秘宝を集めし領主~異世界から始める領地再建~

りおまる

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第一章:第一の秘宝「大地の加護」

第13話:山岳地帯への準備

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 秘宝「大地の加護」が眠っているかもしれない山岳地帯に向けて準備を整えるため、ぼくはできる限りの装備と知識を集めることに決めた。

 まず必要なのは、山岳地帯での生存に役立つ食料や防具、そして冒険に耐えうる体力と知識だ。

 そのために、元冒険者であるガレスに相談することにした。ガレスは長年にわたり様々な地での冒険経験が豊富で、山岳地帯での生存技術にも詳しい人物だ。

 領地再建を目指すぼくを気にかけて、親身に協力を申し出てくれていた。ガレスはそんな頼りになる人物だった。

「領主様、山岳地帯は見た目以上に厳しいですよ。寒さと空気の薄さ、そして何より険しい地形が、たった一歩のミスを許さない場所なんです」

 ガレスの厳しい表情から、山岳地帯の危険さがひしひしと伝わってきた。彼の鋭い眼光に、ぼくは気を引き締め直した。

「分かっています。けれども、この領地を豊かにするためには、どうしてもこの『大地の加護』が必要なんだ」

「その意気です、領主様。ですが準備を怠ると、それは死を意味します」

 ガレスは真剣に言い、しばし考え込むような表情を浮かべた。そして、持ってきた大きなバッグをガサゴソと漁り、いくつかのアイテムを取り出してテーブルに並べた。

 長く使い込まれた登山靴や耐水性のコート、食糧が入った小さな袋などが目に入る。

「まず、靴です。山岳地帯では足元が命です。滑りにくく、岩場でも踏ん張りがきくものを選びました」

 ガレスが選んでくれた靴を試しに履いてみると、丈夫で足首までしっかりとホールドされる感覚が伝わってきた。これは、急な傾斜を登る際には特に役立ちそうだ。

「そして、耐水性のコート。山岳地帯は突然の天候の変化がある場所です。寒さから身を守るためにも、しっかりと体温を維持できるものを」

 ぼくはコートを羽織り、その重みを感じながらも、暖かさに安堵した。山岳地帯の冷たい風を思えば、この装備がいかに心強いかがすぐにわかった。

 次に、ガレスは食料について説明を始めた。彼が用意したのは乾燥肉や硬いパン、そして少量の塩と水袋。栄養価が高く、軽量で持ち運びがしやすいものばかりだった。

「食料はこれで足りますか?必要なときに補給できるわけではないので、持ち運びやすい乾燥肉とパンを中心にしています」

「ありがとう、ガレス。これなら少しの間は凌げそうだ」

 そして、彼はぼくに小さな袋を差し出した。中には乾燥した草のようなものが詰まっている。

「これは何ですか?」

「これは、疲労回復のための薬草です。山岳地帯での冒険では、体力が尽きるのが最大の敵ですからね。万が一の時には、この薬草を少量噛んでください」

 ぼくはその小袋を大切にしまい、感謝の気持ちを込めてガレスに向き直った。

「ガレス、君の協力がなければここまで準備を整えられなかった。ありがとう。これで安心して出発できる」

 ガレスは軽く頭を下げて答えた。

「私も、領地のためにできることがあれば喜んでお手伝いしますよ。領主様の無事な帰還を待っています」

 準備を整える中で、リナもぼくを手伝ってくれていた。彼女は身軽で器用であり、必要な物資の調達から準備の段取りまで、テキパキとこなしてくれた。その献身的な姿勢にぼくはいつも感謝している。

「領主様、これで必要なものは全部揃いましたね?」

「そうだね。リナ、ありがとう。君がいなかったら、ここまで準備が整わなかっただろう」

 リナは少し照れたように笑い、頷いた。

「どうかお気をつけて……。私たち領民も領主様の無事を祈っています」

 その言葉に、ぼくは彼女の優しさと勇気を改めて感じた。領地に戻った時、彼女たちに誇りを持って伝えられるよう、無事に「大地の加護」を持ち帰ると心に誓った。

 そしてついに出発の朝がやってきた。朝日が差し込む中、ガレスやリナ、さらには村の人々が集まり、ぼくの旅立ちを見守ってくれている。

 彼らの温かい視線に見送られると、胸が少し締め付けられるような気持ちがしたが、それでも勇気が湧いてきた。

「行ってきます。必ず無事に戻って、この地をもっと豊かにする方法を見つけてきます」

 ぼくがそう宣言すると、ガレスが頷き、リナは小さく手を振ってくれた。村の人々もそれぞれに「お気をつけて」「必ず帰ってきてください」と声をかけてくれる。

 ぼくはその言葉に応えるように背筋を伸ばし、東の山岳地帯へと歩みを進めた。その先に何が待っているのかはわからないが、領地を救うために必要なものを手に入れるため、決して後悔しない旅になると信じていた。

 少しずつ見えてくる山の稜線、そしてその奥に秘められた「大地の加護」。

 これから始まる旅が、きっとこの地の未来を切り開く一歩になると信じ、ぼくは険しい山岳地帯へと足を踏み入れる決意を胸に、力強く前へ進んでいった。
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