異世界で等価交換～文明の力で冒険者として生き抜く

第1章：異世界エルドラフに降り立つ

第4話：商業ギルド登録

　翌朝、俺は異世界の風景にすっかり馴染んできた気がした。宿での朝食を軽く済ませ、部屋でルナと共に残金を確認する。

　神からもらった3,000クラウンのうち、すでに宿泊費として300クラウンを使っているが、まだ2,700クラウンは手元に残っている。

「これだけあれば、しばらくは安心だな」

　だが、この世界で生きていくには単に金を持っているだけでは足りない。商売を始めるためには、商業ギルドに登録し、正式な手続きを踏む必要がある。

　さらに、市場での香辛料の価格も確認し、商材としての取引を進める準備をしなくてはならない。

「よし、ルナ。今日は商業ギルドに行くぞ」

　ルナは俺の言葉に応えるように軽く吠え、尻尾を振る。異世界に来てから一緒に行動してきた相棒として、彼女の存在は心強い。

　俺はイストリアの街を歩きながら、商業ギルドの建物へと向かった。街の中心部に位置するその建物は、立派な石造りで、たくさんの商人たちが行き交っていた。

　俺が扉を開けると、内部は活気に満ち、カウンターには商人たちが次々とやり取りをしている。

「さて、ここで正式に商売の準備を始めるか」

　受付に進むと、カウンターの向こうには中年の女性が優しい笑顔を浮かべていた。

「いらっしゃいませ。商業ギルドへようこそ。ご用件は何でしょうか？」

「商人登録をお願いしたいんです。これから、塩、胡椒、砂糖などの香辛料を取引したいと考えているんですが」

「それは素晴らしいですね。登録には少し手続きが必要ですが、簡単ですのでご安心ください。まずは、登録料として100クラウンをいただきます」

　100クラウンを渡し、手続きが始まった。名前や扱う商品、そして連絡先などを簡単に記入する。

　商業ギルドの登録が完了した後、ギルド職員が手渡してくれたギルド証を見つめながら、俺は商業ギルドについての詳細な説明を受けることになった。

　ギルド証は金属製で、名前やギルドの紋章、そして「Cランク」の文字が刻まれている。確かな重みが手の中に伝わってきた。

「これが商業ギルドの証です。この証を持っていれば、あなたはエルドラフで正式に商人として活動することができます」

　ギルド職員の言葉に頷きながら、俺は改めてこの証が持つ意味を考えた。これを持つことで、ギルドに認められた商人として活動できる。

　取引の際にはギルドの信頼がついてくるため、大規模な取引や重要な商談でも優位に立てるということだ。

「このギルド証について、もう少し詳しく教えてもらっていいですか？あと、ランクについても」

「もちろんです。商業ギルドにはCランクからSランクまでの4段階のランクがあります。あなたは新規登録なので、最初はCランクとなります。ランクが上がるごとに、より大きな取引ができるようになり、ギルドからの支援や特典も増えます」

「なるほど、商業ギルドにはCからSまでの4段階のランクがあるんですね」

　俺はギルド職員の説明を聞きながら、手にしたギルド証を見つめていた。ランク制度は思っていたよりも少ないが、それだけ競争が厳しいことを示しているのかもしれない。

「はい、そうです。新規登録の商人はまずCランクからスタートします。Cランクは商人としての基礎を学びながら、安定した取引を積み重ねる段階です。取引額や信頼度が上がると、Bランクに昇格することが可能です」

「Bランクに上がる条件は、具体的にどういったものですか？」

「主に取引の実績です。一定額以上の取引を行い、かつ取引先からの評価が高ければ、ギルドからの推薦を得て昇格できます。また、信頼性を証明するために、Cランクの商人がギルド主催の市場や競売に参加し、その活動が評価されることも昇格の要因になります」

　俺は頷きながらその話を聞いていた。ランクが上がることで商売の幅も広がり、取引相手に対する信用も大きくなるのだ。

「Bランクに昇格するとどうなるんですか？」

「Bランクに昇格すると、国内の主要な商会や貴族との取引が可能になります。また、ギルドからの支援も拡大し、より大規模な取引を行うための資金援助や特別な市場への招待が受けられます。もちろん、Cランクでは参加できない限定イベントにも出席できるようになります」

「そして、AランクやSランクとなると？」

「Aランクになると、商業ギルド内でも名が知られるようになり、国際的な取引やより大規模な商会との取引が可能になります。そして、Sランクはギルドの頂点に立つ商人です。国家規模の取引を扱い、ギルド自体からも厚く信頼されます。Sランク商人は異国との交易や特別なギルドの仕事を任されることが多く、通常の商人では得られない特権が多数あります」

　その説明を聞いて、俺は改めて商業ギルドのランク制度が商人としての成功の鍵であることを理解した。Cランクからスタートして、地道に信頼を積み上げていく。

　最終的にはSランクまで到達できれば、この異世界で商業帝国を築く夢も現実にできる。

「ギルドのランクが上がるためには、誠実な商売と安定した取引を積み重ねることが重要です。違反行為やギルドの信用を損ねる行為は降格の対象となりますので、十分に注意してください」

「わかりました。地道にやっていきます」

　俺はギルド証を再び見つめながら、この異世界で商人として成功するための道筋が見えてきた気がした。まずはCランクとしての基盤を固め、次のステップへ進むための準備を整えていこう。