86 / 185
Mission:大地に光を
第86話:尋問 ~死への恐怖で眠れない~
しおりを挟む
警察からのスパイであることが発覚してからというもの、三嶋の生活場所は自白剤を打たれた尋問室である。嫌な思い出のある部屋だ。おまけに、普段は外から鍵がかけられているときた。窓もない部屋に薄い布団で寝かせられるのには辟易したが、二週間もすると幾分か慣れた。
そこまでして他の信者と接触させたくないものなのだろうか、と三嶋は思う。だが、ここまでやる以上はそうなのだろう。自分はそんなに有害なスパイではないと自負しているが、勿論そう言ったところで向こうが聞き入れるわけもない。
前は、亮成がクリーニングしたスーツを直接届けてくれたが、それも今はない。見張りの信者が急に扉を開け、ノブにスーツのハンガーを引っ掛けて扉を閉じ、また鍵をかける。一週間で会話らしい会話をできるのは、兄の元へ連れ出される時だけだ。
曜日の感覚も失われつつあるが、ヒゲの伸び具合で予想はできていた。摘まめるかという長さになったころに風呂に連れ出され、翌日に兄に会いに行く準備がなされる。
この部屋には水しか出ないがシャワーもついているしトイレもある。人を閉じ込めるのに特化した部屋と言っていい。今まで何人がこの部屋で尋問されてきたのだろう。
部屋の中には数枚の下着とシャツが投げ込まれ、三嶋は日々水のシャワーで服を洗濯し、椅子にかけて干すという生活を送っている。洗うのが難しい黒パンツは扉前に置いておくと回収して新しいものが与えられる。これで人権を与えているつもりなのだろうか。
この惨めで厳しい生活に対するスパイスが兄との会食となると、いよいよストレスのたまり具合が厳しい。
そろそろ、兄との話をでっちあげるのも限界が近い。もし、兄との仲が悪く、兄とは何の話も進めていないことが教団側に発覚したらどうなるのだろう。それこそ「死を覚悟する」、いや待っているのは死そのものだ。三嶋の心は折れかけていた。
そこまでして他の信者と接触させたくないものなのだろうか、と三嶋は思う。だが、ここまでやる以上はそうなのだろう。自分はそんなに有害なスパイではないと自負しているが、勿論そう言ったところで向こうが聞き入れるわけもない。
前は、亮成がクリーニングしたスーツを直接届けてくれたが、それも今はない。見張りの信者が急に扉を開け、ノブにスーツのハンガーを引っ掛けて扉を閉じ、また鍵をかける。一週間で会話らしい会話をできるのは、兄の元へ連れ出される時だけだ。
曜日の感覚も失われつつあるが、ヒゲの伸び具合で予想はできていた。摘まめるかという長さになったころに風呂に連れ出され、翌日に兄に会いに行く準備がなされる。
この部屋には水しか出ないがシャワーもついているしトイレもある。人を閉じ込めるのに特化した部屋と言っていい。今まで何人がこの部屋で尋問されてきたのだろう。
部屋の中には数枚の下着とシャツが投げ込まれ、三嶋は日々水のシャワーで服を洗濯し、椅子にかけて干すという生活を送っている。洗うのが難しい黒パンツは扉前に置いておくと回収して新しいものが与えられる。これで人権を与えているつもりなのだろうか。
この惨めで厳しい生活に対するスパイスが兄との会食となると、いよいよストレスのたまり具合が厳しい。
そろそろ、兄との話をでっちあげるのも限界が近い。もし、兄との仲が悪く、兄とは何の話も進めていないことが教団側に発覚したらどうなるのだろう。それこそ「死を覚悟する」、いや待っているのは死そのものだ。三嶋の心は折れかけていた。
0
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説


王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。

王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる