僕は警官。武器はコネ。【イラストつき】

本庄照

文字の大きさ
上 下
14 / 185
Mission:インサイダー・パーティー

第14話:恋人 ~婚約破棄など許されない~

しおりを挟む
「へぇ、ナオがタレコミねぇ」
 一通り話を聞いた章は、優雅に椅子に座りながら、呟くように言った。
 ナオというのは、章と廣田の元カノの名前らしい。

「なんか章さん、意外そうですね」
「まあね。風の噂でずっとラブラブだって聞いてたから、てっきり結婚するものだと思ってた。歳も歳だし」
「俺も思ってた。婚約してなかったっけ? あの二人」
「してたような気もする」

「あー、今フェイスブック見たけど、四ヶ月前に別れたみたいだね。婚約破棄かな」
「……別れたなんて、フェイスブックに書くんすか?」
 諏訪は首をかしげるように、裕のパソコンを覗き込んだ。

「もちろん、新しい道を進む、みたいに濁してあるさ。でも、その後から合コンらしき飲み会の書き込みがある。束縛が強いナオの元じゃ合コンなんか絶対にいけない。絶対に別れてる」

 フェイスブックをやらない三嶋にはよくわからないが、多賀を含め社会の流行に明るい者たちが納得しているのを見ると、別れているのは間違いなさそうだ。
「振られた腹いせにタレコミしたのかなぁ」
「三嶋、証拠がないって言ったのがナオなの?」
 三嶋は手帳をぱらりとめくって頷く。

「ええと、証拠はないけど金回りが急に良くなってる、多分インサイダーとかそういうのだと思う、というのが、タレコミの趣旨だったはずです」
「このナオさんって人、金融詳しいんすか?」
 フェイスブックの写真に載っているナオを指差し、諏訪が訊く。

「いや、ナオは教育学部出身だ。金融は詳しくないはず」
「なら、章さんと裕さんなら、証拠の一つや二つ、簡単に見つけられるんじゃないんすか?
 経済とか得意そうっすし」

 伊勢兄弟は目を丸くして顔の前で手を振った。その動作がシンクロしているあたりさすが兄弟である。
「いや、僕らは理系だし、別に得意ではないな」
「うん、工学部だしね。ナオちゃんとポテンシャルは変わらない」

 久しぶりにナオの顔を見た章は、少し懐かしそうでもある。
「振られた時はナオのこと恨んだけど、こんな巡り合いがあるなんてなぁ」
「どうやって証拠見つけようかなぁ」
 頭を抱えつつもどこか高揚している雰囲気の伊勢兄弟とは逆に、ため息をついたのは三嶋だ。

「お二方、忘れてませんか? タレコミがガセなんて、往々にしてあることですよ」
 伊勢兄弟の表情が、さっと消えた。

「それに今回の場合、章くんたちのコネじゃ足りないかも」
 三嶋は普段の愛想笑いを崩さずに言った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...