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本編
116 あなたと優しい食卓を ※R15
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スイが目を覚ましたのはもう東の空が白み始めた頃だった。
魔力充実で目覚めた朝は非常に寝起きが良かった。
あんなに深夜まで魔力交換に励んでろくに寝ていないのに、遮光カーテンの隙間から漏れる微かな光で目はパッチリと覚めたのはびっくりだ。
エミリオの固い腕に抱き寄せられていて、ふっと顔を上げるとオレンジブロンドの前髪の隙間から、閉じられた瞼に同じオレンジブロンドの長いまつ毛が見えていた。
魔力満タンになるまでの魔力交換の交わりで気絶してしまったスイだったが、その間にエミリオは身体やシーツの汚れを清めてくれたようだ。
汗やらナニの汁やらの混じった、まるで体育会系の部室みたいな匂いは全く無く、ここに入ったときの清潔な寝室の匂いに戻っている。
これだけなら昨日のくんずほぐれつは単なる欲求不満が見せた淫靡な夢だったのじゃないかと思うけれども、周りをひゅんひゅん飛び回るキラキラが、エミリオとの行為が夢でなかったということを表している。
もうエミリオとは何度も身体を重ねているというのに、思い出すだけで顔面が熱くなって胸がキュンキュンしてしまう。スイは自分が以外にも乙女心なんか持っていたんだなあとか、まだ恥じらいは忘れてなかったとか、ちょっと呆れてしまう。
髪と同じオレンジブロンドの長いまつ毛がぴくりと動いて、今にも目が覚めそうなエミリオ。何気にまつ毛がくるんと上向きで可愛いなあなんて思いながら眺めていると、ぱち、ぱち、と瞬きをしたのち、ターコイズブルーの宝石の瞳が顔を出した。
「ん……スイ、もう起きてたのか?」
「うん……おはよ、エミさん」
「おはよ……」
エミリオは一度大きくあくびをして、むにゅむにゅ言いながらスイに腕を回してきた。そのまま覆いかぶさるみたいに押し倒して来て、首にすり寄るものだから、彼のちょっと伸びた無精ひげがなんかちょっとチクチク痛い。
「もう、エミさんたら……」
「んん……スイ……」
「ちょ、こら」
どさくさに紛れて胸やら太ももやら尻やらを撫でまわしてきたエミリオに、くすぐったさからフヒヒと変な笑い声が出てしまう。
「エミさんたら、もう……ね、そろそろ起きなきゃ」
「……駄目? スイ……」
その言い方、本当にずるい。こっちがそのおねだりに弱いのを知ってて言ってる。
「……あ、エミさんてば。昨日あんなにしたのに……んんっ……あ、あああ……」
静止の声もどこ吹く風で、彼女の体中をまさぐり続けるエミリオに流されて、朝日が完全に昇りきるまでスイはエミリオに求められるままに応じてしまった。
絶頂から弛緩する余韻に浸ってしばらく、相変わらず二人の回りを舞うキラキラに呆れながら、スイの腹を鳴らす空腹の音にくすっと笑ったエミリオはようやく離してくれた。
「食事どうする? 使用人に運んでもらおうか。簡単なものなら用意してあると言っていたけど」
「キッチン使えるなら、あたし作ろうか? といっても、こっちのキッチン、火加減とかあたしに使いこなせるか謎だけど」
「じゃあ俺も手伝うよ。火加減は俺がするから、一緒に作ろう」
騎士団では遠征時でも困らないように炊事も叩き込まれるらしいので、それなりにできるようになったというエミリオ。遠征先での食事がコンバットレーションばかり続くと心が荒むからという理由だそうだ。
「あはは、そうなんだ。レーションって騎士さんたちが必要な栄養価もきちんと考えられているはずなのにね」
「それはそうなんだが……でも味気ない物だよ。温かくもないしな」
「まーそういうものかー」
そんな話をしながら、葉野菜を洗って適当に千切ってボウルに盛り、オリーブオイルとスパイスと塩で簡単なドレッシングを作ってグリーンサラダを作った。緑と紫の斑模様のアスパラガスがあってビックリしたけれど、これがこちらでの普通のアスパラガスだとエミリオに言われて、まあドキドキしたものの、ベーコンでくるくる巻いてフライパンで焼いて皿に盛る。
「卵どうしようか。エミさんどういう食べ方したい?」
「うーん、スイのオムレツがまた食べたいかな」
「そう? じゃあ……ね、これって香草?」
「うん。付け合わせとか色どりによく乗せられてるものかな」
「(パセリみたいなものかな?)じゃあこれも入れちゃお」
パセリのような香草をみじん切りにし、卵を溶いて塩と胡椒で軽く味付けしたものの中に入れ、エミリオに竈の火加減を見てもらいながらフライパンで火が通るまで焼く。さすがに日本ではないので半熟ではないが、一応香草入りのオムレツが出来上がる。ケチャップは無かったのでフレッシュトマトソースを作ってかけたみた。
スイの料理中に火加減を見てくれながら、汚れた調理道具を綺麗に洗ってくれるエミリオ。二人でキッチンに立って料理してるなんて、なんだか休日の夫婦みたいで楽しい。
出来上がった料理を食卓に並べ、人の頭くらいある大きなパンを食べやすく切って籠に盛ってテーブルに出して、グラスに水を注いだら、簡単な朝食が完成だ。
およそ貴族らしくない、いたってシンプルで庶民的な料理だけれど、シャガのスイの自宅で二人で食べた朝食と同じ感じでなんだか懐かしい。
「うまい」
「ほんと? こっちのお邸で出たコース料理とはくらべものにならないくらい庶民的なメニューだけども」
「俺はこういう感じが好きなんだ。それに、晩餐会のメニューはさすがにお客を迎えるための特別メニューだよ」
「まー、そういうもんだよね、食事って。毎日豪華メニューだったら成人病まっしぐらだもんね。高血圧、高脂血症、脂肪肝、あと禿げる」
「禿げも嫌だなあ……」
「あはは、エミさんの血筋大丈夫じゃない? お義父さんもお義兄さんもフッサフサだし。エミさんも今日もほら、艶々の天使の輪」
「それはスイもだよ」
でも母方の親戚の男性は禿げが多いからなあ、とか心配しながらアスパラベーコンを食べて「あ、これうまい」と嬉しそうなエミリオを見てちょっと和む。
パンにオムレツを挟んでかぶりついているスイの唇の端にトマトソースが付いたのを、エミリオはクスクス笑いながらそれをぬぐってくれたりもした。
終始和やかな雰囲気で一緒に料理をして、一緒に食べて。魔力も満タンで、昨日までの頭痛もないし気分が良かった。
食後に二人でくだらないことを喋りながら紅茶を飲んでいると、スイの指につけられているシュクラからもらった加護の指輪が光り出した。
「あ、これシュクラ様かな。なんだかんだこれ使うの初めてかもしれない」
「まあ、通信しないといけないほど離れなかったり、あのジェイディハウスではそもそも魔法で閉じ込められて通信できなかったもんな……」
「あはは。そうだね。……シュクラ様? おはよう」
光る指輪に声をかけると、シュクラの甲高い声が聞こえてきた。
『スイ、おはよう! ドラゴネッティ卿も! 守備はどうじゃ?』
「おはようございます。守備は上々です、シュクラ様。俺もスイも魔力完全回復しましたよ」
『はははははははははは。それは良い良い! なかなか隅に置けぬ奴らよ!』
「もう、シュクラ様。朝からテンション高いな」
『スイ、そろそろお暇するぞ。支度して本館に戻ってくるのじゃ』
「あ、もうそんな時間か」
『おおさ。そろそろシャガに戻らぬと、吾輩がいなくて聖人聖女らがいい加減過労で倒れるじゃろうからの。ははははは』
いや、それマジで笑いごとじゃないし。シュクラは言いたいことだけ言って一方的に通信を切ったらしく、指輪の光もふっと消えてしまった。
そういえば、最初に予定していた最終日だったなあと思い出してしまい、またしばらくエミリオと遠距離になるのかと思ったら急に寂しくなってしまった。
土地神であるシュクラが守護地であるシャガをいつまでも離れているわけにはいかない。その彼の加護を受けているスイも、もちろんついていかないといけないので、二人そろってシャガに戻らなければならなかった。
思わずテーブルの上のエミリオの手を恋人繋ぎに掴んでむにゅむにゅと揉んでしまう。その気持ちを察したのか、エミリオはスイの手をぎゅっと握り返してきた。
王都ブラウワーへの旅はたった三日の旅行だったけど、思い出が波乱万丈なのと濃厚なのと、最終的にエミリオとの夜でしめくくってもう離れがたくてしょうがない。
「はあ……またしばらくエミさんと会えないのかー……帰りたくない」
「スイ……あ、そうだ」
「ん?」
「スイ、俺今日騎士団の寮の部屋、引き払おうと思ってるんだ」
「えっ?」
「だから、部屋引き払って、今日の夜スイんち行くから」
「え、いや、騎士団の出仕は?」
「スイんちから通おうかなと」
「えっ、でも……」
それは、嬉しい提案だけども。でも転移魔法を使って王都とシャガを行ったり来たりするってことだよねと魔力の大量消費を心配したけれど、そんなスイの心配をよそに、エミリオはスイの手を握りなおして、その上にもう片方の手を乗せて、ポッと頬を赤らめながら言う。
「言ってくれただろう? どこにも行かないでって」
「……!」
そういえば。エッチのときに熱に浮かされたみたいにそんなことを言ったような気がする。いや、だからといって……。
目が泳ぐスイの頬にそっと手を置いたエミリオは、流し目でセクシーに微笑みながら言うのだ。
「魔力が減ったら、また魔力交換してくれるんだろう? なあ、スイ?」
また、「駄目?」とのきの上目遣いをされるものだから、このおねだりに滅法弱いスイは、条件反射のように「い、いいよ……」などと言って了承したことになってしまうのである。
魔力充実で目覚めた朝は非常に寝起きが良かった。
あんなに深夜まで魔力交換に励んでろくに寝ていないのに、遮光カーテンの隙間から漏れる微かな光で目はパッチリと覚めたのはびっくりだ。
エミリオの固い腕に抱き寄せられていて、ふっと顔を上げるとオレンジブロンドの前髪の隙間から、閉じられた瞼に同じオレンジブロンドの長いまつ毛が見えていた。
魔力満タンになるまでの魔力交換の交わりで気絶してしまったスイだったが、その間にエミリオは身体やシーツの汚れを清めてくれたようだ。
汗やらナニの汁やらの混じった、まるで体育会系の部室みたいな匂いは全く無く、ここに入ったときの清潔な寝室の匂いに戻っている。
これだけなら昨日のくんずほぐれつは単なる欲求不満が見せた淫靡な夢だったのじゃないかと思うけれども、周りをひゅんひゅん飛び回るキラキラが、エミリオとの行為が夢でなかったということを表している。
もうエミリオとは何度も身体を重ねているというのに、思い出すだけで顔面が熱くなって胸がキュンキュンしてしまう。スイは自分が以外にも乙女心なんか持っていたんだなあとか、まだ恥じらいは忘れてなかったとか、ちょっと呆れてしまう。
髪と同じオレンジブロンドの長いまつ毛がぴくりと動いて、今にも目が覚めそうなエミリオ。何気にまつ毛がくるんと上向きで可愛いなあなんて思いながら眺めていると、ぱち、ぱち、と瞬きをしたのち、ターコイズブルーの宝石の瞳が顔を出した。
「ん……スイ、もう起きてたのか?」
「うん……おはよ、エミさん」
「おはよ……」
エミリオは一度大きくあくびをして、むにゅむにゅ言いながらスイに腕を回してきた。そのまま覆いかぶさるみたいに押し倒して来て、首にすり寄るものだから、彼のちょっと伸びた無精ひげがなんかちょっとチクチク痛い。
「もう、エミさんたら……」
「んん……スイ……」
「ちょ、こら」
どさくさに紛れて胸やら太ももやら尻やらを撫でまわしてきたエミリオに、くすぐったさからフヒヒと変な笑い声が出てしまう。
「エミさんたら、もう……ね、そろそろ起きなきゃ」
「……駄目? スイ……」
その言い方、本当にずるい。こっちがそのおねだりに弱いのを知ってて言ってる。
「……あ、エミさんてば。昨日あんなにしたのに……んんっ……あ、あああ……」
静止の声もどこ吹く風で、彼女の体中をまさぐり続けるエミリオに流されて、朝日が完全に昇りきるまでスイはエミリオに求められるままに応じてしまった。
絶頂から弛緩する余韻に浸ってしばらく、相変わらず二人の回りを舞うキラキラに呆れながら、スイの腹を鳴らす空腹の音にくすっと笑ったエミリオはようやく離してくれた。
「食事どうする? 使用人に運んでもらおうか。簡単なものなら用意してあると言っていたけど」
「キッチン使えるなら、あたし作ろうか? といっても、こっちのキッチン、火加減とかあたしに使いこなせるか謎だけど」
「じゃあ俺も手伝うよ。火加減は俺がするから、一緒に作ろう」
騎士団では遠征時でも困らないように炊事も叩き込まれるらしいので、それなりにできるようになったというエミリオ。遠征先での食事がコンバットレーションばかり続くと心が荒むからという理由だそうだ。
「あはは、そうなんだ。レーションって騎士さんたちが必要な栄養価もきちんと考えられているはずなのにね」
「それはそうなんだが……でも味気ない物だよ。温かくもないしな」
「まーそういうものかー」
そんな話をしながら、葉野菜を洗って適当に千切ってボウルに盛り、オリーブオイルとスパイスと塩で簡単なドレッシングを作ってグリーンサラダを作った。緑と紫の斑模様のアスパラガスがあってビックリしたけれど、これがこちらでの普通のアスパラガスだとエミリオに言われて、まあドキドキしたものの、ベーコンでくるくる巻いてフライパンで焼いて皿に盛る。
「卵どうしようか。エミさんどういう食べ方したい?」
「うーん、スイのオムレツがまた食べたいかな」
「そう? じゃあ……ね、これって香草?」
「うん。付け合わせとか色どりによく乗せられてるものかな」
「(パセリみたいなものかな?)じゃあこれも入れちゃお」
パセリのような香草をみじん切りにし、卵を溶いて塩と胡椒で軽く味付けしたものの中に入れ、エミリオに竈の火加減を見てもらいながらフライパンで火が通るまで焼く。さすがに日本ではないので半熟ではないが、一応香草入りのオムレツが出来上がる。ケチャップは無かったのでフレッシュトマトソースを作ってかけたみた。
スイの料理中に火加減を見てくれながら、汚れた調理道具を綺麗に洗ってくれるエミリオ。二人でキッチンに立って料理してるなんて、なんだか休日の夫婦みたいで楽しい。
出来上がった料理を食卓に並べ、人の頭くらいある大きなパンを食べやすく切って籠に盛ってテーブルに出して、グラスに水を注いだら、簡単な朝食が完成だ。
およそ貴族らしくない、いたってシンプルで庶民的な料理だけれど、シャガのスイの自宅で二人で食べた朝食と同じ感じでなんだか懐かしい。
「うまい」
「ほんと? こっちのお邸で出たコース料理とはくらべものにならないくらい庶民的なメニューだけども」
「俺はこういう感じが好きなんだ。それに、晩餐会のメニューはさすがにお客を迎えるための特別メニューだよ」
「まー、そういうもんだよね、食事って。毎日豪華メニューだったら成人病まっしぐらだもんね。高血圧、高脂血症、脂肪肝、あと禿げる」
「禿げも嫌だなあ……」
「あはは、エミさんの血筋大丈夫じゃない? お義父さんもお義兄さんもフッサフサだし。エミさんも今日もほら、艶々の天使の輪」
「それはスイもだよ」
でも母方の親戚の男性は禿げが多いからなあ、とか心配しながらアスパラベーコンを食べて「あ、これうまい」と嬉しそうなエミリオを見てちょっと和む。
パンにオムレツを挟んでかぶりついているスイの唇の端にトマトソースが付いたのを、エミリオはクスクス笑いながらそれをぬぐってくれたりもした。
終始和やかな雰囲気で一緒に料理をして、一緒に食べて。魔力も満タンで、昨日までの頭痛もないし気分が良かった。
食後に二人でくだらないことを喋りながら紅茶を飲んでいると、スイの指につけられているシュクラからもらった加護の指輪が光り出した。
「あ、これシュクラ様かな。なんだかんだこれ使うの初めてかもしれない」
「まあ、通信しないといけないほど離れなかったり、あのジェイディハウスではそもそも魔法で閉じ込められて通信できなかったもんな……」
「あはは。そうだね。……シュクラ様? おはよう」
光る指輪に声をかけると、シュクラの甲高い声が聞こえてきた。
『スイ、おはよう! ドラゴネッティ卿も! 守備はどうじゃ?』
「おはようございます。守備は上々です、シュクラ様。俺もスイも魔力完全回復しましたよ」
『はははははははははは。それは良い良い! なかなか隅に置けぬ奴らよ!』
「もう、シュクラ様。朝からテンション高いな」
『スイ、そろそろお暇するぞ。支度して本館に戻ってくるのじゃ』
「あ、もうそんな時間か」
『おおさ。そろそろシャガに戻らぬと、吾輩がいなくて聖人聖女らがいい加減過労で倒れるじゃろうからの。ははははは』
いや、それマジで笑いごとじゃないし。シュクラは言いたいことだけ言って一方的に通信を切ったらしく、指輪の光もふっと消えてしまった。
そういえば、最初に予定していた最終日だったなあと思い出してしまい、またしばらくエミリオと遠距離になるのかと思ったら急に寂しくなってしまった。
土地神であるシュクラが守護地であるシャガをいつまでも離れているわけにはいかない。その彼の加護を受けているスイも、もちろんついていかないといけないので、二人そろってシャガに戻らなければならなかった。
思わずテーブルの上のエミリオの手を恋人繋ぎに掴んでむにゅむにゅと揉んでしまう。その気持ちを察したのか、エミリオはスイの手をぎゅっと握り返してきた。
王都ブラウワーへの旅はたった三日の旅行だったけど、思い出が波乱万丈なのと濃厚なのと、最終的にエミリオとの夜でしめくくってもう離れがたくてしょうがない。
「はあ……またしばらくエミさんと会えないのかー……帰りたくない」
「スイ……あ、そうだ」
「ん?」
「スイ、俺今日騎士団の寮の部屋、引き払おうと思ってるんだ」
「えっ?」
「だから、部屋引き払って、今日の夜スイんち行くから」
「え、いや、騎士団の出仕は?」
「スイんちから通おうかなと」
「えっ、でも……」
それは、嬉しい提案だけども。でも転移魔法を使って王都とシャガを行ったり来たりするってことだよねと魔力の大量消費を心配したけれど、そんなスイの心配をよそに、エミリオはスイの手を握りなおして、その上にもう片方の手を乗せて、ポッと頬を赤らめながら言う。
「言ってくれただろう? どこにも行かないでって」
「……!」
そういえば。エッチのときに熱に浮かされたみたいにそんなことを言ったような気がする。いや、だからといって……。
目が泳ぐスイの頬にそっと手を置いたエミリオは、流し目でセクシーに微笑みながら言うのだ。
「魔力が減ったら、また魔力交換してくれるんだろう? なあ、スイ?」
また、「駄目?」とのきの上目遣いをされるものだから、このおねだりに滅法弱いスイは、条件反射のように「い、いいよ……」などと言って了承したことになってしまうのである。
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