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第四話 壊れた信頼
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父の葬儀は滞りなく済んだ
本来なら母が喪主であるのだが 突然父を亡くした衝撃と心労で床にふしてしまった
雪弥も相当に心を痛めていたが正之と親類の助けを得てなんとか全ての事を終える
疲れ果てて自室に戻り座り込むと緊張感で気が付かなかった身体の奥の熱を自覚する
「……」
薬を手に取ったものの飲むのは止めた
たとえ薬で抑えたとしてもきっと正之は実力行使して来るだろう…
母を置いて逃げる訳にはいかない…もうどうでもよかった
◇◇◇
しばらくの間道場生には暇をだし 人のいなくなった広い屋敷で雪弥は正之に組み敷かれていた
「いい加減 俺の物になると言えっ!」
正之は激しく突き上げながら迫る
「っ…嫌…ですっ」
雪弥は快楽に耐えながらも決して首を縦に振る事は無かった
「正之…殿… あの時何があったのですか?」
事が終わったあと雪弥は荒い息を整えながら再度尋ねた
「何度も言わせるな。満は父君とも真剣で勝負した…だが己の腕を過信した奴が卑怯にも背後から斬り付けたのだ」
正之は全く雪弥と顔を合わさない
だがまた すぐに話を切り替え雪弥に答えを迫った
「それよりも道場を立て直さなければならんだろう?」
「いい加減 強情をはるな」
雪弥は以前のように正之を信頼出来なかった
「父の喪があけるまで軽はずみな言動はなさらないでください…道場生の指導ならば正之殿がなされば宜しいでしょう?」
「僕は母上の看病があります これ以上相手は出来ません」
少し冷たい言い方だったかも知れない、しかしそれくらいに心は冷めてしまっていた
正之はまだ何か言いたげだったが雪弥の冷めた目を見て大人しく帰っていった
雪弥はどうする事もできずに声も出せずに泣き続けた…ただただ満に会いたかった
一年後、雪弥の母もやっと平静を取り戻したようだった
父の一周忌を終えたあと待っていたかのように正之は婚儀の話を持ち掛けて来た
「雪弥…父君のご意思だ俺の物になれ、事実上はそう云う仲だろう?」
まるで満の無かったかのような言葉。
正之にただ黙って抱かれたのはヒートの時期をやり過ごす事が出来ればよかっただけ。
(どうせ薬で抑えても迫ってくるのは分かっていたから)
いつものように冷めた目で見つめながら正之にある事を告げた
「その事ですが正之殿…父上は満殿に斬られた…と仰いましたよね?」
雪弥は密かに事を進めていた事があった
「そうだ…だが今更だろう?」
正之の言葉を無視して話を続ける
「僕は父上の仇討ちを致します…正之殿がこの道場を継ぐと云う事で話は済んでおります」
「僕は嫡子ですがΩ故に継承権はありません….だから父は貴方を選んだのでしょう?」
正之は苦々しい表情を見せるが、構わず話を続けた
「母上も賛成してくださいました 貴方に似合いの番を探すと張り切ってましたよ?」
それだけ云うと少しの手荷物だけ持って足速に道場を後にした
本来なら母が喪主であるのだが 突然父を亡くした衝撃と心労で床にふしてしまった
雪弥も相当に心を痛めていたが正之と親類の助けを得てなんとか全ての事を終える
疲れ果てて自室に戻り座り込むと緊張感で気が付かなかった身体の奥の熱を自覚する
「……」
薬を手に取ったものの飲むのは止めた
たとえ薬で抑えたとしてもきっと正之は実力行使して来るだろう…
母を置いて逃げる訳にはいかない…もうどうでもよかった
◇◇◇
しばらくの間道場生には暇をだし 人のいなくなった広い屋敷で雪弥は正之に組み敷かれていた
「いい加減 俺の物になると言えっ!」
正之は激しく突き上げながら迫る
「っ…嫌…ですっ」
雪弥は快楽に耐えながらも決して首を縦に振る事は無かった
「正之…殿… あの時何があったのですか?」
事が終わったあと雪弥は荒い息を整えながら再度尋ねた
「何度も言わせるな。満は父君とも真剣で勝負した…だが己の腕を過信した奴が卑怯にも背後から斬り付けたのだ」
正之は全く雪弥と顔を合わさない
だがまた すぐに話を切り替え雪弥に答えを迫った
「それよりも道場を立て直さなければならんだろう?」
「いい加減 強情をはるな」
雪弥は以前のように正之を信頼出来なかった
「父の喪があけるまで軽はずみな言動はなさらないでください…道場生の指導ならば正之殿がなされば宜しいでしょう?」
「僕は母上の看病があります これ以上相手は出来ません」
少し冷たい言い方だったかも知れない、しかしそれくらいに心は冷めてしまっていた
正之はまだ何か言いたげだったが雪弥の冷めた目を見て大人しく帰っていった
雪弥はどうする事もできずに声も出せずに泣き続けた…ただただ満に会いたかった
一年後、雪弥の母もやっと平静を取り戻したようだった
父の一周忌を終えたあと待っていたかのように正之は婚儀の話を持ち掛けて来た
「雪弥…父君のご意思だ俺の物になれ、事実上はそう云う仲だろう?」
まるで満の無かったかのような言葉。
正之にただ黙って抱かれたのはヒートの時期をやり過ごす事が出来ればよかっただけ。
(どうせ薬で抑えても迫ってくるのは分かっていたから)
いつものように冷めた目で見つめながら正之にある事を告げた
「その事ですが正之殿…父上は満殿に斬られた…と仰いましたよね?」
雪弥は密かに事を進めていた事があった
「そうだ…だが今更だろう?」
正之の言葉を無視して話を続ける
「僕は父上の仇討ちを致します…正之殿がこの道場を継ぐと云う事で話は済んでおります」
「僕は嫡子ですがΩ故に継承権はありません….だから父は貴方を選んだのでしょう?」
正之は苦々しい表情を見せるが、構わず話を続けた
「母上も賛成してくださいました 貴方に似合いの番を探すと張り切ってましたよ?」
それだけ云うと少しの手荷物だけ持って足速に道場を後にした
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