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本編
19 あごががっくがく
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未明に目が覚めたスイは、目の前の光景に一瞬言葉を失った。
ここは自分の部屋であるのに、目が覚めるとイケメンの寝顔がそこにある。しかも彼の腕はしっかりスイの腰に回っていて、力こそ入っていないけれども、スイのことをすっぽりと胸におさめて幸せそうに眠っている。
エミリオ・ドラゴネッティ。パブロ王国騎士団の魔法師団第三師団長であり、此度のシャガ地方で被害届があった上級ダンジョンのモンスター討伐隊の魔法師団長を務める上級魔術師。
昨日は怒涛の日だった。仕事場であるダンジョンで満身創痍のこの男を保護し、家に連れ帰ってきたものの、流れでニャンニャンしてしまった。
風呂での身体を洗うていでの手コキに始まり、何故か聞こえたらしいスイのオナニー声でまた発情したエミリオにキッチンで身体を弄られるも、あれよあれよと逆転。最終的にフェラチオでいかせたらなんか懐かれてこうして一緒に寝ることになったんだったか。ダイジェストで回想するとすごいな。
満身創痍なところで二回も射精したらそりゃあ疲れるだろうに。その少しこけている頬をそっと触ってみたけれど、エミリオは爆睡していて起きる気配はない。いびきをかかない人で良かったと、明後日の方向の心配をしてから、そっと彼の腕から抜け出した。
ベッドから降りて改めて彼に掛け布団をかけなおしてから、音を立てないように着替えて部屋を出る。
まだ明けきらぬ時間だが、リビングのカーテンをざっと開け、脱衣所のランドリースペースへ行って洗濯機を開けて中身を取り出した。エミリオのローブとほかの衣類だ。ローブ以外の衣服も一応きちんと洗っておいたのだ。乾燥もかけてあったので乾いているけれど、少々しわになっている。
洗濯籠に衣類を入れて、アイロンとアイロン台を取り出してリビングに持っていき、丁寧にアイロンをかけてやることにした。
この世界の衣類にスイの元世界のアイロンをかけていいものかどうかわからないので、一応濡れタオルを一枚間に挟んで優しくかけるように心がけた。特に魔術師のローブは大事な一着だと思うので、綺麗に念入りにしわを取る。気分は息子の衣類のしわが許せないイタリアのマンマである。
小一時間ほど衣類のしわと格闘して、ようやくパリッとしわの取れたローブと衣類一式が完成する。ローブはハンガーにかけてリビングのラックにつるして置き、衣類はたたんでから、エミリオの居る部屋に戻って、ベッド脇の椅子の上に置いておいた。
そろそろ夜が明けてきた。
昨日は無理をさせてしまったので、エミリオはきっとなかなか起きてこないに違いない。
とりあえずその間に朝食の支度をして、一応風呂に湯もためておくことにする。
――エミさんチ○コ舐めまわされて気持ち悪いだろうしなあ。起きたらお風呂入りたいかもしれない。
スイはやや疲れたあごをかくかく言わせながら、風呂を洗って湯をためておいた。
風呂の準備が終わったら朝食作りだ。
二、三日前にシュクラ神殿の聖女のオバチャンらにもらったトマトがいい感じで真っ赤に熟れているので、湯剥きしてほかのくず野菜と豆ときのことベーコンでミネストローネを作ることにした。
そのほかはメインおかずにプレーンオムレツ、昨日作っておいたサラダとあとはパンを焼いてコーヒーを落とせば完成。
辺境地で生きる者として、朝食はその日一日を生きるための大いなる活力源である。ほとんど肉体労働をしないスイにはあまり関係はないけれど、エミリオは昨日鶏雑炊だけだったので今朝はしっかりと食べてほしいものだ。
――うーん。甲斐甲斐しすぎてちょっと引かれるかなあ?
デザートにオレンジを剥きながらそんな苦笑をしていると、不意に後ろから腹側に手を回されて、抱き着いてきた者がいた。気配がなかったのでびっくりした。
「わわ、お、おはよ、エミさん」
「おはよう……スイ」
肩口に顔を埋めながら抱き着いてくるエミリオは、そうしていながらも何だか不機嫌そうだ。さっきアイロンをかけた服を着てくれているみたいではあるけれど。
「……なになに、どうしたのエミさん。ご機嫌斜め? あんまり眠れなかったの? 爆睡してたように見えたけども」
「……いなかった」
「え?」
「目が覚めて、スイがいなかったから……」
「え……」
夕べの甘えん坊モードがまだ継続中なのか、あとちょっと寝ぼけているのか、エミリオは片言でそんなことを言うから非常に困る。何かわい子ぶってこのやろう。萌え殺す気か。
イケメンにそんなことを言われて抱き着かれれば、絆されるのは仕方ない。お腹のところで組まれた大きな手をぽんぽんと軽く叩いてから、肩口にあるエミリオの頬にキスをしてやった。
「ごめんねエミさん。朝ごはんの支度してたの。あとアイロンかけたりとか」
「ああ……この服、綺麗にしてくれたんだな……スイは、良いお嫁さんになりそうだ」
「ははは。普通普通。それよか、お風呂先に入る?」
「風呂……?」
「ほら、昨日のニャンニャンのあとすぐ寝ちゃったじゃん」
「ニャンニャンて……」
思い出したのか、エミリオは赤面して目を反らした。
スイは口をゆすいだからいいけれど、エミリオは気持ち悪いだろうと気を使ったのだが、思いのほかエミリオは首を横に振った。
「いや、このままでいい……スイの匂いをつけたまま過ごしたい」
何かヤンデレ臭いことを言い出した。ツッコミを入れたほうがいいのかそれ以上追及しないほうがいいのか悩むところだ。こわいし。
昨日会ったばかりだけど、本番行為は無しだが身体の関係はちょこっとあった間柄、好意が芽生えても仕方ない要素はある。けれどそれが、彼が疲れているため生存本能によって目の前の女を好きだと勘違いしているのか、魔力枯渇に利用できそうな女をどうやってその気にさせてやろうと考えているのか、どっちなのだろうとスイは悩んでしまう。
後者だとしたら軽蔑ものだけど、前者だったらいいなと思う。前者だとしたら何でそこまで好かれてしまったのか、スイには見当もつかないのだけれど。
ここは自分の部屋であるのに、目が覚めるとイケメンの寝顔がそこにある。しかも彼の腕はしっかりスイの腰に回っていて、力こそ入っていないけれども、スイのことをすっぽりと胸におさめて幸せそうに眠っている。
エミリオ・ドラゴネッティ。パブロ王国騎士団の魔法師団第三師団長であり、此度のシャガ地方で被害届があった上級ダンジョンのモンスター討伐隊の魔法師団長を務める上級魔術師。
昨日は怒涛の日だった。仕事場であるダンジョンで満身創痍のこの男を保護し、家に連れ帰ってきたものの、流れでニャンニャンしてしまった。
風呂での身体を洗うていでの手コキに始まり、何故か聞こえたらしいスイのオナニー声でまた発情したエミリオにキッチンで身体を弄られるも、あれよあれよと逆転。最終的にフェラチオでいかせたらなんか懐かれてこうして一緒に寝ることになったんだったか。ダイジェストで回想するとすごいな。
満身創痍なところで二回も射精したらそりゃあ疲れるだろうに。その少しこけている頬をそっと触ってみたけれど、エミリオは爆睡していて起きる気配はない。いびきをかかない人で良かったと、明後日の方向の心配をしてから、そっと彼の腕から抜け出した。
ベッドから降りて改めて彼に掛け布団をかけなおしてから、音を立てないように着替えて部屋を出る。
まだ明けきらぬ時間だが、リビングのカーテンをざっと開け、脱衣所のランドリースペースへ行って洗濯機を開けて中身を取り出した。エミリオのローブとほかの衣類だ。ローブ以外の衣服も一応きちんと洗っておいたのだ。乾燥もかけてあったので乾いているけれど、少々しわになっている。
洗濯籠に衣類を入れて、アイロンとアイロン台を取り出してリビングに持っていき、丁寧にアイロンをかけてやることにした。
この世界の衣類にスイの元世界のアイロンをかけていいものかどうかわからないので、一応濡れタオルを一枚間に挟んで優しくかけるように心がけた。特に魔術師のローブは大事な一着だと思うので、綺麗に念入りにしわを取る。気分は息子の衣類のしわが許せないイタリアのマンマである。
小一時間ほど衣類のしわと格闘して、ようやくパリッとしわの取れたローブと衣類一式が完成する。ローブはハンガーにかけてリビングのラックにつるして置き、衣類はたたんでから、エミリオの居る部屋に戻って、ベッド脇の椅子の上に置いておいた。
そろそろ夜が明けてきた。
昨日は無理をさせてしまったので、エミリオはきっとなかなか起きてこないに違いない。
とりあえずその間に朝食の支度をして、一応風呂に湯もためておくことにする。
――エミさんチ○コ舐めまわされて気持ち悪いだろうしなあ。起きたらお風呂入りたいかもしれない。
スイはやや疲れたあごをかくかく言わせながら、風呂を洗って湯をためておいた。
風呂の準備が終わったら朝食作りだ。
二、三日前にシュクラ神殿の聖女のオバチャンらにもらったトマトがいい感じで真っ赤に熟れているので、湯剥きしてほかのくず野菜と豆ときのことベーコンでミネストローネを作ることにした。
そのほかはメインおかずにプレーンオムレツ、昨日作っておいたサラダとあとはパンを焼いてコーヒーを落とせば完成。
辺境地で生きる者として、朝食はその日一日を生きるための大いなる活力源である。ほとんど肉体労働をしないスイにはあまり関係はないけれど、エミリオは昨日鶏雑炊だけだったので今朝はしっかりと食べてほしいものだ。
――うーん。甲斐甲斐しすぎてちょっと引かれるかなあ?
デザートにオレンジを剥きながらそんな苦笑をしていると、不意に後ろから腹側に手を回されて、抱き着いてきた者がいた。気配がなかったのでびっくりした。
「わわ、お、おはよ、エミさん」
「おはよう……スイ」
肩口に顔を埋めながら抱き着いてくるエミリオは、そうしていながらも何だか不機嫌そうだ。さっきアイロンをかけた服を着てくれているみたいではあるけれど。
「……なになに、どうしたのエミさん。ご機嫌斜め? あんまり眠れなかったの? 爆睡してたように見えたけども」
「……いなかった」
「え?」
「目が覚めて、スイがいなかったから……」
「え……」
夕べの甘えん坊モードがまだ継続中なのか、あとちょっと寝ぼけているのか、エミリオは片言でそんなことを言うから非常に困る。何かわい子ぶってこのやろう。萌え殺す気か。
イケメンにそんなことを言われて抱き着かれれば、絆されるのは仕方ない。お腹のところで組まれた大きな手をぽんぽんと軽く叩いてから、肩口にあるエミリオの頬にキスをしてやった。
「ごめんねエミさん。朝ごはんの支度してたの。あとアイロンかけたりとか」
「ああ……この服、綺麗にしてくれたんだな……スイは、良いお嫁さんになりそうだ」
「ははは。普通普通。それよか、お風呂先に入る?」
「風呂……?」
「ほら、昨日のニャンニャンのあとすぐ寝ちゃったじゃん」
「ニャンニャンて……」
思い出したのか、エミリオは赤面して目を反らした。
スイは口をゆすいだからいいけれど、エミリオは気持ち悪いだろうと気を使ったのだが、思いのほかエミリオは首を横に振った。
「いや、このままでいい……スイの匂いをつけたまま過ごしたい」
何かヤンデレ臭いことを言い出した。ツッコミを入れたほうがいいのかそれ以上追及しないほうがいいのか悩むところだ。こわいし。
昨日会ったばかりだけど、本番行為は無しだが身体の関係はちょこっとあった間柄、好意が芽生えても仕方ない要素はある。けれどそれが、彼が疲れているため生存本能によって目の前の女を好きだと勘違いしているのか、魔力枯渇に利用できそうな女をどうやってその気にさせてやろうと考えているのか、どっちなのだろうとスイは悩んでしまう。
後者だとしたら軽蔑ものだけど、前者だったらいいなと思う。前者だとしたら何でそこまで好かれてしまったのか、スイには見当もつかないのだけれど。
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