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第1章 深淵に答えよ

第2話 深淵の力

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 スキル欄に見たこともないスキルが追加されていた。聞いたこともないスキルだ。珍しいスキルなのか?

 珍しいスキルの報告例としては、<重力操作>や、<雷の幻想者ライトニング・ファンタジスタ>というものがあるな。

 重力操作は石川県の大学に所属するBクラス探索者が、雷の幻想者はSクラス探索者、雪花 竜二が所持している。ちなみにだがBクラス以下の探索者は全て普通探索者とされる。Bクラス以上になるためには試験をパスする必要があるが……。これがまた厳しい試験だからな。

 まぁいい。今は一旦家に帰ろう。これ以上遅くなると家族が心配するからな。第一、今日は土曜日だ。深淵魔法の実験なら明日でもできる。

 ダンジョン入り口の改札に探索者証をかざしてダンジョンからでる。昔はこの機能は駅で主に使われていたらしいな。まぁどうでもいい話か。

 10分ほどして家についた。うちはそこそこの一軒家に両親、俺、妹の4人で暮らしている。鍵を開けて中に入ると、どたどたと足音がして妹が玄関まで勢いよく飛びこんできた。

「遅いよお兄ちゃん!!」

「ごめんよ、きらら。ちょっといいことがあってな」

 妹の神宮司 きららだ。もう14歳になるんだがいまだに俺にべったりで将来が少し心配だ。

「言い訳無用だよ!! お母さんも心配してたんだから!」

「母さん今日休みだったか?」

 うちの両親は共働きでほとんど家にいないはずだったが。

「今日はお母さん半休なんだって~」

 なるほど。リビングに行くと母さんがコーヒーを飲んでくつろいでいた。いま午後八時なんだけどな?

「母さん、ただいま」

「遅かったわね~。なにかいいことでもあったの~?」

「ああ、あったよ。それでだけど母さん、俺、ダンジョンの奥に挑んで俺も稼げるようにするよ」

 そういったら母さんの表情が真剣なものに変わった。普段はほんわかしている母さんだが、こうなるとやはり貫禄がある。

「悠斗、あなたの気持ちはうれしいわ。でも無理して怪我したりだとか、そういうことは一切しないってちゃんと約束して頂戴ね?」

「わかってるよ、母さん。絶対に無理はしない。心配してくれてありがとう」

「いい子ね。ほら、ご飯作ってあるから、食べておいで~」

 やっぱり俺はこの家に生まれてよかった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 翌日、俺は昨日と同じ入り口から札幌大迷宮に入ってきていた。札幌大迷宮は世界三大迷宮の一つに数えられる超規模の迷宮で、札幌のそこら中に入り口がある。俺は割と人の少ない入り口から入っているが、最も安全とされている入り口には常に人が絶えず、あそこの人の密度は渋ハロの2分の1にも迫るレベルだ。

 そんなことは置いておいて実験だ。なんとなく、深淵魔法の使い方、というか使える魔法は二つほど昨日の夜の間に理解できた。ほかにもいろいろできそうなのだが、知力が足りないのか理解ができなかった。と、言うことなので早速一つ目をゴブリンにお見舞いしたいと思う。

 曲がり角を曲がって見つけたゴブリンに出合い頭に魔法を飛ばす。

「『深淵の刃アビスエッジ』!」

 俺のゴブリンの方へ向けた手から漆黒の刃が飛んで行く。その刃はゴブリンの胸に命中し、大きな裂傷を作った。...がしかし、ゴブリンは消えず、そのまま攻撃された怒りでこっちに突っ込んできた。

「『深淵の刃アビスエッジ』!」

 慌ててもう一度魔法を放つ。今度の刃はゴブリンの首を綺麗に跳ね飛ばし、ゴブリンはそのまま消滅した。

「威力、低いな……」

 とても深淵魔法という仰々しい名前を持った魔法とは思えない。やはり俺のステータスで魔法を使いこなすのは無理があるか?

「まだあきらめるのは早いか」

 本命のもう一つの攻撃魔法が残ってる。さっきの『深淵の刃』はかなり魔力消費が少ない魔法だ。もう一つの攻撃魔法は感覚だと俺の魔力の半分近くを使用して撃つ魔法になる。さて、また新しいゴブリンを見つけたから、ぶちかまそう。

「『深淵の槍アビスランス』!」

 今度は漆黒の槍が目にもとまらぬ速度で飛んでいく。それはまだこちらに気づいていなかったゴブリンに直撃すると暗い、色の見えない爆発を起こした。そして、後には一切の肉片すら残らなかった。

 魔力大量消費による脱力感を感じながら俺は希望ができたことを喜んでいた。これならこの魔法を使いこなすことができればDランクの魔物を倒して魔石を手に入れることができるようになるかもしれない。気分がよかったからなのかその後の日課、ゴブリン狩りも調子がよかった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 今日は月曜日だ。皆が一番嫌いな曜日はといったら間違いなくこの曜日が一番最初に上がるだろう。俺も月曜日は嫌いだ。というか学校に行かなければいけない日は全て嫌いだ。

 俺は学校では腫物扱いされているのか誰一人として話しかけてくれない。入学当初から要件なく同級生と話したことは一度もないといえるだろう。割と噂を話をされているような気もするが、悪口を言われているとかなり傷つくので聞かないようにしている。はぁ、憂鬱だ。

「おい、ニュースみたか? 日本一の探索者の紅さんがまたS級の魔物を討伐したんだとよ! 俺もあの人みたいに強くなりてー!」

「はは! お前にゃ無理だぁよ!」

「なんだってー!」

 クラスの男子たちがじゃれあっている。そうか、あの人はまたSクラスを討伐したのか。確か一月前には中国に赴いて水竜を討伐していたはず。日本で二番目と名高い名取さんも彼には一生かかっても追いつけないと言っていたくらい皆に尊敬されている最強の人だ。

 そんなとき、ガラガラと教室の扉が開いてある人が入ってきた。高校生にしてBクラスに分類される最強の女子高生、三島 幸奈だ。彼女は尋常ではなく強いうえに、可憐で美しい。彼女を主人公にした特集が組まれることもあった。名実ともにこの学校で一番の人気ものだろう。

「皆さん、おはようございます」

 強く、美しく、それでいて礼儀正しい。もはや彼女にかけた部分はないんじゃなかろうか。それに比べて俺は……。ダメだダメだ、ネガティブになるな。いつかはきっと自分の良いところが見つかるはずだから。

 たくさんの人が彼女を囲んでがやがやしているうちに先生が来て、朝のホームルームが始まる。やっぱり今日も誰かに話しかけられることはなさそうだ。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 待ちに待った放課後のゴブリン狩りの時間。今日も深淵魔法の練習を……。

 改札に探索者証をかざしたその瞬間、俺の目にはステータスボードが目に入った。どうせなんの変わりもないとはわかってはいたが、なんとなく、今日はなんとなく確認しようと思った。

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名前:神宮寺 悠斗
レベル:10
ステータス:攻撃力 14
      守備力 14
      魔力  14
      知力  14
      精神力 14
      速度  14
スキル:<深淵魔法>
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 待て。一体どういうことだ!?
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