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第一章:第一の秘宝「大地の加護」
第14話:山岳地帯での試練
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山岳地帯への道のりは、想像以上に険しく、気温も下がる中、霧が一面を覆っていた。岩肌が露出した道は滑りやすく、一歩一歩が慎重にならざるを得ない。
朝日が差し込む頃には足元の小さな石さえ見えづらく、息を呑む寒さが肌を刺す。
「さあ……ここからが本番だ」
そうつぶやき、ぼくは自分の決意を確かめながら、さらに奥へと足を進める。持参した水袋を少し口に含んで喉を潤し、重い空気に耐えながら視線を巡らせた。
周囲の風景は徐々にその様相を変えていく。木々は少なくなり、代わりに岩がむき出しの荒々しい地形が広がっていく。そんな時だった。
背後に妙な気配を感じ、すっと視線を向ける。だが、辺りには誰もいない。ただ、風が強く吹きつけ、薄い霧がさざ波のように流れるだけ。神経を張り詰めて周囲を観察していると、目の前にふと黒い影が浮かび上がってきた。
突然、霧の中から現れたのは一匹の大きな魔物だった。体毛が黒々として、硬い甲羅をまとったような不気味な姿。顔つきは鋭い牙をむき出しにしていて、まるで獲物を狙う捕食者のような雰囲気があった。
全身から立ち上る威圧感に、ぼくは一瞬だけ息を呑む。だが、こんな場所でひるんではいられない。ガレスから教えられた基本的な戦闘の心得を思い出し、体勢を整える。
「落ち着け……焦るな。相手の動きを見極めるんだ」
冷静さを保とうと自分に言い聞かせる。ガレスからは、敵の動きをよく観察し、焦らず対応することが一番の防御だと教わっていた。この魔物の動きを見極めることができれば、対処もできるはずだ。
魔物はその鋭い目でぼくを捕らえ、警戒心を隠さずに睨みつけている。
おそらく、獲物が自分を恐れる様子を確かめるように、少しずつぼくにじり寄ってきた。
「くそっ……来るなら来い!」
その瞬間、魔物が大きく吠えるような低い唸り声を上げ、ぼくに向かって突進してきた。目にも止まらぬ速さで近づいてくるその姿を前に、一瞬足がすくむが、ガレスの教えを思い出し、冷静に右へとかわす。
魔物はぼくがいた場所をかすめ、強烈な風圧だけが顔をかすめた。だが、ほんの少しでも油断すれば、今の一撃で確実に命を落としていたことを実感する。
「お前に……負けるわけにはいかないんだ!」
再び魔物が方向を変え、こちらに向かってくる。その動きは、がっしりとした体格に似合わず素早く、反射神経が試されるような状況だった。
何度も突進をかわし、隙を見つけるために動きを観察する。魔物の攻撃がかするたび、恐怖心が薄れていき、徐々に冷静さが増してくるのを感じる。
何度か攻撃をかわしているうちに、魔物の動きがやや鈍くなった瞬間があった。それを見逃すわけにはいかない。ぼくはガレスから教わった攻撃方法を思い出し、すかさずカウンターを狙う。
「今だ!」
体を低く構え、手に持った短剣を魔物の側面に滑り込ませるようにして突き刺す。力いっぱい腕を振り下ろすと、短剣が魔物の甲羅の隙間にめり込み、鈍い感触が伝わってきた。
魔物は苦しそうに声を上げ、体を震わせる。だが、簡単には倒れないらしい。
「やっぱり、手強いな……」
ぼくは短剣を引き抜き、再び距離を取る。今の一撃でどれほどのダメージを与えられたのかはわからないが、魔物の動きは少し鈍ったように見える。それでも、まだ戦意を失ってはいない。
ふとした瞬間、ガレスの言葉が頭をよぎる。
「どんな相手にも、必ず一瞬の隙がある。それを見逃さずに攻めるんだ」
その言葉に励まされ、ぼくは再び冷静さを取り戻した。そして、魔物が体制を整え、再度突進してくるのを見て、ぼくはその動きをじっくりと観察する。
魔物が近づく瞬間、目を細めて見ると、わずかながら右肩を少し引いているのがわかった。そこが、攻撃の方向を示しているかもしれない。
ぼくはそのタイミングを見計らい、素早く左側へと身をかわす。魔物の攻撃は空振りに終わり、ぼくがその背後に立つ形となった。
「ここだ……!」
最後の力を振り絞り、ぼくは短剣を魔物の甲羅の隙間に突き刺す。短剣が深く入り込み、今度は確実に手応えがあった。魔物は大きく体を揺らし、ついにその場に倒れ込む。
息を切らし、ぼくはその場にへたり込んだ。勝利の喜びというよりも、命の危機を乗り越えた安堵感が胸を満たしていく。汗が冷たく背中を伝い、体中が震えるのを感じながら、ぼくはゆっくりと立ち上がった。
辺りを見渡し、再び進むべき道を確認する。今回の戦闘で、自分がどれだけ未熟なのかを痛感した。ガレスから教わった基本的な戦闘技術がなければ、確実に命を落としていたことを思うと、あの教えがどれだけ自分にとって貴重なものだったかがわかる。
「これが試練の一端か……」
ぼくは疲れた体に鞭を打ち、再び歩き出した。もしこの先に秘宝が本当にあるなら、今の戦闘以上の困難が待ち受けているかもしれない。
それでも、この地を豊かにするため、そして領民たちの期待に応えるために、進むしかないと覚悟を決めた。
「まだ……ここで終わりじゃない。これからが本番なんだ」
そう自分に言い聞かせ、ぼくは険しい山岳地帯を歩き続ける。
朝日が差し込む頃には足元の小さな石さえ見えづらく、息を呑む寒さが肌を刺す。
「さあ……ここからが本番だ」
そうつぶやき、ぼくは自分の決意を確かめながら、さらに奥へと足を進める。持参した水袋を少し口に含んで喉を潤し、重い空気に耐えながら視線を巡らせた。
周囲の風景は徐々にその様相を変えていく。木々は少なくなり、代わりに岩がむき出しの荒々しい地形が広がっていく。そんな時だった。
背後に妙な気配を感じ、すっと視線を向ける。だが、辺りには誰もいない。ただ、風が強く吹きつけ、薄い霧がさざ波のように流れるだけ。神経を張り詰めて周囲を観察していると、目の前にふと黒い影が浮かび上がってきた。
突然、霧の中から現れたのは一匹の大きな魔物だった。体毛が黒々として、硬い甲羅をまとったような不気味な姿。顔つきは鋭い牙をむき出しにしていて、まるで獲物を狙う捕食者のような雰囲気があった。
全身から立ち上る威圧感に、ぼくは一瞬だけ息を呑む。だが、こんな場所でひるんではいられない。ガレスから教えられた基本的な戦闘の心得を思い出し、体勢を整える。
「落ち着け……焦るな。相手の動きを見極めるんだ」
冷静さを保とうと自分に言い聞かせる。ガレスからは、敵の動きをよく観察し、焦らず対応することが一番の防御だと教わっていた。この魔物の動きを見極めることができれば、対処もできるはずだ。
魔物はその鋭い目でぼくを捕らえ、警戒心を隠さずに睨みつけている。
おそらく、獲物が自分を恐れる様子を確かめるように、少しずつぼくにじり寄ってきた。
「くそっ……来るなら来い!」
その瞬間、魔物が大きく吠えるような低い唸り声を上げ、ぼくに向かって突進してきた。目にも止まらぬ速さで近づいてくるその姿を前に、一瞬足がすくむが、ガレスの教えを思い出し、冷静に右へとかわす。
魔物はぼくがいた場所をかすめ、強烈な風圧だけが顔をかすめた。だが、ほんの少しでも油断すれば、今の一撃で確実に命を落としていたことを実感する。
「お前に……負けるわけにはいかないんだ!」
再び魔物が方向を変え、こちらに向かってくる。その動きは、がっしりとした体格に似合わず素早く、反射神経が試されるような状況だった。
何度も突進をかわし、隙を見つけるために動きを観察する。魔物の攻撃がかするたび、恐怖心が薄れていき、徐々に冷静さが増してくるのを感じる。
何度か攻撃をかわしているうちに、魔物の動きがやや鈍くなった瞬間があった。それを見逃すわけにはいかない。ぼくはガレスから教わった攻撃方法を思い出し、すかさずカウンターを狙う。
「今だ!」
体を低く構え、手に持った短剣を魔物の側面に滑り込ませるようにして突き刺す。力いっぱい腕を振り下ろすと、短剣が魔物の甲羅の隙間にめり込み、鈍い感触が伝わってきた。
魔物は苦しそうに声を上げ、体を震わせる。だが、簡単には倒れないらしい。
「やっぱり、手強いな……」
ぼくは短剣を引き抜き、再び距離を取る。今の一撃でどれほどのダメージを与えられたのかはわからないが、魔物の動きは少し鈍ったように見える。それでも、まだ戦意を失ってはいない。
ふとした瞬間、ガレスの言葉が頭をよぎる。
「どんな相手にも、必ず一瞬の隙がある。それを見逃さずに攻めるんだ」
その言葉に励まされ、ぼくは再び冷静さを取り戻した。そして、魔物が体制を整え、再度突進してくるのを見て、ぼくはその動きをじっくりと観察する。
魔物が近づく瞬間、目を細めて見ると、わずかながら右肩を少し引いているのがわかった。そこが、攻撃の方向を示しているかもしれない。
ぼくはそのタイミングを見計らい、素早く左側へと身をかわす。魔物の攻撃は空振りに終わり、ぼくがその背後に立つ形となった。
「ここだ……!」
最後の力を振り絞り、ぼくは短剣を魔物の甲羅の隙間に突き刺す。短剣が深く入り込み、今度は確実に手応えがあった。魔物は大きく体を揺らし、ついにその場に倒れ込む。
息を切らし、ぼくはその場にへたり込んだ。勝利の喜びというよりも、命の危機を乗り越えた安堵感が胸を満たしていく。汗が冷たく背中を伝い、体中が震えるのを感じながら、ぼくはゆっくりと立ち上がった。
辺りを見渡し、再び進むべき道を確認する。今回の戦闘で、自分がどれだけ未熟なのかを痛感した。ガレスから教わった基本的な戦闘技術がなければ、確実に命を落としていたことを思うと、あの教えがどれだけ自分にとって貴重なものだったかがわかる。
「これが試練の一端か……」
ぼくは疲れた体に鞭を打ち、再び歩き出した。もしこの先に秘宝が本当にあるなら、今の戦闘以上の困難が待ち受けているかもしれない。
それでも、この地を豊かにするため、そして領民たちの期待に応えるために、進むしかないと覚悟を決めた。
「まだ……ここで終わりじゃない。これからが本番なんだ」
そう自分に言い聞かせ、ぼくは険しい山岳地帯を歩き続ける。
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