僕は警官。武器はコネ。【イラストつき】

本庄照

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Mission:消えるカジノ

第107話:解析 ~針がなければ魚は釣れない~

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「飯田がいるのは北海道札幌市だということがわかりました」
 アクセス解析の結果はすぐに出た。翌日の朝、多賀は飯田の情報をまとめて印刷したものを情報課の面々に配る。顔写真は運転免許証のものだ。誰でもそうだが、免許証の写真だけを見せられると犯罪者感がすごい。

「ねえ、それ最初からアクセス解析したら良かったんじゃないの?」
 章のもっともなツッコミを多賀は知らんぷりして話を進める。
 アクセス解析のことは諏訪に説明しているうちに思い出した、とバレたくないからだ。伊勢兄弟には言わずともバレているが。

「詳細な現住所はわからないのか」
「スマートフォンの契約はBe-Tailを退職する前だったこともあり、詳細な現住所は分かりません。アクセス解析で、現住所の候補を絞りはしましたが」
 多賀は面々に地図を渡す。飯田が北海道に渡ってからのツイート等のアクション全てを解析した結果の地図だ。

「……札幌って、一〇〇万都市だよな」
「人口は二〇〇万人近くいます」
 多賀は澄ました顔で頷いた。
「場所を絞ったとしても何人いる?」
「多分、五千人もいませんよ」
 それでも多いものは多い。しかも、普通の警察の捜査と違って、あまり多くの人員は費やせない。それが情報課の弱いところだ。
 
「諏訪は飯田を見つけに北海道まで行くんやな……」
 春日が憂いを帯びた美しい目をこちらに向けてきた。同情の目線である。その同情がかえって諏訪の心を折る。
「いつからや?」
「明日の朝、羽田発」
「ほんま行動が早いな。かわいそうに」
 春日は哀れんでくるが、だからといって立場を変わってくれるわけではない。

「……早いに越したことはないというか、掴んだ情報は新しいうちに使わなきゃいけないからな」
「それもそうや」
「まあ、頑張ってくるよ」

「飯田を発見したとして、声はかけられるのか?」
 春日が離れたと同時に寄って来たのは、コーヒーを淹れてきた章だ。気の利く多賀と違い、自分の分だけを用意して自分一人で飲んでいる。
「それは大丈夫っす。競技が違えど、町で有名選手を見かけて声をかけるのは不自然じゃないっすから」
 向こうが諏訪の顔や名前を知っているかはわからないが、飯田の顔を見て声をかける存在として不自然ではない。そこから連絡先を交換しようと持ち掛けても、怪しまれはしないだろう。

「ただ、飯田に会えても、カジノを紹介してもらえるかどうかは微妙なところやな」
「時間がかかるのは承知の上っすけど……」
 心配はそこだった。ただの友人にならなれる自信があるが、違法カジノを紹介してもらうことが果たして可能なのか。しかも、相手はカジノのせいで多重債務者に堕ちているというのに。カジノに良い印象を持っていない相手に、カジノを紹介してくれと頼みこみ、実際に紹介してもらうことが可能なのか。

「しかも、相手は消費者金融で多重債務者になってるわけだろ。おそらく、カジノの借金を、消費者金融で金を借りて返したんだろうな。つまりカジノとは縁が切れてるわけだ」
 裕がばさりと飯田の資料を机に撒いた。
「飯田に行き当たったところでカジノに行きつくとは思えない」

「俺だったら、別の当てを探すところだな」
「せっかく繋がった糸なのに……」
 多賀が肩を落とすが、裕は首を振る。
「いくら海に糸を垂らしても、針がなければ魚は釣れないだろ」

「いや、針なんかいくらでも付けられる」
 裕の例え話を一瞬で蹴り落としたのは章だ。あまりの早業に、裕は口を半開きにして章の顔を目で追う。
「金で買え」
 章は当たり前のことのように言う。
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