真珠の泪は毒か媚薬か

NEO ZONE

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千年の終わり

『水無瀬 瑞稀』瑞稀。

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『水無瀬 瑞稀』
   陽のある時間は瑞稀、夜の間は水無瀬と呼ばれいわゆる二重人格のように 二人の性格は違っている
   互いに一つの身体を共有している事は理解しているが全く気にしていないようだ

◇◇◇

   桜が終わり新緑の季節が来たと云うのに暗く立ち込める雲が寒々しい

   黄昏時の公園はさほど人が多くないが犬の散歩をする人、ジョギングをする人…など普段と変わらないであろう光景に見える
   しかしそんな中 人々のヒソヒソ話す声が囁かれていた
「何?アレ…変な髪の色…」
「撮影かなんかか?」
   人々が見つめる先にいる人物は腰まで届く髪は鮮やかな藍色をしていて赤味を帯びた茶色の瞳が不思議な雰囲気をかもしだしている
    人の世界のβは基本、黒か茶色の髪色だ
 「てか 何処から現れたの?」
「さっきまでいなかったよね?」
 まるで幽霊のように突然現れた『水無瀬 瑞稀』を見る目が変わる

「ねぇ…」

    突然、瑞稀が口を開くと周りの人々は小さな悲鳴を上げて逃げて行った

「ねぇ、お腹空いた」
    まるで子供のような物言いが虚しく響く。瑞稀も何があったのか理解出来ないのか小首を傾げて歩きはじめる
    公園の端まではさほど遠くなくすぐに通りに出られた
「なんだっけ?誰かに会いに行かなきゃ…僕じゃ分かんないから早く水無瀬出て来ないかなぁ?」
    公園の入り口のガードレールに座り込むと今にも沈みそうな夕日を眺めた
  
    ボ~っとしていると いつの間にかガラの悪い男達に取り囲まれていた
 どう見てもガラの悪い風体だ(念押し)
「彼女一人なの?」
 どうやら瑞稀を女の子と勘違いしている
    だがニヤニヤと嗤いながら瑞稀の顔を覗き込む数人の男にも 瑞稀は同じ調子で呟く
「あのね、お腹空いたの」
    瑞稀の精神年齢はおそらく十歳程度…物の善悪、人の善悪すらも理解出来ない天然っぷりだ
「そうか じゃお兄さん達がいい所に連れてってやるよ」
    しめしめといったふうに一人の男が手を伸ばした…が次の瞬間その手に激痛が走る
「って~なぁ!!」
    パッと手を引っ込めると瑞稀の膝の上で小さな黒猫がフーフー威嚇していた
「シャーッ!!ガルルルル」
「なんだぁ この猫?!」
    引っ掻かれた手を押さえて悪態をつくと別の男が奏を振り落とそうとする
「やっ!ダメッ」
    咄嗟に瑞稀が奏を抱きかかえると振り上げた男の手が瑞稀の頬に当たる
『ニャッ?!瑞稀さま ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!大丈夫ですかー!!』
    奏が必死に叫ぶ声も男達にはにゃーにゃー喚く声にしか聴こえない
「いいじゃん この猫ごと連れてっちまおうぜ?」
    やっと瑞稀にもこの状況がヤバいと分かって奏を抱えたままうずくまる
『リュウロ様リュウロ様リュウロ様~早く助けて~』
 必死に奏は叫び続けた、次はちゃんと!早く!瑞稀さまを探しに行きますから~~!!
  にゃーにゃー鳴く猫に構わず瑞稀の腕を掴み引きずって行こうとする男達の目の前が突然暗くなった
「全く…手間を掛けさせる」
    突然現れた長身の男が行く手を遮り見下ろしていた
「えっ?…」
    リュウロの圧倒的な威圧感に男達が動けなくなっている間に瑞稀はサッとリュウロの後ろに隠れる
「えっと?んーと?」
    瑞稀は何か言おうとするが言葉が出ない
「時間が無い 帰るぞ」
 返答を待たずにリュウロは瑞稀を抱え上げその場から跡形もなく消えさった

  男達はハッとして辺りを見回す
「俺たち何してたんだっけ?」
  知らぬ間に記憶が消されている…後処理は奏の仕事だ。『にゃーん』一言鳴いて走りだす
「そうだ、このクソ猫に引っ掻かれたんだっ」「待てやコラぁ」
  ワラワラと男達は猫を追いかけはじめた
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