異世界で等価交換～文明の力で冒険者として生き抜く

第2章：商会の始まり

第26話：開店初日を終えて

　営業初日が無事に終わり、店の灯りを消すと、俺とカティアは自宅の食堂に戻った。静かで落ち着いた空間の中、疲れを感じながらもどこか充実感があった。食卓には、ささやかながらもカティアが用意してくれた夕食が並んでいる。

「お疲れ様、カティア。初日としては上々の結果だったな」

　俺は椅子に座り、食事に手をつける前に軽く感謝を伝える。カティアは柔らかく微笑み、頷きながら隣に座った。

「はい、タケル様。お客様もガラス製品や日用品に興味を持ってくれて、思った以上の反応でしたね。私も予想以上の忙しさで、嬉しい疲労感があります」

　彼女の声には確かな手応えが感じられる。開店初日としては成功と言っていい。だが、俺たちの目標はこれで終わるわけではない。今後、どうやって店舗を運営していくかが重要だ。

「そうだな。初日は順調だったけど、これからが本番だ。もっと多くの客を呼び込むために、どうすればいいか考える必要があるな」

　俺は食事に手をつけながら、これからの運営について頭を巡らせた。店舗の位置や商品ラインナップ、そして価格設定――全てが今後の運営に大きく影響する。カティアは俺の考えを感じ取ったのか、提案を口にした。

「タケル様、商品の質と価格が評価されているのは確かですが、もっと店のことを広く知ってもらうために、宣伝活動が必要かもしれません。市場にいるお客様だけでなく、もっと遠方から来る人々にも知ってもらうために…」

「宣伝か、確かにそうだな。今は近隣の住民や市場の客がメインだけど、いずれは冒険者や他の町の商人たちにも来てもらいたい。特に高級なガラス製品やタオルなんかは、遠くからも需要があるはずだ」

　カティアの提案に同意しながら、俺は更に話を進めた。店の存在を広めることは重要だが、ただ宣伝するだけではなく、信頼を築き上げることが不可欠だ。

「信頼を得るためには、まずはお客様との関係を大切にしないとな。特に常連客を増やすことが大事だ。毎週取引してくれるような、安定した顧客層を作っていくことが目標だな」

　カティアも真剣な表情で頷いてくれる。俺の考えを理解してくれているようだ。

「そうですね。定期的に来てくださるお客様が増えれば、店の経営も安定しますし、紹介で新しいお客様も増えるかもしれません。私もお客様にもっと親しく接して、信頼関係を築けるよう心がけます」

　彼女の決意のこもった言葉に、俺も背筋が伸びる思いだった。カティアの支えがあってこそ、この店は成り立っている。彼女が積極的に店の運営に関わってくれるのは、本当に心強い。

「ありがとう、カティア。お前の力があれば、きっとこの店は成功すると思うよ。明日からもよろしく頼む」

　俺は微笑みながら、感謝の気持ちを込めて彼女に言葉をかける。カティアも少し照れたように微笑んだが、すぐに真剣な表情に戻った。

「もちろんです、タケル様。私も、このお店が成功するように全力でお手伝いさせていただきます」

　夕食が一段落ついた頃、俺はふと気になっていたことをカティアに尋ねた。

「カティア、店の運営はお前にかなり頼っているけど、これから俺が冒険者活動も本格的に再開したら、人手が足りなくならないか？」

　俺は店の運営だけでなく、冒険者としての活動も継続していくつもりだ。冒険者ランクがDに上がり、より難しい依頼も受けられるようになったが、店をカティア一人に任せきりにするわけにもいかない。

　カティアは少し考えた後、穏やかに微笑んで答えた。

「確かに、お店が忙しくなってきたら、一人では手が回らなくなるかもしれませんね。でも、今のところは何とかやっていけます。タケル様が冒険者として活動する間は、私がしっかりお店を守りますので、ご安心ください」

　彼女の言葉は頼もしかったが、俺はさらに踏み込んで確認する。

「でも、もし急にお客さんが増えたり、取引量が増えたらどうする？やっぱりもう一人くらい手伝ってもらえる人が必要なんじゃないか？」

　カティアは一瞬考え込み、そして真剣な表情で言葉を続けた。

「確かに、それも考慮するべきですね。今後、お客様や取引が増えて忙しくなるようなら、補助的に働いてもらえる人を雇うことを検討するのも良いかもしれません。奴隷や従業員をもう一人雇ってお店を運営することも視野に入れた方が良いですね」

　彼女の冷静な意見に俺も頷いた。今はカティアが一人で運営できる範囲だが、今後のことを考えると、確かに人手の確保が重要だ。

「そうだな。もう少し状況を見ながら、必要なら人手を増やすことを考えよう。その時は、カティアも手伝ってくれると助かる」

　俺がそう言うと、カティアは微笑んで「もちろんです、タケル様」と応えてくれた。その笑顔に俺も安心感を覚えた。今後、冒険者としても商人としても多忙になっていくだろうが、カティアと共にしっかりと店を支えていく準備ができている。

「じゃあ、明日からも頑張ろう。まずは、もう少し店を安定させてから、冒険者活動も本格化させるつもりだ」

「はい、タケル様。お店も冒険者活動も、どちらも成功させましょう」

　こうして、店の運営と冒険者活動の両立に向けて、俺たちは心を新たにして明日に備えた。