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本編

36 ただの愛撫じゃ物足りない気がしてきた ※R18やや女性攻め有り

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 それは結界の印の書かれた水に溶ける護符なのだそうだが、愛液に溶かしたものを再び膣内に挿入すると、その女性に悪意のある男の邪心を跳ね除ける結界となるらしい。

 やり方としては、スイの官能を昂らせて、溢れた愛液に護符を溶かし、その護符の混ざった愛液をまぶした指で手淫する。もしくは、可能であればその愛液をまぶした男のモノで性行為を行うこと。

「……あの、質問してもいいでしょうか」
「おお、何なりと聞くが良いぞ」
「これは、その……ただ、丸めて、その……彼女が自分で中に入れれば済むのでは」

 確かに、特に官能を昂らせずとも、女陰というものは表面は乾いていたとしても、内側は内臓であるからしっかり濡れているのが普通。だから特に手淫は必要ないのでは? そう思ったエミリオは恐る恐るではあるがシュクラに質問してみた。

「うむ。もっともな質問じゃ。見よ、そこに名が書かれているのがわかるか」
「え?」

 その五センチ四方の小さな護符の中央付近に確かに誰かの名が小さな文字で書かれていた。
 あまりに小さいので目を細めて見ると、定型の魔法の文言のあと、

 al ig becta "Emirio Dragonetti" antmoss.

 と書かれている。魔法に携わる者なら読める文言であり、これは多少シャガ地方訛りの魔法文言も入っているけれど、それをくみ取って読んでも直訳で「エミリオ・ドラゴネッティの所有物」という意味になる。

「……これは」
「そう。そこに書かれた者の手で行うことで成立する魔法結界じゃ。まあ、簡易版なので効果は一週間ほどじゃがの」

 これを施すと、エミリオの名のもとにシュクラの神力で施された厳重かつ強力な男除けとなるわけだ。いわば、鉄の貞操帯の魔法バージョンというものか。出張や出兵する夫が妻に施していたというものの簡易版らしい。
 
 これをシュクラがエミリオに渡してくれたということは、シュクラはエミリオを愛し子たるスイを任せられる者として認めてくれたということになる。簡易版ということで一時的なものかもしれないが。
 シュクラはそれについて「良きにはからえ♪」としか言わなかったが、彼はエミリオを相当買ってくれているらしい。多分、スイが万が一魔力枯渇に陥った場合の保険として以上に。

 ありがたいやら恐れ多いやらで、エミリオは護符を両手で捧げ持ってシュクラに頭を下げた。笑い上戸らしいシュクラがその姿を見てカンラカラカラと笑っていたけれど。
 


「……と、いうことらしい」
「へーそうなんだ」

 スイはエミリオがシュクラからもらったという護符を中央にして向かい合った状態で、スイのベッド上に座って経緯を聞いていた。

 相変わらずおかしなTシャツばかりが出てくるスイのクローゼットから、今日は大阪旅行のお土産でギャグで買った、ホワイトタイガーの大顔面がプリントされたTシャツをエミリオに着てもらっている。スイには大きすぎるのだがエミリオにはサイズがちょうどいい。柄はともかく。
 ゆったりサイズのいかにも大阪のオバチャーン! といったTシャツなのに、エミリオが着ると意外とカッコいい。下はちゃんとしたエミリオ自前のトラウザーズだ。さすがに悟の置き土産の服はエミリオには小さいので。

 猫模様のネル素材のパジャマを着たスイはあぐらをかいた状態で、その五センチ四方のぺらっぺらの護符を手にしげしげと眺めていた。
 土地神は基本的に守護する土地の人口が増えるのは嬉しいので、温泉にも子宝の祝福を施しているくらい、男女の性愛もプッシュしているらしい。
 まあ、スイはエミリオとは疑似エッチ止まりと決めているので、シュクラには申し訳ないが人口が増えることはないと思っている。

 まあ、スイも嫌いじゃないので、気持ちいいことなら大歓迎である。相手がエミリオなら眼福的な意味でも申し分ないし。

「……ふふふ、エッチい護符だねえ」
「う……そ、そうだよな」
「ねえ、これってホントにエッチしなくても、手マンだけでいいんだよね」
「手マ……っ、う、まあ、そう、かな……」
「エミさんがしないとダメなのね」
「そこに俺の名を書いてくれたから、そういうことになるな……気が進まないか?」
「うーん、でも、まあ……せっかくシュクラ様がくれたんだから、試してみようか?」
「スイ……うん、じゃあ」

 エミリオは一旦その護符をサイドテーブルに置いて、おもむろにスイに向き直ると、おずおずと手を出してスイの頬をさわさわと撫で始めた。

「キス、しても?」
「いいよ」
「……軽く?」
「うん」

 ちゅ、ちゅ、と触れては離れを繰り返し、時折はむはむとお互いの唇をふわっと咥えては、決して深くはしてこないエミリオの気遣いが感じられる。

 最初は弱り切っているエミリオを気遣って酸欠にならないようにとキスは軽く、と言い続けていたスイだけれど、今となっては、ディープなものはちょっと本番行為のとっかかりのように感じられて抵抗があって先に進めないでいる。
 たかがキスじゃないかと思う自分もいるのだけど、その壁が結構厚くて破れないのだ。

 そんなふうにエミリオの優しいキスを受けていると、エミリオはそっとスイをベッドに押し倒してきた。そっとパジャマのボタンを外して、上衣も下衣もさっさと脱がしていくあたり、エミリオはもうとっくに発情状態に入っている。

 エミリオは一度起き上がってホワイトタイガーの大阪オバチャンTシャツをあっという間に脱いでしまって、両腕をスイの頭の脇についた。細身の筋肉質、相変わらず素晴らしい。
 
 四つん這いになって見下ろすエミリオのターコイズブルーの瞳と目が合う。一度ふにゃりと目じりが下がって、笑ったと思ったら顔がそのまま近づいてきた。
 スイの首筋に唇と舌を這わせてだんだんと息が上がってくるエミリオ。発情状態になってきた彼に、スイはう~ん、となんとも言えない感覚を味わっていた。

 これはいわゆる前戯だが、最近になって、こんな風に愛撫されるよりも興奮することを覚えてしまったから何か物足りない気がする。

「……エミさん、あのさ……」
「うん……?」
「……いい?」
「え……っ、って、う、わ……っ!」

 密着してきた彼の胸元に手を這わせ、ついにその二つの突起をむぎゅっと摘まんでやった。びくりとしてエミリオが顔を上げる。

「あ……! ス、スイ、いきなり……ぅ、あ、ぁあっ……!」

 スイの上で四つん這い状態になっているエミリオの乳首を、コリコリと指で弄りながら、半勃ち状態の股間に片膝を立ててすりすりと擦り始めると、突っ張っていた腕ががくりと崩れ、片ひじを付いてしまうエミリオ。

「スイ……きょ、今日は、俺が……」
「うーん、ごめんねエミさん。なんか、やっぱエッチのときのエミさん可愛くて」
「……スイ、護符のこと、ちゃんとしないと……、あ、こら……う、はぁっ……だ、ダメだって、スイ……!」
「だってさぁ……」

 言いながら両手でエミリオの乳首をぐりぐりと刺激して、膝で彼の股間をすりすりと擦り、だんだんと起床してくるご立派様にふふふと笑いだすスイ。

「あっ、ちょ、スイ、……はっ……あぁ、糞、お、俺、弱すぎだろ……!」
「あはは……いいよ、弱くても。ベッドの上じゃ強いも弱いも紙一重じゃない? 男も女も……」
「ん、あ、はぁっ……はぁっ……スイ、あぁ、こんな……」
「男も、女も、気持ちいいこと、大好きだもんね……」

 肩ひじをスイの頭の脇について、スイの黒髪を意味もなく撫でながら、眉をひそめて快楽に抵抗しているエミリオの顔を見ながら、楽し気に口元をゆがませたスイは、彼の乳首をいじっていた片手をそっと離した。膝頭ですりすりと愛撫されているエミリオの股間へと、彼の胸から腹へと手を滑らせて、未だ穿いたままのトラウザーズのボタンを片手で器用に外し始めた。

 ほどなくして前をくつろげたトラウザーズから、窮屈そうに下着を押し上げるご立派様が顔を出したので、下着越しに握ってやわやわと指を動かした。

「あぁぅっ……は、はぁ……っ、ああ、スイ、俺、それ、されると……」
「気持ちいい……?」
「っ、き、気持ち、いい……ああ、糞、なんで、俺……」
「ふふ、ごめんねエミさん。あたしさあ、エミさんのそういう顔とか反応見てるほうが……なんか、濡れるんだよね……」
「……えっ」
「ん……確かめてみる?」

 スイはエミリオの肘を付いていないほうの手を取って自らの太ももの間へと誘導させた。
 下着の中に誘導されたエミリオの手が、スイの柔毛をかき分けて進んだ先に触れた瞬間、ぴちゃり、という水音と指先が温かい物で濡れた感触を伝えてきた。

「ん……っ」
「……スイ、これ……」
「うん……ねえ、エミさん」
「スイ……?」
「もっと、その可愛い顔、見せてよ……」

 スイは両手をエミリオの肩にかけるとぐいっと起き上がって、勢いをつけて抱き着いてそのままごろんと横に転がってエミリオを押し倒した。
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