上 下
24 / 47
第2章:商会の始まり

第23話:ガラス食器

しおりを挟む
 市場から宿に戻った俺は、カティアと次の商売について話し合うため、早速彼女を呼び出した。カティアはミナミ商会の運営を任せている重要なパートナーであり、彼女の知識と冷静な判断力はいつも頼りになる。店の運営の相談をするなら、彼女を欠かすことはできない。

「カティア、ちょっと相談があるんだ」

「どうしましたか、タケル様?」

 彼女がやってきたところで、等価交換スキルを使って仕入れた現代のガラス食器を彼女に見せることにした。カティアには等価交換の力をすでに話してあるため、彼女がどんな反応を示すのか興味深かった。

「カティア、これを見てくれ」

 俺は、テーブルの上にガラスの食器を丁寧に並べていく。透明なグラスや美しい装飾が施された皿が輝いて、部屋の明かりを反射して幻想的な雰囲気を醸し出している。

 カティアは食器を一つ手に取り、その美しさに驚嘆している様子だった。彼女は食器の透明度と、繊細な細工にじっくりと目を向けてから、静かに息をついた。

「これが…現代の世界で作られたガラス製品ですか?見たことがないほど美しいです。こんなに精巧なガラス食器は、この世界では希少ですね」

 俺は頷きながら説明を続ける。

「そうなんだ。これが俺のスキル、等価交換で手に入れたものさ。現代の世界では、これが手頃な価格で手に入るんだけど、この世界ではすごく高価な商品になる。たとえば、このグラスだと、現代ではほんの数10クラウン程度だけど、この世界では1,500クラウン以上で売られてる」

 カティアはもう一度グラスを見つめ、うっとりとした表情を浮かべた。

「確かに、その価格差は非常に大きいですね。タケル様が手に入れたこの品質のガラス食器であれば、富裕層の間で大人気になるでしょう。特に貴族や高級商店では、こういった高級感のある商品は需要が高いと思われます」

「そうだろう?このガラス食器を次の商材として売り出そうと思ってるんだ」

 カティアは真剣な表情で考え込んでから、やがて口を開いた。

「タケル様、これは大きなチャンスです。ただし、注意も必要です。このような高価な商品を扱う場合、少量ずつ市場に流して、その価値を高めるべきかと。あまり一度に出しすぎると、希少性が薄れてしまいます」

 俺はその言葉に深く頷いた。確かにカティアの言う通り、富裕層向けの商品は少量ずつ慎重に販売したほうが良さそうだ。

「了解。まずは少量を試しに市場に出して、反応を見てから次の手を考えることにするよ」

「はい、それが賢明かと思います。これならミナミ商会の名前を広めるいいきっかけにもなるでしょう。タケル様、成功をお祈りしております」

 カティアの真摯な応援の言葉を聞いて、俺は胸の中に新たな決意を抱いた。異世界での商売は、これからが本番だ。

 ◇ ◇ ◇ ◇ 

 翌日、俺はカティアと共に、例のガラス食器を持って商業ギルドへ向かうことにした。今回はただの納品ではなく、ガラス食器についての確認をするためだ。

 商業ギルドの扉を開け、俺は一瞬立ち止まって深呼吸をした。この1か月でギルドとの取引は軌道に乗り、安定した利益を得られるようになってきた。

 しかし、次のステップとして店舗を運営し、さらに商売を拡大することを考えている今、どうしても相談したいことがあった。

 ギルド内はいつものように商人たちで賑わっている。商談に熱中する声や、受付の対応に追われる職員の声が聞こえる中、俺はカウンターに向かった。担当者はマルコスだ。

「タケルさん、どうも。今日はどうされましたか?」

 マルコスはいつものように穏やかな表情で俺を迎えてくれた。これまで数回の取引を経て、彼とは信頼関係が築けている。だからこそ、今回の相談も安心してできる。

 「少しご相談があるのですが、今後、商業ギルドを通さずに店舗で商品を直接販売しようと考えております。その点に問題がないか確認したくて、ご意見を伺えればと思います」

 マルコスは少し首を傾げ、考える素振りを見せた。

「なるほど、店舗での直接販売ですか。確かに、今の規模であれば商業ギルドを通して取引をするのが一般的ですが、ギルドを介さず直接販売することは、問題にはなりません。ただし…」

「ただし?」

 俺はマルコスの言葉に耳を傾ける。商売には必ずルールや規制がつきものだ。それを無視しては、長期的な成功は難しい。

「ただし、商品によってはギルドの承認や監督が必要な場合があります。特に、珍しい商品や輸入品など、通常の市場に出回らないものについてはね。例えば、塩や香辛料といった商材に関しては、既にギルドとの契約があるから問題ないですが、新たな商材、特に価値の高いものになると注意が必要です」

 俺は頷きながら、彼の話を聞いていた。今まさに店舗で販売を考えている新しい商材――高級なガラス食器――はその一例だろう。

 現代の等価交換で仕入れた高品質なガラス製品は、異世界では特に貴重だ。だからこそ、その流通には規制があるかもしれない。

「なるほど。実は、今度高級ガラス食器を扱おうと考えているのですが、ギルドを通さずに店舗で直接販売しようと思っています。これについて、何か問題になる可能性があるでしょうか?」

 マルコスは少し考え込んだ後、口を開いた。

「それは珍しい商品ですね。ガラス製品は特に高価なものですし、もし大量に扱うとなると、監督の対象になるかもしれません。ですが、少量の個人販売であれば、ギルドの管理を受けなくても大丈夫でしょう」

 少量であれば問題ないという回答に、俺は少し安堵した。現時点ではそれほど大規模な販売を考えているわけではなく、店舗でのテスト販売程度だ。しかし、将来的に商売が大きくなる可能性も考慮に入れておくべきだろう。

「了解しました。まずは少量から始めて、様子を見ることにいたします」

 マルコスは頷き、微笑んだ。

「店舗の開業、楽しみにしていますよ。タケルさんのことですから、きっと成功するでしょう」

「ありがとう、そう言ってもらえると心強いです」

 こうして、俺は商業ギルドとの相談を無事終え、店舗での販売に向けての準備に踏み出すことになった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

テンプレを無視する異世界生活

ss
ファンタジー
主人公の如月 翔(きさらぎ しょう)は1度見聞きしたものを完璧に覚えるIQ200を超える大天才。 そんな彼が勇者召喚により異世界へ。 だが、翔には何のスキルもなかった。 翔は異世界で過ごしていくうちに異世界の真実を解き明かしていく。 これは、そんなスキルなしの大天才が行く異世界生活である.......... hotランキング2位にランクイン 人気ランキング3位にランクイン ファンタジーで2位にランクイン ※しばらくは0時、6時、12時、6時の4本投稿にしようと思います。 ※コメントが多すぎて処理しきれなくなった時は一時的に閉鎖する場合があります。

チュートリアル場所でLv9999になっちゃいました。

ss
ファンタジー
これは、ひょんなことから異世界へと飛ばされた青年の物語である。 高校三年生の竹林 健(たけばやし たける)を含めた地球人100名がなんらかの力により異世界で過ごすことを要求される。 そんな中、安全地帯と呼ばれている最初のリスポーン地点の「チュートリアル場所」で主人公 健はあるスキルによりレベルがMAXまで到達した。 そして、チュートリアル場所で出会った一人の青年 相斗と一緒に異世界へと身を乗り出す。 弱体した異世界を救うために二人は立ち上がる。 ※基本的には毎日7時投稿です。作者は気まぐれなのであくまで目安くらいに思ってください。設定はかなりガバガバしようですので、暖かい目で見てくれたら嬉しいです。 ※コメントはあんまり見れないかもしれません。ランキングが上がっていたら、報告していただいたら嬉しいです。 Hotランキング 1位 ファンタジーランキング 1位 人気ランキング 2位 100000Pt達成!!

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

空間魔法って実は凄いんです

真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?

絶対防御とイメージ転送で異世界を乗り切ります

真理亜
ファンタジー
有栖佑樹はアラフォーの会社員、結城亜理須は女子高生、ある日豪雨に見舞われた二人は偶然にも大きな木の下で雨宿りする。 その木に落雷があり、ショックで気を失う。気がついた時、二人は見知らぬ山の中にいた。ここはどこだろう? と考えていたら、突如猪が襲ってきた。危ない! 咄嗟に亜理須を庇う佑樹。だがいつまで待っても衝撃は襲ってこない。 なんと猪は佑樹達の手前で壁に当たったように気絶していた。実は佑樹の絶対防御が発動していたのだ。 そんな事とは気付かず、当て所もなく山の中を歩く二人は、やがて空腹で動けなくなる。そんな時、亜理須がバイトしていたマッグのハンバーガーを食べたいとイメージする。 すると、なんと亜理須のイメージしたものが現れた。これは亜理須のイメージ転送が発動したのだ。それに気付いた佑樹は、亜理須の住んでいた家をイメージしてもらい、まずは衣食住の確保に成功する。 ホッとしたのもつかの間、今度は佑樹の体に変化が起きて... 異世界に飛ばされたオッサンと女子高生のお話。 ☆誤って消してしまった作品を再掲しています。ブックマークをして下さっていた皆さん、大変申し訳ございません。

無限の成長 ~虐げられし少年、貴族を蹴散らし頂点へ~

りおまる
ファンタジー
主人公アレクシスは、異世界の中でも最も冷酷な貴族社会で生まれた平民の少年。幼少の頃から、力なき者は搾取される世界で虐げられ、貴族たちにとっては単なる「道具」として扱われていた。ある日、彼は突如として『無限成長』という異世界最強のスキルに目覚める。このスキルは、どんなことにも限界なく成長できる能力であり、戦闘、魔法、知識、そして社会的な地位ですらも無限に高めることが可能だった。 貴族に抑圧され、常に見下されていたアレクシスは、この力を使って社会の底辺から抜け出し、支配層である貴族たちを打ち破ることを決意する。そして、無限の成長力で貴族たちを次々と出し抜き、復讐と成り上がりの道を歩む。やがて彼は、貴族社会の頂点に立つ。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

処理中です...