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第1章

第38話

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 ゴブリンが弓に矢をつがえようとしているのを見たオレは、咄嗟に鎗を投擲した。
 狙いあやまたず、見事に腹部に鎗が命中し、土手っ腹から鎗を生やしたゴブリンは、痛みに悶え矢を取り落とす。
 ……いや、鎗を抜こうとしているのか?
 素早く駆け寄りゴブリンを蹴倒し、お望み通り鎗を抜いてやる。
 そして七転八倒しているゴブリンの頭部に、慈悲の一撃をくれてやった。

 少しの間を置いて、光に包まれたゴブリンは魔石に変わったが、オレはまたも暗い気分に襲われていた。

 弓を使うゴブリンは厄介だ。
 さして弓の扱いが上手いわけでもないし、膂力膂力りょりょくに優れているわけでもないが、それでも飛び道具が厄介なのは間違いない。
 お向かいの二階堂さんや、ダンジョンに潜り始める前のウチの父や妻のように、ゴブリンぐらいなら、何とか倒せる大人は多いと思う。
 しかし、弓矢を携えたゴブリンには、そうした相手にも手傷を負わせてしまう可能性がある。
 ダンジョン外に現れるモンスターに対しての警戒レベルを、一段と上げなくてはならないだろう。

 ◆

 その後も周辺警戒に出たタイミングで、モンスターを討伐する機会が有ったが、ゴブリンアーチャーや、ワーラットなどは現れず、スライムや、ジャイアントピルバグといった、比較的脅威になりにくいモンスターを駆逐するに留まった。

 そして夕食後に行われた報告会。
 やはりゴブリンアーチャーの出現という報告には、皆が憂慮を示す。

 しかし、またも明るい話題が兄達から提供されたことで、オレも沈んでいた気持ちがかなり晴れた。

 まずは父。
 次いで妻が、それぞれ単独でのオークの討伐に成功したのだ。
 もちろん今回の討伐は、兄の護衛ありきなのかもしれないが、これで近いうちに、兄やオレが完全にフリーに動けるようになるだろう。
 そうなれば、異常に高い難易度の最寄りのダンジョンの攻略が、一気にスピードアップすることは間違いない。

 そして更に……またも本部鑑定行きのレア物を、兄達は入手していた。
 形態は、すね当て。
 サッカーのレガースに似たタイプらしく、使い勝手は良さそうだ。
 鑑定の結果が待たれる。
 先日、本部鑑定に出したマジックアイテムの靴は、何事も無ければ明日の午前中にはこちらに届くという。
 輸送を担うことになるドライバーの安全を、心の中で祈ることにした。

 他の戦利品だが、兄達は不作と言っていたが、それはとんでもない話だ。
 今回、2冊目となる【危機察知】スキルの籠められたスキルブックを得ていて、それは今日の探索の安全を期した兄達がその場で話し合い、その場で父に使って貰っていた。
 これも、オレや兄が出掛けた時の防衛体制を考えると、非常に良い判断だと言えるだろう。

 その他には、ポテンシャルキャンディ、持久力向上剤、ポテンシャルオーブ……そしてネタスクロールが何と7つ。

 ポテンシャルキャンディは味見したいらしかった妻が、持久力向上剤は再び父が、ポテンシャルオーブは兄が使うことになった。

 ……ネタスクロールは自動的にオレね、うん。

 まだ何の効果が有るのかは分からないし、実感は得られない。

 何か不足している条件があるのだろうか?
 それともやはりオレの考え過ぎで、本当にネタアイテムなのか?

 さて……そろそろ時間がヤバい。
 ギガントビートル討伐実験の準備を終え、オレは夜の探索行に出発することにした。

 息子と一緒に風呂に入れなくなるのは心底ツラいが、これはもう仕方ない。
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