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第1章
第19話
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残る東側の探索も佳境……オレは第1層の最奥、いわゆるボス部屋の前に居た。
間引きだけが目的なら入る必要性は無い。
ここの第1層のボスは既に判明している。
虫だらけの第1層に相応しく、カブトムシを著しく巨大化させたモンスター、ギガントビートルだ。
東側には一回り小さなジャイアントビートルも多く生息しており、中々の硬さとタフさで苦しめてくれた。
それだけなら、そこまで問題にならないのだが、厄介なのはヤツらが意外なまでの速さで飛ぶことだ。
イノシシサイズのカブトムシが飛んで迫ってくる姿は、圧巻の一言。
運良く習得した【槍術】スキルのおかげで何とかなったが、なるべくなら戦うのを避けたいタイプのモンスターではある。
ギガントビートル……以前のオレなら回れ右して帰宅するほどの超重量級の強大なモンスター。
気心の知れた大学時代のパーティが揃っていれば、展開次第で何とかなるかなぁ?……といったところだ。
そりゃ、ここのダンジョン廃れるよなぁ。
どうにか気合いを入れ直し、ボス部屋の扉を開ける。
中には軽自動車より少し大きいぐらいのサイズの、巨大カブトムシが鎮座していた。
思わず怯みそうになるが、素早く駆け寄り、まずは一撃。
甲殻の継ぎ目を狙って、鋭く総鉄製の凶器を突き込む。
──ガヂッ!
鈍い音を立てて、鎗が弾かれてしまう。
僅かなタイミングの遅れで、継ぎ目に挿し込むのに失敗した様だ。
いくらか甲殻を削りはしたものの、堅牢な甲殻の中の身体には、恐らく有効な傷を付けられていないだろう。
やはり、真正面から戦うには相性の良くない相手だ。
翅を広げ、シューシューと威嚇の音を上げつつ、飛び立つ準備をしているギガントビートルから、いったんバックステップで距離を取る。
宙空にその巨体を浮かび上がらせたギガントビートルは、デカい図体に見合わない速度で、オレに向かって凶悪な突撃を仕掛けてきた。
直線的な動きではあるが、たとえ来るのが分かっていても回避は容易ではない。
それほどまでに速いのだ。
とても擦れ違いざまに一撃を入れる余裕は無い。
前転の要領で転がりながら躱し、勢いそのままに奥の扉まで走る。
この扉を開ければ第2層への階段が待っているのだろうが、どういうわけか階層ボスが討伐されるまで、開放も破壊も出来ない仕組みになっているのだ。
さして間を置かず、再びギガントビートルが飛翔したまま迫ってきた。
今度は距離が大きく空いた分、いくらか余裕を持って回避に成功。
壁や扉にブチ当たって脳震盪でも起こさないかと期待してみるも、さすがにそこまで都合良くはいかない。
だが、その巨体ゆえか長時間の飛行は出来ないようで、今度は地面に降りて突進して来た。
これは難なく躱し……そして追走!
ヤツがこちらに向きなおる間に、しっかりと態勢を整える。
そして比較的甲殻の薄い眼球部分に狙いを着けて、渾身の力で鎗を繰り出す。
狙い過たずオレの短鎗は深々と穴を穿つ。
ジャイアントビートルより的が大きい分、狙いやすいと言うものだ。
先ほどの先制攻撃では、駆け寄ってすぐに鎗を突き入れた分、ここまで精度の高い攻撃は望むべくも無かった。
後は作業だ。
痛みを感じていないかのように、その長く伸びたツノを振り回すギガントビートルから距離を取る。
そして飛翔からの一撃は大きく回避。
地上での突進は余裕を持って躱し、先ほどと同じ要領で残された眼球を潰す。
目標を見失い、やたらめったらツノを振り回すギガントビートルを放置し、疲労で動きが鈍ったら、既に穴の空いた眼球部分から角度を変えて突き刺す。
これを幾度か繰り返すうち、致命的な角度で刺突が決まったのだろう。
動きを完全に止めたギガントビートルは、光に包まれるようにして、呆気なく消え去った。
その甲殻と同じく黒光りする宝箱を遺して……
間引きだけが目的なら入る必要性は無い。
ここの第1層のボスは既に判明している。
虫だらけの第1層に相応しく、カブトムシを著しく巨大化させたモンスター、ギガントビートルだ。
東側には一回り小さなジャイアントビートルも多く生息しており、中々の硬さとタフさで苦しめてくれた。
それだけなら、そこまで問題にならないのだが、厄介なのはヤツらが意外なまでの速さで飛ぶことだ。
イノシシサイズのカブトムシが飛んで迫ってくる姿は、圧巻の一言。
運良く習得した【槍術】スキルのおかげで何とかなったが、なるべくなら戦うのを避けたいタイプのモンスターではある。
ギガントビートル……以前のオレなら回れ右して帰宅するほどの超重量級の強大なモンスター。
気心の知れた大学時代のパーティが揃っていれば、展開次第で何とかなるかなぁ?……といったところだ。
そりゃ、ここのダンジョン廃れるよなぁ。
どうにか気合いを入れ直し、ボス部屋の扉を開ける。
中には軽自動車より少し大きいぐらいのサイズの、巨大カブトムシが鎮座していた。
思わず怯みそうになるが、素早く駆け寄り、まずは一撃。
甲殻の継ぎ目を狙って、鋭く総鉄製の凶器を突き込む。
──ガヂッ!
鈍い音を立てて、鎗が弾かれてしまう。
僅かなタイミングの遅れで、継ぎ目に挿し込むのに失敗した様だ。
いくらか甲殻を削りはしたものの、堅牢な甲殻の中の身体には、恐らく有効な傷を付けられていないだろう。
やはり、真正面から戦うには相性の良くない相手だ。
翅を広げ、シューシューと威嚇の音を上げつつ、飛び立つ準備をしているギガントビートルから、いったんバックステップで距離を取る。
宙空にその巨体を浮かび上がらせたギガントビートルは、デカい図体に見合わない速度で、オレに向かって凶悪な突撃を仕掛けてきた。
直線的な動きではあるが、たとえ来るのが分かっていても回避は容易ではない。
それほどまでに速いのだ。
とても擦れ違いざまに一撃を入れる余裕は無い。
前転の要領で転がりながら躱し、勢いそのままに奥の扉まで走る。
この扉を開ければ第2層への階段が待っているのだろうが、どういうわけか階層ボスが討伐されるまで、開放も破壊も出来ない仕組みになっているのだ。
さして間を置かず、再びギガントビートルが飛翔したまま迫ってきた。
今度は距離が大きく空いた分、いくらか余裕を持って回避に成功。
壁や扉にブチ当たって脳震盪でも起こさないかと期待してみるも、さすがにそこまで都合良くはいかない。
だが、その巨体ゆえか長時間の飛行は出来ないようで、今度は地面に降りて突進して来た。
これは難なく躱し……そして追走!
ヤツがこちらに向きなおる間に、しっかりと態勢を整える。
そして比較的甲殻の薄い眼球部分に狙いを着けて、渾身の力で鎗を繰り出す。
狙い過たずオレの短鎗は深々と穴を穿つ。
ジャイアントビートルより的が大きい分、狙いやすいと言うものだ。
先ほどの先制攻撃では、駆け寄ってすぐに鎗を突き入れた分、ここまで精度の高い攻撃は望むべくも無かった。
後は作業だ。
痛みを感じていないかのように、その長く伸びたツノを振り回すギガントビートルから距離を取る。
そして飛翔からの一撃は大きく回避。
地上での突進は余裕を持って躱し、先ほどと同じ要領で残された眼球を潰す。
目標を見失い、やたらめったらツノを振り回すギガントビートルを放置し、疲労で動きが鈍ったら、既に穴の空いた眼球部分から角度を変えて突き刺す。
これを幾度か繰り返すうち、致命的な角度で刺突が決まったのだろう。
動きを完全に止めたギガントビートルは、光に包まれるようにして、呆気なく消え去った。
その甲殻と同じく黒光りする宝箱を遺して……
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