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35 演じますのは優しい小悪魔
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「ひ、姫……!」
「あら、どうしたんですの閣下? お友達ですもの、これくらいはよろしいでしょう?」
「う……」
流石に傾国と謳われる(揶揄される)だけあって、アビゲイルは十七歳にしてかなりいい体の持ち主だ。出るところは出ていて締まるところは締まっている言わば前世でいうグラビアアイドルのような男好きのする体つきをしている。それは前世を思い出したあとに改めて全身鏡で見て「すごいな!」と感嘆したくらいにして。
そんな美ボディをなまめかしく腕に押し付けられて、女慣れしていないらしいアレキサンダーはさぞかし落ち着かないだろう。彼の筋肉で固い二の腕なんて、アビゲイルのたわわな胸の谷間に挟まっているものだから、そのムチムチとした感触に、アレキサンダーはもう耐えられないとばかりにぐっと歯を噛みしめている。
「……っ……!」
あ、目を逸らした。嫌がれ嫌がれ。もっと嫌がれ。これはお仕置きなんだから。
髪が短いから耳は丸見えなのだけど、その耳は根本までもう真っ赤になっている。アビゲイルの記憶が確かならば、アレキサンダーは必要に駆られたとき以外に女と接する機会がなかっただけで、女嫌いというわけではないはずだ。
ご褒美のようなお仕置きのような。甘い拷問のようなものかもしれない。真面目な人にはつらいだろうな。
さきほど散々攻撃(口撃)した上で追い打ちのようなものだ。もうアレキサンダーの精神的なライフがゼロになっていそうだから、そろそろ攻撃の手を緩めてやることにした。
苦言を弄したとしても、謝ればいいんだろうと謝罪の言葉を述べるだけでは駄目だ。謝罪するにしても、どうして謝るのかをちゃんと相手が理解していないと本当の謝罪にはならない。
アレキサンダーはアビゲイルの言いたいことがちゃんとわかってくれているようだから、もういいだろう。
ちょっと頭に血が上ったのは自分も同じだなあと反省しながら。けれど後悔はしていない。
言いたいことを言ったけれども、それの集大成はやっぱり今後のことをお願いすることだ。ああしろこうしろと頭ごなしに命令みたいに言うのではなく、こうしてほしいな、そうじゃないと悲しいな、と敢えて「お願い」の形をとるのがいい。
アレキサンダーは素敵だけれど、やっぱり根底のところは悲しいかな「脳筋」だ。脳筋男性とプライドが高い男性にはこの方法がよく効く気がする。
しどけなく寄り添って流し目を送りながら甘えるような声でのお願い。今更ながらこれを不特定多数のチャラ男にやっていたらしき放蕩時代の自分が気持ち悪い。が、時と場合によれば役にも立つ。バカを磨くのも時にはいいのかもしれない。
「ねえ、閣下? お願いがありますの。聞いてくださる?」
「姫……ひ、姫の頼みなら、俺でできることなら、何でもすると誓う。何か欲しければどんなに入手困難でも探してみせる。それで許してくれるなら、俺は……」
おや、何でもするって言ったか。まあ本当に反省してるみたいだ。
でもあれが欲しいから買ってとかいう類いのものじゃないからね。そういう物欲的なことは前のアビゲイルが持ってってしまったから、もうそんな欲求はないんだなこれが。
「うふふ。何も欲しくありませんわ。そういうことじゃなくて、今後はこうしてほしいっていう、ちょっとしたお願いですの」
「それは、どういう……?」
「今後、イライラするとか、ちょっと気に入らないなと思ったら、そこで十数えて深呼吸する癖をつけてくださいませんか。きっと落ち着いて冷静になれると思いますわ」
「そ、そうなのか」
「ええ。あのような行いをして傷つくのは相手ばかりじゃありませんでしょ。閣下だって今こうして後悔なさってる。可哀そうで見ていられませんの」
まあ追い打ちをかけて落ち込ませたのはあたしだけどね! 八つ当たりを指摘しておきながら、あたしもこれでアレキサンダー閣下に八つ当たりしているみたいなもんだけどね!
「ア、アビゲイル姫……」
「ちょっと今やってみましょうか。十数えましょう。いーち、にーい、さーん」
アビゲイルはアレキサンダーに寄り添ってその二の腕に手を触れて、ぽんぽんと軽くたたきながら口に出して十数え始める。アレキサンダーも戸惑いながら、アビゲイルに続いてぼそぼそと数を数え始めた。
そして十数えたあと、アレキサンダーの顔を見て大きく息を吸い込んで深呼吸をして見せる。アレキサンダーもそれに続いた。
三回ほど深呼吸したあと、ふう、と一息ついてアレキサンダーを見ると、彼はどこか晴れやかな表情でアビゲイルを見てクスリと笑った。
「少しは落ち着きまして?」
「ああ……申し訳なかった、姫。今後は姫の言うようにして落ち着くようにする」
「うふふ。さっきより素敵な表情になりましてよ。これで今回のことは治めましょう」
「……ありがとう」
「いいえ。お友達ですもの。いつまでもギスギスしていたくありませんから」
失敗したら謝罪して、許して、苦言を弄して相手の今後を考え合うのが友というものだ。
アビゲイルは「じゃあもうこの話はおしまい」と言って一度アレキサンダーの頬に仲直りのキスをした。
仲直りの意味もあるが、どちらかというと虐め過ぎたお詫びみたいな意味もある。
肩を力任せに脱臼させられたからという苛つきと、アレキサンダーのあのときの振舞いと、ただ謝ればいいと思っているような様子に苛ついて、偉そうに説教してしまったし、かなりネチネチと彼がどん底まで落ち込むくらいに文句を言ってしまったから、流石に可哀そうと思ってしまったのだ。自分がやったことなのに。
そして可哀そうなくらい落ち込んでしまったアレキサンダーが、飼い主にこっ酷く叱られて耳を伏せて悲し気にすんすんと鳴く大型犬みたいでちょっと可愛いとか思ってしまったお詫びもあるのだが。
散々放蕩してきたアビゲイルのキスは驚くほど安い。ファーストキスなんて酔っぱらって誰にしたのかも覚えていない。
だから今更「キスは特別」とか思わないし、友達同士で友情のほっぺにちゅーくらいなんぼのもんじゃいと、アビゲイルはかる~い気持ちでアレキサンダーの頬に口づけたのだ。
アレキサンダーは一瞬呆けた表情でそろそろとキスをされた頬に触れてから突然はっとして、席を立とうとしたアビゲイルの手をぱしっとつかんで、驚く彼女を引き寄せた。あまりの力強さに、喉元過ぎれば熱さを忘れるのかと流石に非難めいた声を上げてしまうアビゲイルであったが……。
「ア、アレキサンダー閣下、言ったそばから乱暴な……って、ん、う……っ!」
ソファーに引き戻されて座らされたかと思うと、ふっと目の前を大きな影が覆って、次の瞬間には唇が塞がれていたのである。
アレキサンダーはやや粗く息を吐きながら温かい唇を押し付けてきて、アビゲイルは思わず目を見開いた。一度離してから二度目にふさがれたときはもう既に唾液を貪るような深いものに変わっていた。
違う、これもう友情のキスじゃないでしょ、閣下。友達同士で唇にキスなんてしない。
ああ、でも。悔しいな。ちょっと気持ちいい。相手が彼だから余計に、かな。
「ん、ふ……ぁ、閣下ったら……」
甘い声が出てしまうけど、この状況で、今までの経緯で、それを考えると、ただそれだけの話だ。気持ちいいキスだけど、アレキサンダーは好きだけど、今そこに熱い感情はアビゲイルには何故かなかった。
深いキスに翻弄されつつも、アビゲイルの頭の中はすっと冷静になる。
少し煽りすぎたのかもしれない。泣きそうなくらいまで落ち込まされたことに怒ったかもしれない。
アレキサンダーの怒りを覚悟のうえで苦言を弄したのだから今更後悔はないけれど、さすがに背中に腕を回されてそのままソファーに押し倒されては、アビゲイルもこのまま流されてはいけない気がした。
流されてイケナイ関係になるのは、過去のアビゲイルだけで十分だ。まあ放蕩時代にもやらかしたのはキスだけで、アビゲイルの体は清いままなのだけど。
しかし、ここで「やめて」と声を荒げるのは男をさらに煽ることになるから、こういう時こそ冷静にならなければいけないと思う。冷静さは涙より女の武器だ。
「ん、ふ、……ね、閣下。駄ー目、もう……はい、おしまい」
「……っ、ひ、姫……!」
「お友達のキスはほっぺだけですことよ。……ね?」
聞き分けのない弟でも諭すように優しく言ってやる。
なおすり寄ろうとするアレキサンダーの口に手をそっと添えて優しく拒否をすると、絶望したような表情をされて困った。せっかく盛り上がってきたのにどうして、という顔がやたらと悲し気で絆されそうになるけれど、可哀そうだけど流されちゃ駄目だ。
アビゲイルは押し倒された体勢を、アレキサンダーの胸元を押して起き上がり、やや乱れた髪を手櫛でさっと整えた。
そんな彼女のやんわりとした、それでいて確実な拒絶にショックを受けたアレキサンダーは、今しかないような気がして縋るようにアビゲイルに言い募る。
「ア、アビゲイル姫、ヘーゼルダインに来る気はないだろうか?」
今来てますよ、という小さいボケをかましたほうがいいのか、アビゲイルは苦笑した。
「あら、どうしたんですの閣下? お友達ですもの、これくらいはよろしいでしょう?」
「う……」
流石に傾国と謳われる(揶揄される)だけあって、アビゲイルは十七歳にしてかなりいい体の持ち主だ。出るところは出ていて締まるところは締まっている言わば前世でいうグラビアアイドルのような男好きのする体つきをしている。それは前世を思い出したあとに改めて全身鏡で見て「すごいな!」と感嘆したくらいにして。
そんな美ボディをなまめかしく腕に押し付けられて、女慣れしていないらしいアレキサンダーはさぞかし落ち着かないだろう。彼の筋肉で固い二の腕なんて、アビゲイルのたわわな胸の谷間に挟まっているものだから、そのムチムチとした感触に、アレキサンダーはもう耐えられないとばかりにぐっと歯を噛みしめている。
「……っ……!」
あ、目を逸らした。嫌がれ嫌がれ。もっと嫌がれ。これはお仕置きなんだから。
髪が短いから耳は丸見えなのだけど、その耳は根本までもう真っ赤になっている。アビゲイルの記憶が確かならば、アレキサンダーは必要に駆られたとき以外に女と接する機会がなかっただけで、女嫌いというわけではないはずだ。
ご褒美のようなお仕置きのような。甘い拷問のようなものかもしれない。真面目な人にはつらいだろうな。
さきほど散々攻撃(口撃)した上で追い打ちのようなものだ。もうアレキサンダーの精神的なライフがゼロになっていそうだから、そろそろ攻撃の手を緩めてやることにした。
苦言を弄したとしても、謝ればいいんだろうと謝罪の言葉を述べるだけでは駄目だ。謝罪するにしても、どうして謝るのかをちゃんと相手が理解していないと本当の謝罪にはならない。
アレキサンダーはアビゲイルの言いたいことがちゃんとわかってくれているようだから、もういいだろう。
ちょっと頭に血が上ったのは自分も同じだなあと反省しながら。けれど後悔はしていない。
言いたいことを言ったけれども、それの集大成はやっぱり今後のことをお願いすることだ。ああしろこうしろと頭ごなしに命令みたいに言うのではなく、こうしてほしいな、そうじゃないと悲しいな、と敢えて「お願い」の形をとるのがいい。
アレキサンダーは素敵だけれど、やっぱり根底のところは悲しいかな「脳筋」だ。脳筋男性とプライドが高い男性にはこの方法がよく効く気がする。
しどけなく寄り添って流し目を送りながら甘えるような声でのお願い。今更ながらこれを不特定多数のチャラ男にやっていたらしき放蕩時代の自分が気持ち悪い。が、時と場合によれば役にも立つ。バカを磨くのも時にはいいのかもしれない。
「ねえ、閣下? お願いがありますの。聞いてくださる?」
「姫……ひ、姫の頼みなら、俺でできることなら、何でもすると誓う。何か欲しければどんなに入手困難でも探してみせる。それで許してくれるなら、俺は……」
おや、何でもするって言ったか。まあ本当に反省してるみたいだ。
でもあれが欲しいから買ってとかいう類いのものじゃないからね。そういう物欲的なことは前のアビゲイルが持ってってしまったから、もうそんな欲求はないんだなこれが。
「うふふ。何も欲しくありませんわ。そういうことじゃなくて、今後はこうしてほしいっていう、ちょっとしたお願いですの」
「それは、どういう……?」
「今後、イライラするとか、ちょっと気に入らないなと思ったら、そこで十数えて深呼吸する癖をつけてくださいませんか。きっと落ち着いて冷静になれると思いますわ」
「そ、そうなのか」
「ええ。あのような行いをして傷つくのは相手ばかりじゃありませんでしょ。閣下だって今こうして後悔なさってる。可哀そうで見ていられませんの」
まあ追い打ちをかけて落ち込ませたのはあたしだけどね! 八つ当たりを指摘しておきながら、あたしもこれでアレキサンダー閣下に八つ当たりしているみたいなもんだけどね!
「ア、アビゲイル姫……」
「ちょっと今やってみましょうか。十数えましょう。いーち、にーい、さーん」
アビゲイルはアレキサンダーに寄り添ってその二の腕に手を触れて、ぽんぽんと軽くたたきながら口に出して十数え始める。アレキサンダーも戸惑いながら、アビゲイルに続いてぼそぼそと数を数え始めた。
そして十数えたあと、アレキサンダーの顔を見て大きく息を吸い込んで深呼吸をして見せる。アレキサンダーもそれに続いた。
三回ほど深呼吸したあと、ふう、と一息ついてアレキサンダーを見ると、彼はどこか晴れやかな表情でアビゲイルを見てクスリと笑った。
「少しは落ち着きまして?」
「ああ……申し訳なかった、姫。今後は姫の言うようにして落ち着くようにする」
「うふふ。さっきより素敵な表情になりましてよ。これで今回のことは治めましょう」
「……ありがとう」
「いいえ。お友達ですもの。いつまでもギスギスしていたくありませんから」
失敗したら謝罪して、許して、苦言を弄して相手の今後を考え合うのが友というものだ。
アビゲイルは「じゃあもうこの話はおしまい」と言って一度アレキサンダーの頬に仲直りのキスをした。
仲直りの意味もあるが、どちらかというと虐め過ぎたお詫びみたいな意味もある。
肩を力任せに脱臼させられたからという苛つきと、アレキサンダーのあのときの振舞いと、ただ謝ればいいと思っているような様子に苛ついて、偉そうに説教してしまったし、かなりネチネチと彼がどん底まで落ち込むくらいに文句を言ってしまったから、流石に可哀そうと思ってしまったのだ。自分がやったことなのに。
そして可哀そうなくらい落ち込んでしまったアレキサンダーが、飼い主にこっ酷く叱られて耳を伏せて悲し気にすんすんと鳴く大型犬みたいでちょっと可愛いとか思ってしまったお詫びもあるのだが。
散々放蕩してきたアビゲイルのキスは驚くほど安い。ファーストキスなんて酔っぱらって誰にしたのかも覚えていない。
だから今更「キスは特別」とか思わないし、友達同士で友情のほっぺにちゅーくらいなんぼのもんじゃいと、アビゲイルはかる~い気持ちでアレキサンダーの頬に口づけたのだ。
アレキサンダーは一瞬呆けた表情でそろそろとキスをされた頬に触れてから突然はっとして、席を立とうとしたアビゲイルの手をぱしっとつかんで、驚く彼女を引き寄せた。あまりの力強さに、喉元過ぎれば熱さを忘れるのかと流石に非難めいた声を上げてしまうアビゲイルであったが……。
「ア、アレキサンダー閣下、言ったそばから乱暴な……って、ん、う……っ!」
ソファーに引き戻されて座らされたかと思うと、ふっと目の前を大きな影が覆って、次の瞬間には唇が塞がれていたのである。
アレキサンダーはやや粗く息を吐きながら温かい唇を押し付けてきて、アビゲイルは思わず目を見開いた。一度離してから二度目にふさがれたときはもう既に唾液を貪るような深いものに変わっていた。
違う、これもう友情のキスじゃないでしょ、閣下。友達同士で唇にキスなんてしない。
ああ、でも。悔しいな。ちょっと気持ちいい。相手が彼だから余計に、かな。
「ん、ふ……ぁ、閣下ったら……」
甘い声が出てしまうけど、この状況で、今までの経緯で、それを考えると、ただそれだけの話だ。気持ちいいキスだけど、アレキサンダーは好きだけど、今そこに熱い感情はアビゲイルには何故かなかった。
深いキスに翻弄されつつも、アビゲイルの頭の中はすっと冷静になる。
少し煽りすぎたのかもしれない。泣きそうなくらいまで落ち込まされたことに怒ったかもしれない。
アレキサンダーの怒りを覚悟のうえで苦言を弄したのだから今更後悔はないけれど、さすがに背中に腕を回されてそのままソファーに押し倒されては、アビゲイルもこのまま流されてはいけない気がした。
流されてイケナイ関係になるのは、過去のアビゲイルだけで十分だ。まあ放蕩時代にもやらかしたのはキスだけで、アビゲイルの体は清いままなのだけど。
しかし、ここで「やめて」と声を荒げるのは男をさらに煽ることになるから、こういう時こそ冷静にならなければいけないと思う。冷静さは涙より女の武器だ。
「ん、ふ、……ね、閣下。駄ー目、もう……はい、おしまい」
「……っ、ひ、姫……!」
「お友達のキスはほっぺだけですことよ。……ね?」
聞き分けのない弟でも諭すように優しく言ってやる。
なおすり寄ろうとするアレキサンダーの口に手をそっと添えて優しく拒否をすると、絶望したような表情をされて困った。せっかく盛り上がってきたのにどうして、という顔がやたらと悲し気で絆されそうになるけれど、可哀そうだけど流されちゃ駄目だ。
アビゲイルは押し倒された体勢を、アレキサンダーの胸元を押して起き上がり、やや乱れた髪を手櫛でさっと整えた。
そんな彼女のやんわりとした、それでいて確実な拒絶にショックを受けたアレキサンダーは、今しかないような気がして縋るようにアビゲイルに言い募る。
「ア、アビゲイル姫、ヘーゼルダインに来る気はないだろうか?」
今来てますよ、という小さいボケをかましたほうがいいのか、アビゲイルは苦笑した。
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