異世界で等価交換～文明の力で冒険者として生き抜く

第2章：商会の始まり

第27話：オーク討伐

　冒険者ギルドの扉を押して中に入ると、活気に満ちた声がすぐに耳に飛び込んできた。冒険者たちがそれぞれの依頼をこなすために話し合ったり、報酬を受け取ったりしている。俺はその中を通り抜け、掲示板の前に立った。

「さて、今日はどの依頼にしようか…」

　掲示板には依頼がびっしりと貼られている。討伐依頼、護衛依頼、素材採取依頼と、種類は様々だ。だが、最近Dランクに昇格した俺にとって、少し挑戦的な依頼を選ぶべきだろう。あまりに簡単すぎるものでは今後の成長につながらない。

「オーク討伐…これがいいか」

　目を引いたのは「オーク討伐」の依頼だった。オークを3体討伐し、牙を証拠として持ち帰るという内容だ。報酬は250クラウンと、これまでの依頼に比べて高額だ。今の俺とルナなら十分にこなせるはずだ。

「よし、これにしよう」

　俺はその依頼書を掲示板から取り、受付カウンターに向かった。カウンターにはリリーナが立っていて、俺が近づくとにっこりと微笑んでくれた。

「タケル様、いらっしゃいませ。今日はどの依頼をお受けになりますか？」

「このオーク討伐の依頼を受けたいんだ。ちょうど実力を試したいと思ってたところだし」

　俺は依頼書をリリーナに差し出した。彼女はそれを確認すると、軽く頷いた。

「オーク討伐ですね。タケル様なら問題ないかと思いますが、オークは力が強く、集団で行動することが多いですのでお気をつけください。場所はこの地図に記されている森です。討伐後、オークの牙をお持ち帰りいただければ報酬が支払われます」

　リリーナは依頼書に記された地図を手渡してくれた。目的地は街から少し離れた森の中だ。過去にいくつかの依頼をこなした場所の近くなので、道もよくわかっている。

「ありがとう、リリーナ。これで依頼を受けられたな。ルナも準備は万端だ」

　俺がそう言うと、ルナは静かに吠え、やる気満々な表情を見せた。彼女もまた、この冒険に挑む準備ができているようだ。

「お気をつけてくださいね、タケル様。何かあればいつでもギルドに戻ってきてください」

　リリーナがそう言って見送ってくれたので、俺たちはギルドを後にし、森へと向かう準備を始めた。オーク討伐の依頼は、俺たちにとってまた一歩成長する機会となるはずだ。

「さあ、ルナ。行こうか！」

　ルナが軽く吠えて応え、俺たちはギルドを出て森へと向かった。

　依頼書に記された場所は、街から少し離れた森の中だ。そこにはオークが頻繁に出没し、近隣の村を脅かしているという情報があった。

「オークか…力は強いけど、今の俺たちなら問題ないだろう」

　ルナもすぐ隣で鼻を鳴らしながら、やる気を見せていた。俺たちのステータスは、既にDランク冒険者の基準を超えている。これまでの経験と戦闘で得た自信がある。

　森の中はひんやりとしていて静かだった。風に揺れる木々の音が耳に心地よいが、この静けさが少し不気味でもあった。オークの気配がどこからともなく漂っているのを感じる。

「ルナ、気を付けろ。そろそろ奴らが来るかもしれない」

　俺がそう言った瞬間、木の間から大きな影が現れた。巨大な体を持つオークが3体、こちらに向かって歩いてくる。力強い一歩ごとに地面が揺れるほどの巨体だ。

「来たな、ルナ！」

　俺はすぐに剣を抜き、ルナも戦闘態勢に入った。オークたちは俺たちに気づき、凶悪な顔をして大きな棍棒を振りかざしながら突進してきた。体格が大きく、その速度も意外と速い。

「まずは一匹ずつ仕留めるぞ！」

　一体目が目の前に迫った瞬間、俺は横に飛び込み、その棍棒をかわした。ルナは同時に側面から攻撃を仕掛け、「月光の爪」を発動。ルナの鋭い爪がオークの横腹に深々と食い込み、鮮血が飛び散る。

「ナイスだ、ルナ！」

　だがオークはまだ倒れず、痛みに怒り狂って棍棒を振り回してきた。俺はその動きを冷静に見極め、すかさずオークの足元に滑り込んで剣を突き立てる。

　肉厚な皮膚を突き破り、確かな手応えがあった。オークは苦しそうに吠えた後、重々しく倒れ込んだ。

「一匹目、これで終わりだ」

　残り二匹もこちらに向かってくる。だが、俺とルナは息が合っている。二匹目が迫る前に、俺たちは距離を取り、次の攻撃に備えた。

「次はあいつだ！」

　俺の合図とともにルナが飛び出す。彼女の動きは非常に素早く、オークの巨体ではその動きを捉えられない。ルナはオークの後ろに回り込み、もう一度「月光の爪」を発動させた。爪が輝き、オークの背中に深い傷を刻み込む。

　その隙に俺も突進し、オークの胸元に剣を突き立てた。刃が深々と入り込み、オークは断末魔の叫びを上げながら倒れた。

「残り一体だな！」

　三匹目のオークは怒り狂いながら、俺たちに向かって全力で突進してきた。だが、その動きは単純だ。俺はそのまま相手の突進をかわし、ルナが素早く後ろから噛み付く。

　オークはルナの牙に怯んだところを、俺が一気に畳み掛けた。

「これで終わりだ！」

　剣がオークの首元に深々と突き刺さり、最後の一撃で3体目も地面に倒れ込んだ。

「ふう、無事に終わったな」

　俺たちは深呼吸しながら、オークたちの牙を切り取って証拠品として袋に収めた。これで依頼は達成だ。依頼完了後の報酬は250クラウン。オーク相手に苦戦するかと思ったが、ステータスの強化もあり、思った以上にスムーズにいった。

「これで冒険者ギルドに報告すれば、ランクアップも見えてくるな」

　俺はオークの牙を確認しながら、次にやるべきことを考えた。商業ギルドでの取引も順調に進んでいるし、冒険者としてもランクがDに上がった今、次の目標が自然と見えてくる。

「ルナ、戻るぞ」

　俺たちは街へと足を向け、次の冒険に向けて歩き出した。