異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く

りおまる

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第2章:商会の始まり

第21話:ミナミ商会

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 翌朝、俺はカティアを伴い、商業ギルドに向かった。彼女には店舗の運営を任せる予定で、俺たちはこれから店舗の販売戦略について相談しに来たのだ。商売の基本的な方向性が決まれば、あとは実行に移すだけだ。

 ギルドのドアを押して中に入ると、いつもの担当者マルコスが出迎えてくれた。

「おはようございます、タケル様。今日はどのようなご相談でしょうか?」

 マルコスはいつものように丁寧に対応してくれる。俺はカティアと目を合わせた後、軽く頷いてから話し始めた。

「実は、店舗運営についてご相談があります。新しい店舗を借りて商売を始めたいのですが、商品のラインナップや販売の方法についてどうすべきか迷っておりまして」

「なるほど、確かにそれは重要なポイントですね。すでにギルドとの香辛料取引は順調に進んでいると伺っていますが、店舗では別の商品を扱うというお考えでしょうか?」

「そうですね、香辛料は商業ギルドでの取引に絞って、店舗では日用品や富裕層向けの上質な商品を販売しようと考えています。今考えているのは、石鹸や食器です。これなら常に需要があるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?」

 マルコスは頷きながら、俺の意図をしっかりと理解してくれたようだ。

「確かに、石鹸や食器はこの町でも人気の高い商品です。特に品質の良いものは、富裕層の間で非常に需要があります。タケル様が供給ルートを確保されているのであれば、それを強みにして販路を広げるのも良いかと」

「それなら、店舗運営のための宣伝も必要ですね。どこに、どのようにアプローチすればよいか、具体的に考えてみようと思います」

「その点については、ギルドのつながりを活用することができます。貴族層や富裕層の顧客に対しては、私どもで協力させていただきます」

 カティアも静かに俺の横で頷いている。彼女の勤勉さと判断力を信頼して、店舗の実務を任せられることが、今の俺にとって何よりの安心材料だ。

「カティア、これからは君に店舗の運営を任せる。商品管理や顧客対応は君が中心になってやってもらうことになるが、どうだろう?」

「承知しました。責任をもって務めさせていただきます」

 カティアの誠実な応答を聞き、俺はさらに安心感を覚えた。彼女なら信頼できる。

「それでは、商売の基盤が固まり次第、次は広告や宣伝に力を入れてみようと思います。マルコスさん、引き続きサポートをよろしくお願いいたします」

「もちろんです、タケル様。何かお困りのことがあれば、いつでもご相談ください」

 そうして、俺たちは商業ギルドを後にし、店舗での準備に向けて動き出すことにした。

 翌日、店舗の準備を進めるために、カティアと共に再び店を訪れた。等価交換で仕入れた商品や石鹸、食器などが少しずつ店内に並び始め、店舗の姿が形になりつつある。

カティアはテキパキと商品の陳列を進め、俺は今後の販売戦略を考えながら彼女の手助けをする。

「カティア、商品がある程度揃ったら、初回の宣伝活動も考えておかないとな」

「そうですね、商業ギルドのつながりを使って貴族や富裕層にアプローチするのが効果的だと思います」

 彼女の言う通り、まずは店舗の評判を少しずつ広げることが重要だ。特に、品質の良い日用品や食器は、この世界では希少だし、富裕層の顧客に気に入られれば長期的な取引に繋がる可能性も高い。

「よし、宣伝チラシも準備しておこう。それに、店舗の名前も決める必要があるな。何か良い案はあるか?」

 カティアは一瞬考え込み、静かに微笑んだ。

「『ミナミ商会』というのはどうでしょう?タケル様のお名前を使うことで、信頼性を高める効果があると思います」

「ミナミ商会か…いい響きだな。シンプルで覚えやすいし、信用が大事な商売にはぴったりだ。決まりだな」

 そうして、店舗の名前も「ミナミ商会」に決まり、俺たちは開店準備の最終段階に進んでいった。

 その日は、ルナも店内でリラックスしており、時折、カティアや俺の周りを歩き回りながら様子を見ていた。彼女はこの新しい環境にもすぐに適応しているようで、まるで自分の店だと言わんばかりの堂々とした態度だ。

「ルナも店が気に入ったみたいだな。これで俺たちの拠点も整ったわけだ」

「はい。これからが本当の始まりですね、タケル様」

 カティアが真剣な表情で頷き、俺もそれに応えるように決意を新たにした。

「そうだ。ここを拠点にして、商売も冒険者活動も両立していく。ミナミ商会を大きくするために、しっかりと計画を立てて進んでいこう」

 カティアの力強い意志とルナの忠誠心に支えられ、俺は異世界での新たな挑戦に胸を躍らせていた。今後の商売の成功を見据え、俺たちはそれぞれの役割を果たしながら、エルドラフでの生活をさらに充実させていくことを誓った。

 次なるステップは、店舗の開店と共に、さらなる商材を探し、新たな商機を捉えることだ。ミナミ商会がこの町で名を上げる日も、そう遠くはないだろう。

「よし、次は新しい商品探しだな。ルナ、カティア、準備はいいか?」

「はい!」

 ルナも尻尾を大きく振りながら俺の言葉に応える。こうして、俺たちは次なる挑戦に向けて、新たな一歩を踏み出した。
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