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プロローグ

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「お願い、電気、全部消して」

甘く長いキスで濡れた唇で、私はせがんだ。

ベッドで私と体を重ねたすばるは、艶っぽい微笑を浮かべる。腕を伸ばして枕もとのスイッチを切ると、闇が二人を包んだ。

昴の手が、シャツの下に滑り込む。お腹をなであげながらたくし上げたシャツが、首元から引き抜かれた。

咲良さくらのカラダ、すごく見たい。でも今日は我慢する」

今日は、と言われたことで、きゅんと胸の奥が絞られる。一夜限りの関係のつもりではないことが嬉しかった。

けど、きっと、次はない。


昴の肌の温度を自分の肌に刻みつけたくて、両頬を手のひらで挟んだ。

昴の手が背中に回り、ブラのホックをぷつりと外す。弾かれるようにパットが外れ、胸のふくらみがまろび出た。

肩ひもを腕から抜かれ、双丘の稜線をそっとなぞられる。恥ずかしさとくすぐったさが溶け合って快感に変わり、熱い吐息が零れ出た。

驚くほどなめらかな昴の手のひらが滑るようにふくらみを辿り、指先が、まだ柔らかい先端を探り当てて止まった。

小さな花のつぼみに似た先端を、二本の指先でつまんで先端の芯をとらえてこりこりと弄びながら、手のひらで裾野の重みをすくい上げる。

「ん・・・っ」

甘い痛みと鋭い快感のはざまで、体をよじった。太ももをこすり合わせながら、ショーツの下がぐっしょりと濡れるのがわかった。

昴の首に腕を巻き付け、舌を絡め合わせた。

昴の舌はゼリーみたいにちゅるんとした舌触りで、とらえどころがないほど滑らかで、アメリカの甘いグミみたいな弾力がある。

にじみ出る唾液は甘く、さきほどのビールの余韻なのか、ほんのりと苦い後味が残る。

何度でも口に流し入れたい甘美な味を、時折こくりと喉を鳴らして味わって、唾液にまみれた唇に唇を滑り合わせる。熱で溶けたマシュマロみたいに、表面がぬめってふわふわと柔らかい昴の唇が、私の体の芯を蕩けさせた。

昴の肌はすべすべで、毛穴ひとつ感じさせないほど滑らかだ。舐めまわせばぬるぬると唾液で舌が滑り、唇も、あごも喉仏も鎖骨も、私の唾液に濡れた場所はどこもかしこも、まるで性器みたいに闇夜の中でいやらしく光った。

昴の大切な場所を口に含みたい、そんな衝動にかられた瞬間、まるで私の心の声が聞こえたかのように昴が頭の向きを変えた。仰向けだった私を横向きに寝かせ、片足を上げ、私の両腿の間に頭を割り入れた。

私の目の前に、そそりたつ昴のものが現れる。私はずっと会いたかった愛しい小さな生き物に対面できた、そんな気分で昴の切先に唇を当てた。


互いの秘部に唇をあてがい、唾液をまぶしてぬめぬめと味わった。

私の両足のあわいに咲いた熱い花は、昴の舌の動きに合わせて分厚い花弁を震わせて淫靡な音を立てた。

先ほどまでビアバーで肉を咀嚼していた口で、昴の屹立を咥えこむ。

「あむ・・・ん・・・」

すべすべした表面は張り詰めていて、歯を立てれば破裂しそうなほどだった。丁寧に先端を舐めまわすと、すぐに先端の小さな割れ目からとろりとした透明の汁があふれ始めた。塩気のある粘液を舌にまとわせ、昴の固い芯を孕んだ怒張を深く飲み込み、唇で扱いた。

昴が静かにほとばしらせる露を、ちゅくちゅく音を立てて味わい、喉に流し入れる。それはミルクのように甘く、血液のように塩辛く、生命を感じる生臭さがあった。私の体に入った昴の体液は熱く、そのまま私の生きるエネルギー源になりそうな濃厚さだった。

愛おしいと思った。愛おしくて食べてしまいたいというのは、こういうことなんだと思った。

私たちは起き上がり、坐って向かい合った。両足を開かれМの字になって、濡れそぼった花びらを開く。正座の姿勢の昴の上に乗せられ、彼の先端と花びらがぬるりと触れ合った。

昴は腰を動かして私の熱い花園の真ん中に先端をこすりつけながら、淫靡な微笑をよこした。暗闇で、昴の潤んだ目だけが、時折微かにちらりと光るのが美しかった。

幹の根元に手を添え、反対の手を私の腰に回し、ぐっと抱き寄せる。同時に、昴の屹立が私のなかにめり込んだ。

「は・・・うっ」

甘い吐息を溢しながら、昴が切り込むように襞を割り入ってくる。昴の形に、私の内側が押し開かれた。昴がくれる圧迫感に押し出されるように、私の唇から濡れた声がこぼれ出た。

「ああっ」

粘膜同士が密着し絡み合って、私が腰を上下させるたびにちゅぷちゅぷと接合部がさえずる。

「咲良、いい、いいよ」

私の背中に手を回し、座った姿勢で突き上げながら、昴は、のけぞって震える私の顎を唇で食んだ。

昴の首に腕を巻き付け、あたしも、と言おうとするけど、意識を保つのに必死だった。今までに味わったことのない、体が蕩けてしまいそうな快感。

互いの肌が触れると、胸もお腹も手のひらも、吸い付くようにぴったりと重なり合った。中に割り入った彼のものと私の内側との境目も分からないくらい、溶け合ってひとつになっている。

「咲良…すっごくいい。俺、咲良にはまっちゃいそう」

昴の燃えるような火柱に抉られ、火が乗り移ったように私の体が熱を帯びた。その熱が今度は昴に伝わって、さらに熱を帯び、肌を熔かす。

彼の、全部が欲しい。こみ上げる衝動に任せ、なめらかな背中を撫で、盛り上がった肩の筋肉に爪を立てる。


昴は繋がりあったまま、私を押し倒して組み敷いた。正常位の姿勢で上からキスを落としながら、腰はしどけない動きで律動を続け、間断なく甘い刺激をくれる。

「昴・・」

私の内側は、これ以上ないくらいに膨らみきって充血している。下の唇で、はしたない音を立てて彼を咥えこみ、浅い場所まで引き抜かれると駄々をこねるみたいに襞が引き留める。

律動に合わせて上下する乳房を掴まれ、付け根から揉みしだかれ、熱く滾るものがこみ上げてくる。

乳房の先端が、彼の口の中で転がされるのを待ちわびるように突き立った。

まるでその願いを感じ取ったかのように、彼は抽挿しながら、乳首を口に含んだ。

「ねえどうして・・わかるの」

ぬらぬらと舌でねぶられ、転がされ、欲しい刺激をことごとく与えてくれるその舌に、私はゆるゆると狂わされて今まで聞いたこともない声を漏らした。

花壺が反応して彼を締め付けると、彼も吐息交じりの声を漏らし、跳ね上げるように上半身を起こした。

「きっつっ・・」


両足を思い切り開かれて、これまでとは違う角度で抉られ、身体は搾り上げられるように悲鳴を上げた。

私の太ももを支えていた彼の手が胸から下腹へと滑り、両足の裂け目の起点で留まる。そこには花びらもろとも敏感に熟しきった花蕾が、刺激を求めて屹立している。

その突起を親指でくにくにと愛撫しながら、なおも執拗に、奥を責め立てる。

片手で乳首を摘ままれ、蕾、蜜壺も同時に愛撫され、五感がばらばらに引き裂かれるような快感に落ちてゆく。

意識が遠くなる。体の奥から迫りくる絶頂感に今、身をゆだねる。

「あああああっ」

全身を駆け抜ける、甘い電流。体中が痙攣する。高い声が耳に響いて、自分が喘いでいることを知る。

彼とのつなぎ目から、じゅぐ、じゅぐ、と音を立てて、愉悦の飛沫が跳ねている。

それでも昴は動きを止めない。

はあはあとかすれた甘い吐息を部屋中に充満させながら律動を続け、弾けるように昴も絶頂を迎えた。

「あぁっ・・・」

熱いほとばしりが流れ込んでくるのが分かった。

それを一滴残らず飲み干す勢いで、花壺が蠢いて吸い上げる。繋がりあった隙間から熱いものが滲んで、滴り落ちるのが分かる。

汗まみれの頬をぴったりと寄せ、昴は深い吐息をついた。

「咲良、おれたち・・・」

闇に慣れ始めた視界の中、恍惚感と戸惑いに潤んだ昴の目が見下ろしてくる。瞳の奥深くまで探ろうとする双眸を、私はまっすぐ見つめ返した。

いままでのほかの誰かとは全く違う感覚を、互いに感じているのが分かった。


そのとき何故か私は、自分がこの世に生まれ出た瞬間を思った。

生まれたときすでに、私は昴と出会うことが、決められていた。

言葉ではなく、感覚で私はそれを知った。



───出会ってしまった。最高の相性の相手に。


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