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組木作りといえば組木作りなのだが、その形状がまるで違うので何とも不思議な家。
木を切り抜いて作り上げた机や椅子、その上に草の葉を編んで作られたクロス。
しかし、草の葉だというのに艶やかな色を保ち、色あせてもいない。
こんな家を日本で民泊としてでも貸し出せば、人々は殺到するんじゃないかといえる程の雰囲気で心が弾む。
「いいところですわね」
アリゼッタとエリーゼも興味深げに見つめている。
文化が違う。
俺がローゼンストーン王国に来て初めて感じた感覚を味わっているということだな。
「ええ、なんとなく心が落ち着きます」
「あはは、気に入って貰えたようで良かったですよ。ささ、これもどうぞ」
アミーニャが笑い掛けながら用意してくれたのは、黄緑色をしたサラリと揺れる液体。
日本のジュースでこんなのがあったが、ここにきてからは見たことがない飲み物だ。
「これは……なんなんだ?」
「シシバの樹液とササレの実を混ぜ合わせたものに水を混ぜたものですー」
「ふむ……」
口をつけてみて俺は驚くことになった。
微……とはいえ炭酸なのだ。爽やかな香りとジュースのような甘味。
正直この世界で炭酸飲料にありつけるとは思ってもみなかった。
「わわわ、なんですの!? 口の中が変な感じですわ!」
「え、ええ。ちくちくぴりぴりとして……ですが辛いのとは違います。美味しいですね」
「ああ、凄いな。できれば……獣人たちと交易をして俺たちの国にも持ち込みたいところだな」
アミーニャは自分のコップ(全て木製だ)に口をつけながら不思議そうに見つめてきていた。
「お口にあわなかったですか?」
「ああ、いや、逆だよ。すげーうまい! 俺たちの国とアミーニャの国で交流したいなって言ったんだ」
「そうですか! 良かったです! 交流、交流、私たちは私たちしかいなくて、日陰族とはそういった関係ではないので……」
パチンと手を鳴らした後、少し考えるようなそぶりを見せた。
なので俺は気になっていたことを尋ねてみる。
「日陰族ってのはなんなんだ?」
「ええとですね……。なんて言えばいいんだろ? 敵……? とにかく悪いやつらです。私たちの事を殺しに来ます」
「それは穏やかじゃないな。獣人とは違う種族……ってことでいいんだよな?」
「はい。言葉が通じませんし、意思疎通は出来ません。あーそうですね、モンスターの大規模な集まりみたいなイメージってそういえば言ってたかな」
そこでアリゼッタとエリーゼが、はかったかのように同時に俺の腕をつついてきた。
「エトワイア、私たち何か協力してあげることはできませんの?」
「折角ですので助けてあげられたらと思いますが」
「ああ、うん、そうだな。というよりさ、俺は帰れない理由がその日陰族にあるんじゃないかと思ってるんだ。どうなんだ?アミーニャ」
アミーニャはドアの外を眺めながら口を開いた。
「そうですね。海に行くには日陰族の領地を避けて通ることはできないんじゃないかな。
さらにそんな場所に船を用意するというのは、まず不可能かと思うんです」
「なるほどな。なんにせよその日陰族というのに会ってみない事には始まらないな」
「え! 駄目ですよ、危険です! わ、悪いけど、お兄さんカッコいいんですけど弱そうだから」
アミーニャが机から身を乗り出すのを見てか、アリゼッタとエリーゼが楽しそうに笑う。
けれど、その表情にどこか含みがあるのは気のせいだろうか。
「もしですけど、エトワイアが強かったらどうしますの?」
「え、え、え、強かったら……?」
アミーニャがチラリと俺の顔を見てくる。
しかも少しだけ上目づかいで。
「もしかしたら好きになっちゃうかもしれません」
そう言って赤い顔をしながら台所の方へと駆けて行った。
「ほらやっぱりですわ!」
「危険ですね。これは……」
「いや、種族が違うじゃないか……。お世辞ってやつじゃないか?」
「でも、エトワイアはアミーニャのことを可愛いって言ってましたの!」
アリゼッタが声を強めた瞬間、台所からガチャンと何かの音が聞こえてくる。
「いや、でも、強かったらって話だったじゃん。獣人がもしかしたらものすごく強くて足元にも及ばないかもしれないぞ」
「しかしですね……」
そうアリゼッタが言いかけた時だった。
家の外から大きな叫び声が聞こえてきたのだ。
木を切り抜いて作り上げた机や椅子、その上に草の葉を編んで作られたクロス。
しかし、草の葉だというのに艶やかな色を保ち、色あせてもいない。
こんな家を日本で民泊としてでも貸し出せば、人々は殺到するんじゃないかといえる程の雰囲気で心が弾む。
「いいところですわね」
アリゼッタとエリーゼも興味深げに見つめている。
文化が違う。
俺がローゼンストーン王国に来て初めて感じた感覚を味わっているということだな。
「ええ、なんとなく心が落ち着きます」
「あはは、気に入って貰えたようで良かったですよ。ささ、これもどうぞ」
アミーニャが笑い掛けながら用意してくれたのは、黄緑色をしたサラリと揺れる液体。
日本のジュースでこんなのがあったが、ここにきてからは見たことがない飲み物だ。
「これは……なんなんだ?」
「シシバの樹液とササレの実を混ぜ合わせたものに水を混ぜたものですー」
「ふむ……」
口をつけてみて俺は驚くことになった。
微……とはいえ炭酸なのだ。爽やかな香りとジュースのような甘味。
正直この世界で炭酸飲料にありつけるとは思ってもみなかった。
「わわわ、なんですの!? 口の中が変な感じですわ!」
「え、ええ。ちくちくぴりぴりとして……ですが辛いのとは違います。美味しいですね」
「ああ、凄いな。できれば……獣人たちと交易をして俺たちの国にも持ち込みたいところだな」
アミーニャは自分のコップ(全て木製だ)に口をつけながら不思議そうに見つめてきていた。
「お口にあわなかったですか?」
「ああ、いや、逆だよ。すげーうまい! 俺たちの国とアミーニャの国で交流したいなって言ったんだ」
「そうですか! 良かったです! 交流、交流、私たちは私たちしかいなくて、日陰族とはそういった関係ではないので……」
パチンと手を鳴らした後、少し考えるようなそぶりを見せた。
なので俺は気になっていたことを尋ねてみる。
「日陰族ってのはなんなんだ?」
「ええとですね……。なんて言えばいいんだろ? 敵……? とにかく悪いやつらです。私たちの事を殺しに来ます」
「それは穏やかじゃないな。獣人とは違う種族……ってことでいいんだよな?」
「はい。言葉が通じませんし、意思疎通は出来ません。あーそうですね、モンスターの大規模な集まりみたいなイメージってそういえば言ってたかな」
そこでアリゼッタとエリーゼが、はかったかのように同時に俺の腕をつついてきた。
「エトワイア、私たち何か協力してあげることはできませんの?」
「折角ですので助けてあげられたらと思いますが」
「ああ、うん、そうだな。というよりさ、俺は帰れない理由がその日陰族にあるんじゃないかと思ってるんだ。どうなんだ?アミーニャ」
アミーニャはドアの外を眺めながら口を開いた。
「そうですね。海に行くには日陰族の領地を避けて通ることはできないんじゃないかな。
さらにそんな場所に船を用意するというのは、まず不可能かと思うんです」
「なるほどな。なんにせよその日陰族というのに会ってみない事には始まらないな」
「え! 駄目ですよ、危険です! わ、悪いけど、お兄さんカッコいいんですけど弱そうだから」
アミーニャが机から身を乗り出すのを見てか、アリゼッタとエリーゼが楽しそうに笑う。
けれど、その表情にどこか含みがあるのは気のせいだろうか。
「もしですけど、エトワイアが強かったらどうしますの?」
「え、え、え、強かったら……?」
アミーニャがチラリと俺の顔を見てくる。
しかも少しだけ上目づかいで。
「もしかしたら好きになっちゃうかもしれません」
そう言って赤い顔をしながら台所の方へと駆けて行った。
「ほらやっぱりですわ!」
「危険ですね。これは……」
「いや、種族が違うじゃないか……。お世辞ってやつじゃないか?」
「でも、エトワイアはアミーニャのことを可愛いって言ってましたの!」
アリゼッタが声を強めた瞬間、台所からガチャンと何かの音が聞こえてくる。
「いや、でも、強かったらって話だったじゃん。獣人がもしかしたらものすごく強くて足元にも及ばないかもしれないぞ」
「しかしですね……」
そうアリゼッタが言いかけた時だった。
家の外から大きな叫び声が聞こえてきたのだ。
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