったんだけど」
へらりと言ったラリマールに、アビゲイルがぽかんとした表情で見ている中、ジェフが慌てて会話に混ざってきた。
「あ、あの、ラリマール殿下。そのことに関して、私どものほうでもちょっとした行き違いのような物がございまして……!」
「え、行き違い?」
かくかくしかじかを話し出すジェフに、ラリマールは聞いていくうちにぶふぉーと噴き出して大爆笑していた。
そんなラリマールを見てアビゲイルは、昨夜のアレキサンダーの怒りの原因はこの人にもあるのかと頭が痛くなったりもした。
まあでも、あの件があったからアレキサンダーとの仲が進展したのは確かで、まさに怪我の功名なのかなあと、アビゲイルはまだ鈍い痛みが残る右肩をそっとさすり上げた。
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