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序章・始まりの冬休み
プロローグ
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平凡、凡庸。そして普通。全て俺の為にあるような言葉だ。
この俺、瀬戸 奏多は何をやっても普通の人間だった。運動も一般的な男子生徒並みにはできるし、勉強も人並みにはできる。ただ、人並み以上になりえない。
褒められるような事は何一つない一般的な人間。それが俺だ。
安定はしている。だから文句はないが。
一度願ってみたかった。9年前にファンタジーと混じり合ったこの世界で活躍することを。
「神様、俺にこの世界で活躍できる才能をください。非日常を味わわせてください。俺に、力を」
2034年1月1日の初詣。珍しく夜中に近くの小さな神社に一人で訪れた俺はそう願った。
◆◆◆
しばらくはその神社のそばで待ち、初日の出を眺めた後、俺は帰路についた。
吐く息は白く、朝焼けのする空を見ながら歩く。
高校1年にして、こんな時間に出歩くのは初めてだ。
「うお、冷たっ」
一陣の冷たい風が吹き、俺は目を瞑る。
風が止んだのちに目を開けると、俺の目の前の道路には小さな水色の球体のようなもの……ありていにいえばスライムがいた。
「たまに出てくるとは聞いてたけど、初めて見たな」
【ブルースライム】
・最弱のモンスターの一種。
・スライム種の中で最も温厚。
・ドロップ品は無し
俺の目の前に半透明のウィンドウのようなものが展開される。
「温厚なのか。でも悪いな、街に出た魔物は処分しないといけない決まりなんだ」
俺の住んでいるこの街では、近くにスライムが稀に出るが、それは近くにレベルが低過ぎて管理されていないダンジョンがある為だ。
そして見つかったスライムは見つけた人が討伐していいという決まりになっている。
レベルが上がって強くなれるかもという一抹の期待があるのかもな。
かく言う俺も、期待をしているからコイツは経験値になってもらおう。
多少心が痛んだが、真っ青なスライムを踏み潰し、コアを砕いた。
温厚なのにこうして街に出ては潰されるとは、不憫なものだな……。
……。
…………。
………………。
ちょっと待て。ブルースライムという名称も、温厚だという話も初めて聞いたぞ。スライムは何色でも同じスライムなんじゃないのか? それにさっき出てきたウィンドウみたいなのは……?
もしや俺にスキルが発現したのか?
いや、スキルはレベル5になることでしか発現しないはず……。
探索者……ダンジョンを探索する職業に就いていない俺は当然レベル1。スライムを倒す前からあったという事はつまりなにか特殊なことが起こっているということだ。
願い事をした俺は間違ってなかった。願いが叶う予感がしてきたぞ。
個人のステータスはダンジョンの入り口にあるステータスボードで確認可能だ。
ほとんどのダンジョンが探索者協会の管理下にあるので探索者ではない俺は基本扱うことができないが……。
あるじゃないか。うってつけの管理されていないダンジョンが。
そこに行くのは後でいいとして、とりあえずは一旦家に帰ろう。家族も心配するだろう。
◆◆◆
家族とひとしきり元旦を祝い、ちゃっかりお年玉を貰った後、俺は管理されていないダンジョンへきた。
何故ここが管理されてないかというと、旨みがなさすぎるため、誰も来ないからだ。
旨みがない理由は湧く魔物がスライムだけだから。
しかし、閉鎖をするとスタンピードが発生する為放置といった対処がとられているのだ。
今回はそれを利用させてもらう。小さなダンジョンだろうと、ステータスボードはちゃんとあるからな。
「よし、触るぞ」
ステータスボードに触れると、いかにも現代的にステータスの詳細が現れた。
「ファンタジー詐欺だろこれ」
しかし、現れたステータスは突拍子も無く、まさにファンタジーであった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
名前:瀬戸 奏多
レベル:2
ステータス:攻撃力 34
守備力 31
魔力 29
知力 28
精神力 21
速度 33
スキル:<鑑定_Lv.1>
<成長補正>
<???>
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スライム1体倒しただけでレベルが上がっているのもおかしいし、スキル数と欄がおかしい。スキル二つ持ち以上なんて聞いた事ないっての。なんならステータスすらおかしいぞ。成人男性の平均が10だからな。めっちゃ強いぞ俺? レベル2だけど。
つーか成長補正ってなんだ。スキルにも鑑定効いたりしないか?
<成長補正>
・レベルアップ時のステータス上昇量にボーナスが入る。
・レベルアップまでに必要な取得経験値量が3分の1になる。
うーわチートにありがちなやつじゃん。俺もしかしてチートできるんじゃね?
つーかスキルにも効くんだな鑑定……。そういえばレベル付きのスキルって話もイマイチ聞いたことがない。
しかしこれだけはわかる。
これが俺の唯一の特別な才能だ。活用せねば罰当たりといったところだろう。
この冬休みのうちに、探索者になって強くなろう。
夢にまで見た最強、目指してやる。
この俺、瀬戸 奏多は何をやっても普通の人間だった。運動も一般的な男子生徒並みにはできるし、勉強も人並みにはできる。ただ、人並み以上になりえない。
褒められるような事は何一つない一般的な人間。それが俺だ。
安定はしている。だから文句はないが。
一度願ってみたかった。9年前にファンタジーと混じり合ったこの世界で活躍することを。
「神様、俺にこの世界で活躍できる才能をください。非日常を味わわせてください。俺に、力を」
2034年1月1日の初詣。珍しく夜中に近くの小さな神社に一人で訪れた俺はそう願った。
◆◆◆
しばらくはその神社のそばで待ち、初日の出を眺めた後、俺は帰路についた。
吐く息は白く、朝焼けのする空を見ながら歩く。
高校1年にして、こんな時間に出歩くのは初めてだ。
「うお、冷たっ」
一陣の冷たい風が吹き、俺は目を瞑る。
風が止んだのちに目を開けると、俺の目の前の道路には小さな水色の球体のようなもの……ありていにいえばスライムがいた。
「たまに出てくるとは聞いてたけど、初めて見たな」
【ブルースライム】
・最弱のモンスターの一種。
・スライム種の中で最も温厚。
・ドロップ品は無し
俺の目の前に半透明のウィンドウのようなものが展開される。
「温厚なのか。でも悪いな、街に出た魔物は処分しないといけない決まりなんだ」
俺の住んでいるこの街では、近くにスライムが稀に出るが、それは近くにレベルが低過ぎて管理されていないダンジョンがある為だ。
そして見つかったスライムは見つけた人が討伐していいという決まりになっている。
レベルが上がって強くなれるかもという一抹の期待があるのかもな。
かく言う俺も、期待をしているからコイツは経験値になってもらおう。
多少心が痛んだが、真っ青なスライムを踏み潰し、コアを砕いた。
温厚なのにこうして街に出ては潰されるとは、不憫なものだな……。
……。
…………。
………………。
ちょっと待て。ブルースライムという名称も、温厚だという話も初めて聞いたぞ。スライムは何色でも同じスライムなんじゃないのか? それにさっき出てきたウィンドウみたいなのは……?
もしや俺にスキルが発現したのか?
いや、スキルはレベル5になることでしか発現しないはず……。
探索者……ダンジョンを探索する職業に就いていない俺は当然レベル1。スライムを倒す前からあったという事はつまりなにか特殊なことが起こっているということだ。
願い事をした俺は間違ってなかった。願いが叶う予感がしてきたぞ。
個人のステータスはダンジョンの入り口にあるステータスボードで確認可能だ。
ほとんどのダンジョンが探索者協会の管理下にあるので探索者ではない俺は基本扱うことができないが……。
あるじゃないか。うってつけの管理されていないダンジョンが。
そこに行くのは後でいいとして、とりあえずは一旦家に帰ろう。家族も心配するだろう。
◆◆◆
家族とひとしきり元旦を祝い、ちゃっかりお年玉を貰った後、俺は管理されていないダンジョンへきた。
何故ここが管理されてないかというと、旨みがなさすぎるため、誰も来ないからだ。
旨みがない理由は湧く魔物がスライムだけだから。
しかし、閉鎖をするとスタンピードが発生する為放置といった対処がとられているのだ。
今回はそれを利用させてもらう。小さなダンジョンだろうと、ステータスボードはちゃんとあるからな。
「よし、触るぞ」
ステータスボードに触れると、いかにも現代的にステータスの詳細が現れた。
「ファンタジー詐欺だろこれ」
しかし、現れたステータスは突拍子も無く、まさにファンタジーであった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
名前:瀬戸 奏多
レベル:2
ステータス:攻撃力 34
守備力 31
魔力 29
知力 28
精神力 21
速度 33
スキル:<鑑定_Lv.1>
<成長補正>
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スライム1体倒しただけでレベルが上がっているのもおかしいし、スキル数と欄がおかしい。スキル二つ持ち以上なんて聞いた事ないっての。なんならステータスすらおかしいぞ。成人男性の平均が10だからな。めっちゃ強いぞ俺? レベル2だけど。
つーか成長補正ってなんだ。スキルにも鑑定効いたりしないか?
<成長補正>
・レベルアップ時のステータス上昇量にボーナスが入る。
・レベルアップまでに必要な取得経験値量が3分の1になる。
うーわチートにありがちなやつじゃん。俺もしかしてチートできるんじゃね?
つーかスキルにも効くんだな鑑定……。そういえばレベル付きのスキルって話もイマイチ聞いたことがない。
しかしこれだけはわかる。
これが俺の唯一の特別な才能だ。活用せねば罰当たりといったところだろう。
この冬休みのうちに、探索者になって強くなろう。
夢にまで見た最強、目指してやる。
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