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幽霊

どこまでも一緒に

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「子供を捨てたって、どういうことなんだ」


毛布にくるまれて抱き合ったまま、昴は独り言でも言うかのようにぼそりとつぶやいた。考えが自然に唇から漏れてしまったとういう感じだった。


「以舞さんはずっと話さなかったの?」


「初めて聞いた。なんで一人でそんな辛い記憶を抱え込んで・・・俺はずっと近くにいたのに」


やるせなさと怒りで昴は唇を噛んだ。私は何も言えず、ただ昴の背中を撫でた。


「よりによって、紹介したばっかりの彼女に言うなんて…ごめんな、咲良…」


「あたしはいいよ。それより昴さ…もっと自分も労わって?」


この倉庫が昴にとって本当に居心地のいい場所ではないことに、今になって気付いた。

初めてこの場所に来たときは、子供の頃憧れた秘密基地をそのまま再現したようで、胸が躍ったものだった。

けど昴の事情を知った今となっては、この薄い壁一枚のがらんどうの空間は、昴の孤独を映し出す虚しい空洞のように思えた。

病弱な母を思いながらここで一人不安な夜を過ごしてきたと思うと、たまらなかった。ここは人が住む場所ではない。物置だ。そこで自分を物のように扱って毎日を放り捨てるように暮らしてきた昴の姿を知って、なぜだか無性に悔しくなった。

「お母さんは昴にとってかけがえのない存在。それ、よくわかる。だけどね、昴は昴の幸せを自分で手にしなくちゃ。自分を大切にしなきゃいけない。それが、お母さんのためでもあると思う」

言いながら、昴の髪を指で梳く。

昴はキラキラしている。昴はもっと燦燦とした日々を、たくさんの人とふれあって過ごして、夜はもっと暖かい、外気から守られた場所で、愛する人と肌を触れ合わせながらぐっすりと眠るべきなのだ。そして朝になったら太陽の温かい光を浴びて、またキラキラと輝いて過ごす。そうあるべきだと私は思う。

「いつも、母さんを置いて自分一人が幸せになっちゃいけない気がしてる」

「それは間違いだよ?昴にとっての幸せは何?自分に訊いてあげて」

───自分を愛して、昴。

そう言う代わりに口づけをした。あなたが自分を幸せにできないのなら私があなたを幸せにする。私はあなたを愛し抜く。強く念じて、昴をぎゅっと抱きしめた。


唇を離すと、昴は私の乳房に顔を当て、みぞおちあたりに漂う匂いをすうっと吸い込んだ。

「咲良…いい匂い」

呟いて、二つのふくらみを寄せるように両手のひらで抱き寄せる。

乳房が揉まれて、徐々に熱を増していく。私の体は、弱り切っている昴でさえ求めてしまう。昴に会ってからというもの、私はまるで肉欲の塊だ。胸に吐息をかけられ、少し触れられただけだと言うのに、秘所はじくじくと濡れ始めていた。

「昴…する?」

恐る恐る訊くと、昴は言い終える前に私の唇を塞いできた。激しいキスに身を委ね、割り入る舌に舌を絡め合わせる。二人の吐息と水音が、重い静寂が垂れこめていた部屋を満たしていく。

唇を離すと昴は体の向きを変え、横向きに寝る私の両足の間を開いて、頭を挟み入れた。

同時に、昴のものが目の前に突き立って揺れた。昴の肉茎を、付け根から舐め上げた。お互いの陰部に顔をうずめた姿勢で、舌で味わい、慈しむ。

ぺろぺろと舌を動かして昴の先端から付け根まで濡らし、舳先の小さな割れ目を舌先で突いた。じわじわと、透明に光る粘液がにじみ出た。私の唾液とまじりあって、雫が筋を作って桃色の怒張を滑り落ちていく。

先端を口に含み、一気にずるりと付け根まで飲みこんだ。口いっぱいに愛おしいものをほおばっている。全身を濡らすように、愉悦が体を満たしていく。

片足を持ちあげて、昴の顔の前でぱっくりと開いた私の花びらは、昴の舌にめくられ、吸われ、ねぶられて、もっともっととせがむように腫れていく。

勃起するのは男の子だけじゃない…血流が集まって、秘所が腫れあがるのを感じながら、私はぼんやりとそんなことを考えた。

私の体をこんな風にしてしまうのは昴だけだ。私がそう思うように、昴にも、昴を気持ちよくさせるのはこの私だけだって思ってほしい。


血管を浮き上がらせて張り詰めた昴のものを唇でしごきながら、昴のことだけを無心に思った。

昴、昴…

昴のすべてが大好き。この皮膚の色も、つやつやした感触も、先端の形も、くびれも、長さも。

声も、髪も、形のいい唇も、そこからこぼれ出る、数少ない言葉たちも、皮膚を流れる玉の汗も、泡立つ唾液も、白いほとばしりも。

全部、私のものにしたい。


昴の腰が、かすかに震え出す。

「咲良、入れていい?」

唇を離すと、昴の手でうつぶせにされた。


両足をまっすぐに伸ばしてうつ伏せになった私の上に、昴がまたがった。お尻の肉の隙間にねじ込むように割り入ってくる。反り返った硬いものが、狭い通り道を分け入って私の中の、ある一点をつついた。

外側を丹念に愛された後は、中の一番敏感な場所をすぐに攻めて欲しくなる。それをいつのまにか昴は覚えてしまっていて、私の花びらが奥まで欲しいと涙を流すようにびっしょりになると、迷わず内側の秘肉の私の弱点に狙いを定めて一気に突いてくれるのだ。


「あぁっ…」

体をわずかに反らせて私は喘いだ。一番気持ちいい場所に、昴の先端が丹念にこすりつけられる。むくむくと中の襞が鬱血して昴を包み込んでうごめく。痺れるような快感。とめどなくあふれる蜜。

腰を反らせ、首をひねって上を仰ぐと、腰を振りながら昴が微笑んでくる。生え際から落ちる玉の汗が、私の頬を滑った。腰だけを器用に動かしながら、私の奥をくちくちとさすり、甘い顔つきでキスを落とす。下で繋がりあいながら唇でも繋がりあって、膣、唇、あらゆる裂け目を昴に塞がれて、たまらない幸福感に満たされる。

ずっと中に入れていたい。ずっと口に含んでいたい。

この時間が永遠に続けばいいのにと思う。


昴が唇を離して囁く。

「咲良、いこう…」

私はその声を聞いただけで甘い電流で体がしびれるような感覚になって、全身が震え出す。
昴の甘い囁きが、絶頂への扉を開いた。

速まる律動。力強く奥を突く熱い怒張。昴の吐息、うごめく肉襞と、接合部の水音。

「ああっ…いくっ」

昴が吐息を震わせる。中で昴のものがびくびくと跳ねて熱いものを拭き溢すのがわかる。

内側をどろりと温める昴のほとばしり。充満するねっとりとした感触、つなぎ目からこぼれ出る重たい粘液の感触。

震える肉壺、がくがくと震える腰。甘いしびれが、脳までもを犯す。昴と一緒に、どこまでも、何度でもいきたいと思った。

絶頂を迎えた私の背中に、昴が倒れ込んだ。まだ絶頂に浸って目を閉じている私の生え際を撫で、冷たい汗を纏う熱い頬にキスをした。




翌日目を覚ますと、隣に昴の姿がなかった。

電話にも出ない。ラインを送れば、明日には帰るという返事が返ってきただけだった。

元倉庫のがらんどうの空間で一人、電話を握り締め、昨日の昴と、取り乱した以舞の姿を思った。

昴のことを知り過ぎた私を面倒に感じて、私から離れていく予感がした。



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