異世界で等価交換～文明の力で冒険者として生き抜く

第1章：異世界エルドラフに降り立つ

第16話：2回目の定期取引

数日後、商業ギルドとの2回目の定期取引日がやってきた。ルナを連れてギルドに向かう道すがら、頭の中では次の一手について思案していた。今のところ、塩や胡椒、砂糖の取引は順調に進んでいる。

だが、それだけで異世界での商売を大きく成長させるには限界があると感じていた。

「新しい商材を見つけなきゃならないな」

そう呟きながら、俺は商業ギルドの重厚な扉を押し開けた。ギルド内はいつも通り活気に満ちており、多くの商人や取引担当者が行き交っていた。俺の目標は、今後の取引の幅を広げるための新たな商材だ。

すでに頭の中ではいくつか候補があったが、どれも慎重に判断しなければならない。

「タケル様、お待ちしておりました」

ギルドの取引担当者であるマルコスが、いつものように笑顔で迎えてくれた。彼とは前回の取引で良好な関係を築いており、今回も同じく塩10キロ、胡椒10瓶、砂糖10キロを納品する予定だ。

「今回もよろしくお願いします。前回と同じ内容で納品しますが、実は今日は少しご相談があります」

「お話、伺いますよ」

マルコスは興味深そうに身を乗り出した。俺は新たな商材として、最近目をつけていた香辛料の話を持ち出すことにした。この世界では香辛料の流通が限られているため、取引の余地が大いにあると考えている。

「新しい商材として、香辛料を提案したいんです。市場ではまだ限られた種類しか流通していませんが、もっと多様なものが手に入れば、需要も高いと思います」

「ほう……具体的にはどのようなものを？」

「例えば、シナモンやクローブ、そして少量でも香りが強く、料理に豊かな風味を加えるスターアニスといったものです。これらの香辛料を安定的に供給できれば、貴社との取引にもさらに価値を見出せるはずです」

マルコスはしばらく考え込むように目を細めていたが、やがて満足げに頷いた。

「それは非常に興味深い提案ですね。香辛料市場は確かに拡大の余地があります。ただ、問題はその供給量と品質を安定させることです」

「もちろん、その点も考慮しています。まだ検討段階ですが、近いうちに小規模なテスト取引を始めることを考えています。品質についても問題ないと確信しています」

「なるほど……それならば、まずは少量から始めてみましょう。タケル様のお取引には信頼を寄せていますし、こちらとしても新たな市場を開拓できるチャンスは逃したくありません」

こうして、商業ギルドとの2回目の取引は滞りなく進み、さらに新たな香辛料の商材についても前向きな話がまとまった。

「さて、今回の納品分で22,500クラウンをお支払いさせていただきます」

マルコスはクラウンの袋を用意してくれた。前回と同様に、今回の取引も順調に進んだ。これで、手元の資金はさらに増え、店舗を運営する基盤が整いつつある。

「ありがとうございます。これで次回も同じように取引を進めていきましょう。では、また来週」

商業ギルドでの取引を終え、22,500クラウンを手にした俺は、借りていた店舗兼自宅に戻ってきた。ここは、香辛料や調味料の取引の拠点としても、今後さらに役立っていくはずだ。

店内には、まだ商品棚も揃っていない。とはいえ、現段階で店舗での販売を始めるつもりはない。今のところ、商業ギルドを通じての取引に集中するつもりだ。直接の販売を行うのはまだ先の話になるだろう。

「さて、次はどうするか……」

俺は店のカウンターに座り、少し考え込んだ。この場所を借りたことで、いつでも事業を広げられる準備は整っている。だが、今は取引を通じて資金を積み重ね、異世界での商売の基盤をしっかりと築くのが先決だ。

ルナは俺の足元でくつろぎ、静かに尻尾を振っている。彼女の存在が、どんな時でも俺の支えだ。

「よし、今のところは取引に集中して、計画を練ろう」

俺は次の商業ギルドとの取引を考えながら、これからの戦略をじっくりと練ることにした。

その日の夕方、店舗の窓から街の様子を眺めながら、俺は次のステップについて考えていた。店舗は確保したが、今すぐにここで商売を広げるつもりはない。

まずは商業ギルドとの取引で、資金をさらに増やし、異世界での足場を固めることが最優先だ。

「次の取引も順調に進めば、もう少し大きな規模で取引できるだろうな」

ルナが足元で軽くうなずくように小さく鳴く。彼女はいつも、俺が考えていることを理解しているかのようだ。

「とはいえ、資金はある程度順調に増えてきたが、この調子でいけば、冒険者活動と並行して、さらなる商材を見つけなければならないな」

俺は一度深呼吸をして、次のアクションプランを立てるため、店のカウンターに座り込んだ。商業ギルドとの取引は順調だが、いつかはこの店舗を拠点にして、独自の商品を売り出すつもりだ。

そのためには、より多くの商材を見つけ、供給を安定させることが必要だ。

「よし、今日は少し街を歩いてみるか」

俺はルナを連れて、再び街へと向かうことにした。今までの取引だけではなく、新しい商材のアイデアを探すために、街を歩き回り、何か使えそうなものを見つける必要がある。

街の活気は相変わらずだ。行商人や露天商が並び、多くの人々が買い物や取引に励んでいる。香辛料や調味料だけでなく、他にも需要のありそうな品を見つけるため、俺は注意深く各露店を覗いて回った。

「何か新しい発見があればいいんだけどな……」

ルナは隣を歩きながら、周囲を見回している。彼女の鋭い感覚が、何か特別なものを見つけてくれるかもしれない。

「今日はのんびりと探索するつもりだ。焦らず、良い商材を見つけるんだ」

俺たちは、これからの展望を考えながら、街の探索を続けた。