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Mission:インサイダー・パーティー
第14話:恋人 ~婚約破棄など許されない~
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「へぇ、ナオがタレコミねぇ」
一通り話を聞いた章は、優雅に椅子に座りながら、呟くように言った。
ナオというのは、章と廣田の元カノの名前らしい。
「なんか章さん、意外そうですね」
「まあね。風の噂でずっとラブラブだって聞いてたから、てっきり結婚するものだと思ってた。歳も歳だし」
「俺も思ってた。婚約してなかったっけ? あの二人」
「してたような気もする」
「あー、今フェイスブック見たけど、四ヶ月前に別れたみたいだね。婚約破棄かな」
「……別れたなんて、フェイスブックに書くんすか?」
諏訪は首をかしげるように、裕のパソコンを覗き込んだ。
「もちろん、新しい道を進む、みたいに濁してあるさ。でも、その後から合コンらしき飲み会の書き込みがある。束縛が強いナオの元じゃ合コンなんか絶対にいけない。絶対に別れてる」
フェイスブックをやらない三嶋にはよくわからないが、多賀を含め社会の流行に明るい者たちが納得しているのを見ると、別れているのは間違いなさそうだ。
「振られた腹いせにタレコミしたのかなぁ」
「三嶋、証拠がないって言ったのがナオなの?」
三嶋は手帳をぱらりとめくって頷く。
「ええと、証拠はないけど金回りが急に良くなってる、多分インサイダーとかそういうのだと思う、というのが、タレコミの趣旨だったはずです」
「このナオさんって人、金融詳しいんすか?」
フェイスブックの写真に載っているナオを指差し、諏訪が訊く。
「いや、ナオは教育学部出身だ。金融は詳しくないはず」
「なら、章さんと裕さんなら、証拠の一つや二つ、簡単に見つけられるんじゃないんすか?
経済とか得意そうっすし」
伊勢兄弟は目を丸くして顔の前で手を振った。その動作がシンクロしているあたりさすが兄弟である。
「いや、僕らは理系だし、別に得意ではないな」
「うん、工学部だしね。ナオちゃんとポテンシャルは変わらない」
久しぶりにナオの顔を見た章は、少し懐かしそうでもある。
「振られた時はナオのこと恨んだけど、こんな巡り合いがあるなんてなぁ」
「どうやって証拠見つけようかなぁ」
頭を抱えつつもどこか高揚している雰囲気の伊勢兄弟とは逆に、ため息をついたのは三嶋だ。
「お二方、忘れてませんか? タレコミがガセなんて、往々にしてあることですよ」
伊勢兄弟の表情が、さっと消えた。
「それに今回の場合、章くんたちのコネじゃ足りないかも」
三嶋は普段の愛想笑いを崩さずに言った。
一通り話を聞いた章は、優雅に椅子に座りながら、呟くように言った。
ナオというのは、章と廣田の元カノの名前らしい。
「なんか章さん、意外そうですね」
「まあね。風の噂でずっとラブラブだって聞いてたから、てっきり結婚するものだと思ってた。歳も歳だし」
「俺も思ってた。婚約してなかったっけ? あの二人」
「してたような気もする」
「あー、今フェイスブック見たけど、四ヶ月前に別れたみたいだね。婚約破棄かな」
「……別れたなんて、フェイスブックに書くんすか?」
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フェイスブックをやらない三嶋にはよくわからないが、多賀を含め社会の流行に明るい者たちが納得しているのを見ると、別れているのは間違いなさそうだ。
「振られた腹いせにタレコミしたのかなぁ」
「三嶋、証拠がないって言ったのがナオなの?」
三嶋は手帳をぱらりとめくって頷く。
「ええと、証拠はないけど金回りが急に良くなってる、多分インサイダーとかそういうのだと思う、というのが、タレコミの趣旨だったはずです」
「このナオさんって人、金融詳しいんすか?」
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「いや、ナオは教育学部出身だ。金融は詳しくないはず」
「なら、章さんと裕さんなら、証拠の一つや二つ、簡単に見つけられるんじゃないんすか?
経済とか得意そうっすし」
伊勢兄弟は目を丸くして顔の前で手を振った。その動作がシンクロしているあたりさすが兄弟である。
「いや、僕らは理系だし、別に得意ではないな」
「うん、工学部だしね。ナオちゃんとポテンシャルは変わらない」
久しぶりにナオの顔を見た章は、少し懐かしそうでもある。
「振られた時はナオのこと恨んだけど、こんな巡り合いがあるなんてなぁ」
「どうやって証拠見つけようかなぁ」
頭を抱えつつもどこか高揚している雰囲気の伊勢兄弟とは逆に、ため息をついたのは三嶋だ。
「お二方、忘れてませんか? タレコミがガセなんて、往々にしてあることですよ」
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「それに今回の場合、章くんたちのコネじゃ足りないかも」
三嶋は普段の愛想笑いを崩さずに言った。
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