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第2章
第93話
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柏木さんに作って貰ったチェインメイルを、早速その場で着込む。
独立した鎧としてではなく、鎧と鎧下代わりに着ている防刃シャツの間に着込む用に作って貰ったモノで、正確にはチェインメイルというよりはチェインシャツとでも言った方が良いのかもしれない。
材質は総ミスリル製でただでさえ軽くて丈夫なのに、さらには着用者の体内魔力(いわゆるオド)に反応して防御性能を増すうえ軽量化までするというのだから、かなりの優れものだ。
柏木さんは、以前にもミスリルを用いて同様のチェインシャツを製作したことが有るらしいのだが、このような特性が付いたのは初めてだというから、恐らくは鍛冶レベルの上昇が良い影響を与えたのだと思われる。
大力のブレストプレートの下に装備することで、かなりの防御力アップに繋がるだろう。
材料としてのミスリルも思ったより要求されなかったし、そもそも素材持ち込みなので費用もそれほど要らなかった。
これは全員分、作って貰った方が良いだろう。
予備の武器だが、前に破損したものとほぼ同じ造りの鎗にして貰った。
こちらは総魔鉄製の頑丈さ重視の物だ。
まるで金属製の杭といった印象を受ける、その独特のフォルムが懐かしかった。
さらにスローイングナイフを全部で10本と、ピンポン玉大の鉄球を100個。
カシャンボが落としたスキルブックに籠められていたスキルが、当のカシャンボが得意としていた【投擲】だったためだ。
普段は鉄球でスキル熟練度を稼いで、ここ一番でスローイングナイフを使おうと思う。
鉄球とスローイングナイフでは、そもそもの投げ方が全く違うが、そういう常識を無視してしまえるのが、スキル補正というヤツなのだ。
そこは変な拘りを持つより、素直に利用してしまえば良い。
オレが【投擲】を取得するに至った理由は単純だ。
兄は【短転移】で近接戦に持ち込む……いや、瞬時にケリをつけるのが本来のスタイルだし、遠距離戦が必要なら魔法を先にスキル化したいらしく【投擲】までは不要だと言い……父は昨夜グースカ寝ていた負い目からか全く所有権を主張しなかった。
妻は腕力的に劣るので、スキルが活きないだろうということで最初から辞退。
結局、オレが取得しておくのが良いだろうという結論に至ったのだった。
これで探索準備は万端。
すぐ使わないものをミドルインベントリーに収納し支払いを済ませると、柏木さんの見送りを受けながらダンジョンへ向かう。
まだダンジョンゲートは故障中のままのようで、物々しい武装の警官が警備と門番とを兼ねていた。
警察官に目礼し、ダンジョンパスを提示。
いよいよダンジョン内部へと進む。
昨日の午後、念入りに討伐しただけあって、それなりに時間が経ったにも関わらず、すぐにモンスターが押し寄せて来たりはしない。
昼から探索する妻達のことも考え、行く手を阻むモンスターとも必要最低限の戦闘回数に留めるが、オレは事前に考えていた通り各モンスターに1回ずつ旋風の魔法……ワールウインドを試していた。
すると、早速ある傾向が見えて来た。
ジャイアントリーチ(ヒル)や、ジャイアントスパイダー(クモ)、それからジャイアントセンチピード(ムカデ)やジャイアントピルバグ(ダンゴムシ)など、地を這うタイプのモンスターには効果覿面なのだが、むしろ生命力に劣るハズのジャイアントフライ(ハエ)が、意外にも1発の魔法では墜ちなかったのだ。
風属性の魔法の効きが飛行する虫型モンスターに効きが悪いとなると、今後【投擲】の出番は増えていくかもしれない。
カシャンボに少しだけ感謝したくなるが……やめた。
まだ眠いぐらいなのだ。
オレ(ついでに兄)の睡眠の妨害をした罪は重い。
ジャイアントビートル、次いで階層ボスのギガントビートルにもワールウインドを放つが、この巨大なカブトムシどもは旋風の魔法を食らっても全く怯むことが無いどころか、ほとんど意に介さず攻めかかって来た。
こうなるともう、明らかに飛行する虫型モンスターには【風魔法】の効きが弱いようだという結論になってしまう。
ジャイアントビートルには鎗でトドメを刺したが、ギガントビートルには続けてウインドライトエッジ……光輪の魔法も試すことにした。
属性相性うんぬん以前の問題としてウインドライトエッジは強力な魔法のようなのだが、ギガントビートルには一撃でトドメとまではいかなかったので、やはり相性の問題は有るようだ。
デスサイズも大別すると飛行する虫型モンスターのように思えるが、あちらは明らかに弱点になり得る細首に狙いを定めていたので、一撃打倒が可能だったに過ぎないように思える。
ずんぐりむっくりのカブトムシと、スマートでシャープな体型のカマキリとの違いが、明暗を分けた……というところだろうか。
結局ギガントビートルも鎗で倒すことになったが、それは致し方無いところだ。
続けて訪れた第2層でも、属性相性の実験は継続して行う。
第2層のモンスター出現頻度も、そこまで激しいものではなかった。
まだワールウインドを試していないモンスターが何故かあまり出現せず、多少余計な時間が掛かったぐらいだ。
半ば予想していた通り、ジャイアントビー(ハチ)にワールウインドの効きは悪い。
ちょうどジャイアントフライと、ジャイアントビートルの中間ぐらいの反応だった。
効いてはいるようだが、さして堪えていない……そんな印象を受ける。
反対に劇的な効果が有ったのが、クリーピング・クラッド(ヘドロ)や、ポイズンモールド(カビ)だった。
嘘みたいに効く……そんな感じ。
火に弱い以外にも、意外な弱点が有るようだった。
これは見た目から来る印象と、ただの勘なのだが、水魔法や土魔法は恐らくほとんど効かないだろうし、火魔法には風魔法以上に弱いのでは無いだろうか?
ライター1つ有れば消し炭に出来る相手なので、実験以外の理由で魔法を使う必要性には乏しいのだが……。
かなり階層ボスの部屋の近くまで到達してようやくジャイアントスコーピオン(サソリ)を発見。
コイツが見つからなかったせいで、かなり無駄な時間を取られてしまった。
ワールウインドの効果はそこそこといったところ……途端にヨロヨロし始めたが、撃破にまでは至らない。
これはちょうど、オークと同じぐらいの反応だろうか。
ゴブリンやコボルトだと、今のワールウインドでもギリギリ倒せるぐらいで、これが弓を持ったゴブリンアーチャーやコボルトアーチャーだと、ギリギリ耐えられてしまう。
つまりは属性相性を調べる際に、こうしたモンスターのヒットポイント(ゲーム的な表記をするならHP)とでも言うべき、生命力の差も考慮する必要があるようだ。
続けて階層ボスの部屋に突入し、ヘルスコーピオンにもワールウインドを放つ。
効いてはいるが、当然こちらも撃破するには到らない。
次にウインドライトエッジ……今度はアッサリ倒せてしまった。
第2層のボスが第1層のボスであるギガントビートルより、いわゆるヒットポイントが低いハズも無いので、これは恐らく相性の差なのだろう。
物理的な防御力と魔法への対抗力が全く別物なのは、既にフォートレスロブスター(要塞エビ)戦でハッキリしているので、勘違いという可能性は極めて低いと思われる。
それにしても…………攻撃力特化タイプのデスサイズと違い、見た目には強靭な生命力を持っていそうな階層ボス(ヘルスコーピオン)すら一撃で倒すとは思っていなかった。
先入観が邪魔をして、今までヘルスコーピオンに魔法を試していなかったのは、ちょっと迂闊だったかもしれない。
魔法の持つ可能性は、どうやらオレが考えていた以上だったらしい。
独立した鎧としてではなく、鎧と鎧下代わりに着ている防刃シャツの間に着込む用に作って貰ったモノで、正確にはチェインメイルというよりはチェインシャツとでも言った方が良いのかもしれない。
材質は総ミスリル製でただでさえ軽くて丈夫なのに、さらには着用者の体内魔力(いわゆるオド)に反応して防御性能を増すうえ軽量化までするというのだから、かなりの優れものだ。
柏木さんは、以前にもミスリルを用いて同様のチェインシャツを製作したことが有るらしいのだが、このような特性が付いたのは初めてだというから、恐らくは鍛冶レベルの上昇が良い影響を与えたのだと思われる。
大力のブレストプレートの下に装備することで、かなりの防御力アップに繋がるだろう。
材料としてのミスリルも思ったより要求されなかったし、そもそも素材持ち込みなので費用もそれほど要らなかった。
これは全員分、作って貰った方が良いだろう。
予備の武器だが、前に破損したものとほぼ同じ造りの鎗にして貰った。
こちらは総魔鉄製の頑丈さ重視の物だ。
まるで金属製の杭といった印象を受ける、その独特のフォルムが懐かしかった。
さらにスローイングナイフを全部で10本と、ピンポン玉大の鉄球を100個。
カシャンボが落としたスキルブックに籠められていたスキルが、当のカシャンボが得意としていた【投擲】だったためだ。
普段は鉄球でスキル熟練度を稼いで、ここ一番でスローイングナイフを使おうと思う。
鉄球とスローイングナイフでは、そもそもの投げ方が全く違うが、そういう常識を無視してしまえるのが、スキル補正というヤツなのだ。
そこは変な拘りを持つより、素直に利用してしまえば良い。
オレが【投擲】を取得するに至った理由は単純だ。
兄は【短転移】で近接戦に持ち込む……いや、瞬時にケリをつけるのが本来のスタイルだし、遠距離戦が必要なら魔法を先にスキル化したいらしく【投擲】までは不要だと言い……父は昨夜グースカ寝ていた負い目からか全く所有権を主張しなかった。
妻は腕力的に劣るので、スキルが活きないだろうということで最初から辞退。
結局、オレが取得しておくのが良いだろうという結論に至ったのだった。
これで探索準備は万端。
すぐ使わないものをミドルインベントリーに収納し支払いを済ませると、柏木さんの見送りを受けながらダンジョンへ向かう。
まだダンジョンゲートは故障中のままのようで、物々しい武装の警官が警備と門番とを兼ねていた。
警察官に目礼し、ダンジョンパスを提示。
いよいよダンジョン内部へと進む。
昨日の午後、念入りに討伐しただけあって、それなりに時間が経ったにも関わらず、すぐにモンスターが押し寄せて来たりはしない。
昼から探索する妻達のことも考え、行く手を阻むモンスターとも必要最低限の戦闘回数に留めるが、オレは事前に考えていた通り各モンスターに1回ずつ旋風の魔法……ワールウインドを試していた。
すると、早速ある傾向が見えて来た。
ジャイアントリーチ(ヒル)や、ジャイアントスパイダー(クモ)、それからジャイアントセンチピード(ムカデ)やジャイアントピルバグ(ダンゴムシ)など、地を這うタイプのモンスターには効果覿面なのだが、むしろ生命力に劣るハズのジャイアントフライ(ハエ)が、意外にも1発の魔法では墜ちなかったのだ。
風属性の魔法の効きが飛行する虫型モンスターに効きが悪いとなると、今後【投擲】の出番は増えていくかもしれない。
カシャンボに少しだけ感謝したくなるが……やめた。
まだ眠いぐらいなのだ。
オレ(ついでに兄)の睡眠の妨害をした罪は重い。
ジャイアントビートル、次いで階層ボスのギガントビートルにもワールウインドを放つが、この巨大なカブトムシどもは旋風の魔法を食らっても全く怯むことが無いどころか、ほとんど意に介さず攻めかかって来た。
こうなるともう、明らかに飛行する虫型モンスターには【風魔法】の効きが弱いようだという結論になってしまう。
ジャイアントビートルには鎗でトドメを刺したが、ギガントビートルには続けてウインドライトエッジ……光輪の魔法も試すことにした。
属性相性うんぬん以前の問題としてウインドライトエッジは強力な魔法のようなのだが、ギガントビートルには一撃でトドメとまではいかなかったので、やはり相性の問題は有るようだ。
デスサイズも大別すると飛行する虫型モンスターのように思えるが、あちらは明らかに弱点になり得る細首に狙いを定めていたので、一撃打倒が可能だったに過ぎないように思える。
ずんぐりむっくりのカブトムシと、スマートでシャープな体型のカマキリとの違いが、明暗を分けた……というところだろうか。
結局ギガントビートルも鎗で倒すことになったが、それは致し方無いところだ。
続けて訪れた第2層でも、属性相性の実験は継続して行う。
第2層のモンスター出現頻度も、そこまで激しいものではなかった。
まだワールウインドを試していないモンスターが何故かあまり出現せず、多少余計な時間が掛かったぐらいだ。
半ば予想していた通り、ジャイアントビー(ハチ)にワールウインドの効きは悪い。
ちょうどジャイアントフライと、ジャイアントビートルの中間ぐらいの反応だった。
効いてはいるようだが、さして堪えていない……そんな印象を受ける。
反対に劇的な効果が有ったのが、クリーピング・クラッド(ヘドロ)や、ポイズンモールド(カビ)だった。
嘘みたいに効く……そんな感じ。
火に弱い以外にも、意外な弱点が有るようだった。
これは見た目から来る印象と、ただの勘なのだが、水魔法や土魔法は恐らくほとんど効かないだろうし、火魔法には風魔法以上に弱いのでは無いだろうか?
ライター1つ有れば消し炭に出来る相手なので、実験以外の理由で魔法を使う必要性には乏しいのだが……。
かなり階層ボスの部屋の近くまで到達してようやくジャイアントスコーピオン(サソリ)を発見。
コイツが見つからなかったせいで、かなり無駄な時間を取られてしまった。
ワールウインドの効果はそこそこといったところ……途端にヨロヨロし始めたが、撃破にまでは至らない。
これはちょうど、オークと同じぐらいの反応だろうか。
ゴブリンやコボルトだと、今のワールウインドでもギリギリ倒せるぐらいで、これが弓を持ったゴブリンアーチャーやコボルトアーチャーだと、ギリギリ耐えられてしまう。
つまりは属性相性を調べる際に、こうしたモンスターのヒットポイント(ゲーム的な表記をするならHP)とでも言うべき、生命力の差も考慮する必要があるようだ。
続けて階層ボスの部屋に突入し、ヘルスコーピオンにもワールウインドを放つ。
効いてはいるが、当然こちらも撃破するには到らない。
次にウインドライトエッジ……今度はアッサリ倒せてしまった。
第2層のボスが第1層のボスであるギガントビートルより、いわゆるヒットポイントが低いハズも無いので、これは恐らく相性の差なのだろう。
物理的な防御力と魔法への対抗力が全く別物なのは、既にフォートレスロブスター(要塞エビ)戦でハッキリしているので、勘違いという可能性は極めて低いと思われる。
それにしても…………攻撃力特化タイプのデスサイズと違い、見た目には強靭な生命力を持っていそうな階層ボス(ヘルスコーピオン)すら一撃で倒すとは思っていなかった。
先入観が邪魔をして、今までヘルスコーピオンに魔法を試していなかったのは、ちょっと迂闊だったかもしれない。
魔法の持つ可能性は、どうやらオレが考えていた以上だったらしい。
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