42 / 312
第1章
第42話
しおりを挟む
オレに睨まれたデスサイズは……首を傾げるような仕草で、その特徴的な逆三角形の頭部の角度を変えた。
急に獲物の雰囲気が変わったことを訝しんでいるのだろうか?
先ほどの急な退避行動も、今思うと不自然なものだ。
何かしら本能的なものに衝き動かされた行動のようにも見えたが、先ほどから頻りに動かされているデスサイズの顔を観察している限りでは、そういった自分自身の行動の理由が分かっていないようにも見える。
じわり……ヤツとの距離を詰めていく。
それでも未だに動けないでいるカマキリ。
さらに近付く…………と、唐突にヤツの死神の鎌が予備動作もなく繰り出された。
取り巻きという枷が無くなったことで、これまでに倍するかのような超速の斬擊。
しかし、それは折り込み済みだ。
デスサイズの間合いに無造作に踏み込めば、多少混乱していようとも、鎌を伸ばさずにはいられまい。
【パリィ】
パリィアミュレットによって仮に得ているスキルの力で、デスサイズの鎌のうち、刃の無い側面に鎗を当て受け流す。
今までオレは、知らず知らずにビビってしまっていたのだろう。
デスサイズから放たれる致命必至の一撃を、鎗で受け流すなんてことを考えたのは、今が初めてなのだから……。
受け流した勢いそのままに、ヤツの身体に体当たりするような要領で、強引に間合いを詰める。
懐に入ってしまえば、むしろこちらの間合いだ。
しかし、敵もただではやらせてくれない。
狡猾なカマキリの女王は、自分の間合いを失いかねないと見るや、すかさず受け流されたのとは逆の鎌を、今度は水平に薙ぎ払ってきた。
その斬擊の軌道は、ちょうどオレの首の位置に猛烈な勢いを持って迫る。
その狙いは正確無比……しかし、今は逆にそれが仇となった。
ボクシングのダッキングのように、前に屈みこんで避け、そのまま低い姿勢を保って突進。
デスサイズの無防備な腹に、鎗を突き刺す。
所詮は硬い甲殻に護られているわけでもないカマキリだ。
拍子抜けするほど抵抗なく穴を穿つことが出来た。
デスサイズが距離を取ろうともがく間の僅かな隙に、技もへったくれもない滅多刺し。
腹、胸、首、肩、腹、胸…………次々と風穴を空ける。
不意に【危機察知】が警鐘を鳴らす。
苦し紛れに噛み付こうとしたデスサイズの顔が、驚くほど近くにまで迫っていたのだ。
回避ついでに、思いっきり鎗を棍棒のように振り下ろして殴打。
ヤツの逆三角形の頭部を地面に叩きつけて、キスをさせてやった。
結果的には戦果を拡大したが、今のは非常に危ないところだったと思う。
しかし、惚けている暇は無い。
起き上がろうともがくデスサイズの頭部を中心に、連擊で穴を増やす。
たまらず翅を広げ、ガバッと一気に体勢を戻したヤツから、オレもいったんバックステップで距離を取る。
…………ボロボロじゃないか。
片腕は既にちぎれかけ、首にいたっては幾つも風穴が空いたせいか傾いている。
胸や腹からはダラダラと体液を垂れ流し、地面を濡らしていく。
無理やり身体を起こすのに使われた翅は、依然として大きく拡げられたまま。
自然界のカマキリそのものの威嚇体勢。
自分を精一杯に大きく見せようと……少しでも脅威に映ればと…………その態度はしかし、今のお互いの力関係を示しているようにしか見えない。
じわり、ヤツとの距離を詰めていく。
じわり、ヤツも僅かに後ずさりをして距離を保つ。
オレが進むと、同じだけデスサイズは下がる。
これ以上の長期戦は、オレにとっても不本意だ。
ヤツがこれ以上、後ろに下がる隙を与えぬように、遠慮なく駆け寄っていく。
たまらず繰り出される、健在な方の鎌の一撃。
相も変わらず目を背けたくなるほど濃密な死の気配が迫る。
しかし……
【パリィ】
来ると分かっている一撃は、いとも容易に受け流すことが出来た。
そして長大な体躯に似合わぬその細首に、死神の鎌を支える肩に、胸に、腹に、一気呵成に鎗を突き出す。
そして……細い首が堪らず、カマキリ特有の重たい逆三角形の頭部を地面に投げ出したその時に、長かった戦闘は終わりの時を迎えた。
……光に包まれ消えていくデスサイズの頭部が、恨めしげにオレを睨んでいるように見える。
急に獲物の雰囲気が変わったことを訝しんでいるのだろうか?
先ほどの急な退避行動も、今思うと不自然なものだ。
何かしら本能的なものに衝き動かされた行動のようにも見えたが、先ほどから頻りに動かされているデスサイズの顔を観察している限りでは、そういった自分自身の行動の理由が分かっていないようにも見える。
じわり……ヤツとの距離を詰めていく。
それでも未だに動けないでいるカマキリ。
さらに近付く…………と、唐突にヤツの死神の鎌が予備動作もなく繰り出された。
取り巻きという枷が無くなったことで、これまでに倍するかのような超速の斬擊。
しかし、それは折り込み済みだ。
デスサイズの間合いに無造作に踏み込めば、多少混乱していようとも、鎌を伸ばさずにはいられまい。
【パリィ】
パリィアミュレットによって仮に得ているスキルの力で、デスサイズの鎌のうち、刃の無い側面に鎗を当て受け流す。
今までオレは、知らず知らずにビビってしまっていたのだろう。
デスサイズから放たれる致命必至の一撃を、鎗で受け流すなんてことを考えたのは、今が初めてなのだから……。
受け流した勢いそのままに、ヤツの身体に体当たりするような要領で、強引に間合いを詰める。
懐に入ってしまえば、むしろこちらの間合いだ。
しかし、敵もただではやらせてくれない。
狡猾なカマキリの女王は、自分の間合いを失いかねないと見るや、すかさず受け流されたのとは逆の鎌を、今度は水平に薙ぎ払ってきた。
その斬擊の軌道は、ちょうどオレの首の位置に猛烈な勢いを持って迫る。
その狙いは正確無比……しかし、今は逆にそれが仇となった。
ボクシングのダッキングのように、前に屈みこんで避け、そのまま低い姿勢を保って突進。
デスサイズの無防備な腹に、鎗を突き刺す。
所詮は硬い甲殻に護られているわけでもないカマキリだ。
拍子抜けするほど抵抗なく穴を穿つことが出来た。
デスサイズが距離を取ろうともがく間の僅かな隙に、技もへったくれもない滅多刺し。
腹、胸、首、肩、腹、胸…………次々と風穴を空ける。
不意に【危機察知】が警鐘を鳴らす。
苦し紛れに噛み付こうとしたデスサイズの顔が、驚くほど近くにまで迫っていたのだ。
回避ついでに、思いっきり鎗を棍棒のように振り下ろして殴打。
ヤツの逆三角形の頭部を地面に叩きつけて、キスをさせてやった。
結果的には戦果を拡大したが、今のは非常に危ないところだったと思う。
しかし、惚けている暇は無い。
起き上がろうともがくデスサイズの頭部を中心に、連擊で穴を増やす。
たまらず翅を広げ、ガバッと一気に体勢を戻したヤツから、オレもいったんバックステップで距離を取る。
…………ボロボロじゃないか。
片腕は既にちぎれかけ、首にいたっては幾つも風穴が空いたせいか傾いている。
胸や腹からはダラダラと体液を垂れ流し、地面を濡らしていく。
無理やり身体を起こすのに使われた翅は、依然として大きく拡げられたまま。
自然界のカマキリそのものの威嚇体勢。
自分を精一杯に大きく見せようと……少しでも脅威に映ればと…………その態度はしかし、今のお互いの力関係を示しているようにしか見えない。
じわり、ヤツとの距離を詰めていく。
じわり、ヤツも僅かに後ずさりをして距離を保つ。
オレが進むと、同じだけデスサイズは下がる。
これ以上の長期戦は、オレにとっても不本意だ。
ヤツがこれ以上、後ろに下がる隙を与えぬように、遠慮なく駆け寄っていく。
たまらず繰り出される、健在な方の鎌の一撃。
相も変わらず目を背けたくなるほど濃密な死の気配が迫る。
しかし……
【パリィ】
来ると分かっている一撃は、いとも容易に受け流すことが出来た。
そして長大な体躯に似合わぬその細首に、死神の鎌を支える肩に、胸に、腹に、一気呵成に鎗を突き出す。
そして……細い首が堪らず、カマキリ特有の重たい逆三角形の頭部を地面に投げ出したその時に、長かった戦闘は終わりの時を迎えた。
……光に包まれ消えていくデスサイズの頭部が、恨めしげにオレを睨んでいるように見える。
1
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
性癖の館
正妻キドリ
ファンタジー
高校生の姉『美桜』と、小学生の妹『沙羅』は性癖の館へと迷い込んだ。そこは、ありとあらゆる性癖を持った者達が集う、変態達の集会所であった。露出狂、SMの女王様と奴隷、ケモナー、ネクロフィリア、ヴォラレフィリア…。色々な変態達が襲ってくるこの館から、姉妹は無事脱出できるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる