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本編

99 クローズドサークル クアスとシュクラ3

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 キエエエエエエエエッ!

 自分に襲い掛かろうとしているクアスに気付いた人形は奇声を上げた。そして今まさに斬りかからんとするクアスに対し、長い髪の毛をぶわっと伸ばして自身を包み込むと、しゅるしゅると内側から巨大な顔面となって再び現れる。

 人形、いや既に化け物と化したの大顔面はシャアアアアアと威嚇音を慣らしながら、クアスを丸飲みでもするかのごとく大きく口を開いてクアスに突進してきた。

「うおおおおおおっ!」

 タンッと床を蹴って飛び上がったクアスは、そのまま突進してくる大顔面に体重をかけて剣を振り下ろす。



 グワシャッ! 

 ギャアアアアアアアアア!


 クアスの剣で一刀両断された大顔面は断末魔を響き渡らせながら、左右に分かれてボロボロと崩れ落ちていった。
 床一面を覆っていた大量に増殖したジェイディ人形たちは、か細い悲鳴を上げてばたばたとその場に倒れていき、そのまま蒸発するみたいに消え去る。

 桃色にけぶる件の媚薬の香も徐々に晴れていき、クリアな視界が早々に戻って来た。やはりあの大顔面と化した人形がこの幻術と媚薬の煙を作り出した本体だったのだろう。

 剣を鞘に納めたクアスの後ろから、シュクラがぱちぱちと拍手をしながら近づいてきた。

「見事! なかなかやるではないかカイラード卿」
「……シュクラ様のおかげです」
「半分はな。ちょっとは見直したぞ。流石は王都騎士団のエリート」
「そんなことは……はあ」
「しかし、化け物は去ったがこの閉鎖空間はまだ消えておらぬようだな。こちらは別の本体が存在するようじゃな」
「…………」

 黙り込むクアスに「ん?」と顔を覗き込むシュクラだったが、クアスの俯いた顔を見た瞬間に「あ」と思い出した。

 クアスは先ほどのシュクラの祝福の効果が切れて、再び媚薬の香にあてられた症状が出てきてしまったらしかった。胸を押さえて肩で息をしながら、真っ赤な顔をして前かがみになってそのまま膝をついてしまった。

「糞ッ……また身体が……」

 あの化け物は魔法で作られたもののようだが、あの桃色の煙に施された媚薬の香とやらは本物だったらしい。
 長くはもたないとシュクラに言われたとおり、その効果はあの人形の化け物を倒したあたりで効果は切れたようで、再び媚薬による性衝動の波がクアスを襲い始めた。

「大事ないか、カイラード卿?」
「……シュクラ様、俺に構わず」
「やめい、置いていったら夢見が悪いわ」
「はあ……しかし……はあ、申し訳、ありません」
「…………う~~~~~~~~、む。どうしようかの」

 シュクラはしばし腕組みをして考えて、「どのみち閉鎖空間じゃしのう」と小さく呟いてから、再びクアスを見た。

「苦しいかカイラード卿。少し発散してはどうじゃ」
「は、発散?」
「うむ。どうせ閉鎖空間じゃしの。吾輩意外は誰もいないゆえ、恥ずかしがることはない」
「な、何を言って……そ、そのようなことできるわけが……あぅっ!」

 シュクラがためしにクアスの頬に手を触れると、クアスはびくりと震えてうめき声をあげた。完全に発情状態になっているのに、顔を真っ赤にして耐えている。
 そんな金髪碧眼の美丈夫が妙に可愛く思えたシュクラは、にやあ~としたり顔で笑った。

「……ではカイラード卿。吾輩が手伝ってしんぜようか? なに、一度ぶっ放せばスッキリするじゃろうて。ほれ、遠慮せず脱ぐがいいぞ」
「い、嫌です。大体私は男同士でそのような趣味はありません……! そ、そりゃあ騎士団の中にはそういった者もいましたが、私は違う!」
「男同士でなければ良いのか? なら女体になってもよいぞ?」
「は?」
「そぉーれ♪」

 シュクラはくるりとその場で一回転し、一度キラリと身体が光った思えば、シュタッとポーズを決めて振り返る。先ほどまでのシュクラと違い、怒り肩が丸みを帯びて多少体型が華奢になっていた。だが、それ以上に目を引くのは、普通以上に盛り上がった胸元で、シャツのボタンがはじけ飛びそうなほどはちきれんばかりに膨らんでいる。

「これでどうじゃ? かなりイケてる女神じゃろ?」
「な……な……!」

 突然女体化したシュクラに青い眼玉を飛び出さんばかりに見開いて驚愕の表情をしたクアス。その反応を見てシュクラは膝をついたクアスと目線を合わせて四つん這いになって近づいてきた。まるで獲物に狙いを定めた一匹の美しい雌豹のようだ。
 その光景に目を奪われたクアスはシュクラが手を伸ばして頬に触れてきたのを、呻き声を上げながらも払えず、されるがままになってしまった。
 表情とは裏腹に身体が素直になったらしいクアスを見てクスクスと笑いながら、シュクラはおもむろに着ていたシャツの前をはだけさせていく。大きな膨らみが二つまろび出てくるのを、クアスは身体の一点に火が灯るのを感じながら見つめるしかなかった。

「ふふふ、こうしてみるとそなたなかなか可愛らしい顔をしておるではないか、のうカイラード卿。神の女陰、味合わせてしんぜようぞ?」

 そっと肩を押し倒してくるシュクラに抵抗する気も起きず、されるがままになってしまったクアスは、近づいてくるこの世のものとは思えないほどの美貌に完全に身を委ねた。シュクラの悩ましく開けられた唇から、二股に分かれた舌先が出てきたのに目を見開いたものの、あっと言う間に唇を塞がれて、口内に無尽蔵に蠢く舌に翻弄されて酩酊したような感覚に陥ったクアスは、何もかもどうでもよくなってしまった。
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