スイさんの恋人~本番ありの割りきった関係は無理と言ったら恋人になろうと言われました~

樹 史桜(いつき・ふみお)

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本編

11 身体を洗っているだけなのに ※R18女性攻め注意

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 水圧を弱めた温かなお湯を背中から浴びて、エミリオの震えはようやく収まってきた。

 まずは頭から。煤けた茶色の長い髪をシャワーでそっと流してやると、どす黒い泥水が流れるのとともに、元の髪の色らしいオレンジブロンドの髪色があらわになってくる。もともとはこんなに綺麗な髪なのに、かなりの汚泥にまみれてしまったようだ。
 おそらく泥以外にも汗と皮脂でべとべとになっているだろうので、まずは念入りにお湯で洗い流さないとシャンプーがはじかれてしまうだろう。

「大丈夫? 目に入ったりしてない?」
「大丈夫だ。ありがとう」
「もう少しだけ流すね」
「ああ」

 泥水がだんだんと透明になったところで、シャンプーを手で泡立ててから髪の根本からなじませて指の腹で頭皮をマッサージするように泡立てる。

「エミさん痛くない?」
「大丈夫、気持ちいいくらいだ」
「オケオケ。じゃあこれで洗っていくね」
「……すまない、ありがとう」

 頭皮を洗い終えたら一度お湯で流して、もう一度シャンプーで二度洗いをする。今度はごしごししないように毛先まで泡で包むようにして洗ってから、お湯で洗い流し、コンディショナーで仕上げてタオルでわしわしと拭ってやると、ようやく綺麗な髪色に戻ったような気がした。

「綺麗になったね」
「……ああ、さっぱりした。ありがとう」
「綺麗な色の髪だね。汚れが落ちて良かった」
「……スイ、こそ……綺麗な、髪だ……」
「そ、そう? あ、ありがとう。長すぎだからそろそろ切ろうかと思うんだけどね」
「そんな、切ってしまうのか。こんなに綺麗な……黒髪だというのに」
「あ、そ、そう……?」
「ふふ、パブロ王国では黒は高貴な色だ。黒髪は珍しいし金髪と並んで美しい髪とされている。……俺のような髪色はごく平凡で面白みのない色だよ」
「えー、こんなに綺麗なのに……でもそうなんだね、残念」

 昔から髪だけは鴉の濡れ羽色と言われて艶々サラサラとしていたスイは、元彼の悟にも、お前この髪切るなよ、と言われていたことを思い出す。悟と別れてこちらの世界に来てからは、何度か切ってしまおうと思ったけれど、今だに切れないでいる。
 悟が切るなと触りまくった髪だから、いっそ丸刈りにしてでも捨ててしまいたくなっていたけれど、エミリオのような別次元のイケメンにそんなことを言われたら決心が揺らぐというものだ。

「本当に……スイは綺麗だ……」
「…………」

 ――く、口説かれてるのだろうか。全裸で? いやいや、全裸は関係ないけども……。

 前に落ちかかるスイの黒髪の先を指で絡めて熱っぽく言うエミリオに、心臓がドキドキとうるさい。イケメンは何をやっても人を魅了するのだなと、早くもエミリオのイケメンチャームにノックアウトされそうなスイだったが、頭を切り替えて「さあ、次は体洗おう!」とカラ元気に返す。

 お湯で流したあと、ボディータオルにボディーソープをつけて泡立てると、擦らないように泡で撫でつけるようにして洗う。

「さすが、男性。背中広いね、カッコいい」
「そ、そうだろうか……」

 魔術師という職業のエミリオの体が意外にも筋肉質であることで、自分にはないそのたくましい体つきにドキリと心臓が脈打った。

 考えてみたら全裸の男性を風呂で洗ってやっているってすごいシチュエーションだ。
 タオルでごしごし洗いは肌にダメージを与えるらしいのでボディータオルで泡立てた泡を手で塗り付けて洗っているから、なんだか愛撫しているみたいな変な感じになる。

 ――ローションでぬるぬるエッチみたいなもんでしょうか。あかん、一年間も男性とディープな接触してこなかったせいで考え方が欲求不満のエロエロ女みたいになっとる。

 しかしそう思っていたのはスイだけではなかったらしく、かすかに聞こえてきたエミリオの息遣いが若干荒い気がした。くすぐったいならそう言うはずだし、明らかにおかしい。

「エ、エミさん? 大丈夫? ぐ、具合悪くなったり……」
「……ん、い、いや、別に、そうじゃ……そうじゃない……き、気にしないで」

 泡で彼の背を撫でつけるたびに、はっ、はっ、と悩ましく息を吐いているエミリオ、気にするなというほうが無理だ。
 脇腹のところに泡を伸ばしたときに、「あぁっ……」とついに声を上げたエミリオ。これは確実にアレだろう。

「へ、変な声、出さないでよ……!」
「う……す、すまない……」
「ええ~? ちょ、ちょっと、マジ? なんか、お節介なことしてごめん……あ、あとは自分で洗う……? な、流すのだけしてあげるから……」

 さすがに嫌がっているだろうと思って、泡立ったボディータオルをそっとエミリオに差し出したスイだったが、後ろを振り返ったエミリオの表情は、やや苦痛に顔を歪ませながらも、どこか期待するようなまなざしでスイを見ていた。

「や……やめないで、くれ……。ス、スイが、あ、洗って……」
「え、や、あの」
「は……スイ、頼む」
「…………」

 そんな泣きそうな顔でそんなお願いされたら、断れると思ってか。
 そういえば、あのダンジョン内で体擦り付けてくるくらいに、この人魔力枯渇、体力低下、そして生存本能のせいで発情しているんだっけ。

 ――けど。この状態って結構辛いんだよね? 目の前になんとかできる人間がいるのに、何もしてもらえないのって辛いと思うし、なんか、こう、かわいそうになってきてしまう。

 ――あと、ちょっとなんか……なんか、可愛い?

 ふと肩の力が抜けたスイは、泡だらけのボディータオルを持ち直すと、わしわしと泡を立て直して手に取る。そして、今だ服を着たままの体が濡れようとかまわず、エミリオの背中に抱き着くようにして、手に取った泡を彼の胸元に塗り付けた。

 魔術師といった文系な職業でも鍛えているのか厚い胸板を撫でまわすようにして泡を広げていく。そのぬるぬるした感触でエミリオが待っていたとばかりに恍惚とした表情で、はっ、はっ、と息を短く吐いているのが、やや曇り止めが切れかけた風呂の鏡に写っていた。

「……エミさん、気持ちいいの……?」
「……は、あぁ、き、気持ち、いい……!」
「はあはあって……エッチな声だしちゃってさ」
「あ……ふ、ぁ……っ、あ、こ、これは……その……」
「いっぱい汗かいたみたいだから、しっかり洗っておこうね」
「は、ぁあっ……あ、ひぁっ!」

 胸板を泡で撫でまわしているときに、二つの突起部分にふと指が掠めた瞬間、エミリオはひときわ大きな声を上げた。風呂場だからやたら響く。
 彼も、自分でもとんでもない声を上げてしまったことを恥じたのか、思わず真っ赤になって口元に手を当てている。
 浴室の湯気漂う中、彼の肩口からそっと見た彼の胸元、二つの小さな突起がその存在を主張するかのように勃ちあがっているのが見えた。同時に、腹部に掛けてあるタオルが突起物でぐぐぐと大きく盛り上がってビクビクしているのも……。

 スイはそんなエミリオを見て、何だこのかわいい生き物、と、体の一部がむずむずするような感覚を覚えた。
 そういえば、人によるけれども、男性も胸、特に乳首が気持ちいいと感じることがあるらしいというのは聞いたことがある。

 しかし忘れてはいけない。汚れた身体を綺麗に洗っているだけなのだから、そんな触られて困るようなところを触らないようにしないといけない。というていでわざと突起の回りをくるくると泡を撫でつけた。
 半分曇って半分クリアに見えている鏡に、何か痒いところに手が届きそうで届かないようなもどかしい、それでいて恍惚とした赤い顔をしているエミリオが写っている。そんな顔もイケメンだし、この場合なんだか可愛らしくて困る。

「ス、スイ……あぁ、その、あっ…………っ」
「なあに? ……洗ってるだけだよ、エミさんたら」
「あ…うぅ……あ、あ、あ……!」
「乳首勃ってる……」
「はッ、はぁッ、あぁ、スイ、スイ……!」
「エッチな魔術師様ね」
「うぅッ……はぁ、も、もっ……」
「も?」
「…………っ」

 肩口から顔を伺っているスイに顔を向け、半開きの口を戦慄かせて、言わなくてもわかってほしいと懇願するような涙目でこちらを見るエミリオに、「ん?」とわざと聞き返して根気よく答えを待つ。その間、肝心の場所には一切触れてやらない。
 やがてしびれを切らしたエミリオが、背後から覗き込むスイの頬にそっと手を触れて、ぶるぶると子ウサギのように震えながらようやく答えた。

「………………も、もっと、さ、触って……」
「エミさん、洗ってるだけって言ったでしょ……?」
「あ……洗って、ち、ちくび、も、洗って、欲しい……!」
「ん~……わかった、ここ、ね……?」
「あ……っ! は、はぁっ……!」

 可愛くおねだりできたエミリオに応えて、リクエストに応えてあげると、恍惚とした表情で口元を笑顔にしたエミリオがびくびくと震えて、身動きした振動で、彼の腰に掛けられたタオルがはらりと床に落ちてしまった。
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