王子に転生したので悪役令嬢と正統派ヒロインと共に無双する

こたつぬこ

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 アミーニャは少しふっくらとした輪郭の優しげな雰囲気を持つ少女で、歳で言えば15歳くらいだろうか。
 おそらくはカゴのことなんだろうな、と思いながら近付いて声をかけた。

「えっと、アミーニャちゃん? カゴを届けようと思ってきたんだけど」

 俺がカゴを差し出すと恐る恐る受け取り、驚いたような顔をした。

「わっ、すごい。パプルンの実がこんなにいっぱい…………」

「あ、ああ、道中見つけてさ。良かったらあげるよそれ」

 そう口にするとアリゼッタ達が歩み寄ってきて、ちくと腰をつっついてくる。

「エトワイアは女の子に甘いですわ。私たち二人だけじゃなかったんですの!?」

「ま、まぁまぁいいじゃないか。ここは親睦を深めといたほうがいいと思ってさ」

「本当に他意はないんですよね?」

 両脇から迫ってくる鋭いプレッシャー。
 何とも複雑な気分なんだが、とりあえず女の子の前では止めて欲しいところだ。

「ほらほら、二人とも人が見てるんだ。またいつでも俺がとって来るからさ」

「むむ、ですわ」

「別にパプルンの実が惜しくていってるわけじゃないですけどね、アリゼッタ」

「ええ、当然ですわ。物じゃないんですの」

 俺は乾いた笑いを漏らし、アミーニャに顔を向けた。キョトンとした様子で俺たちを見ていたのだ。

「はは、ごめんごめん。遠慮せず持ってっていいよ、それ」

「ありがとう、格好いいお兄さん! 美人のお姉さんたちもありがとう! でも、耳と尻尾がなんか変ですねー?」

「俺たちはアミーニャと同じ獣人じゃないからな。人間って言うんだ」

 話している後ろからアリゼッタとエリーゼの声が聞こえてくる。

「格好いいって言いましたよ」
「ええ、聞きましたわ。やはりエトワイアには首輪をつけておいた方がいいのでは……?」
「でも、私達に美人とも言ってくれました」
「そうですわね。意外といい子なのかもしれませんわね。可愛らしいですし」
「とりあえずマークだけしておきましょう」

 ちくちくと刺すような言葉。できれば俺に聞こえないところで話して欲しいのだが、おそらくわざとなんだろう。
 女の子って可愛いのになんでこんなに怖いのだろうか?
 不思議な生き物だ……。

「お兄さんたち歓迎するし、お礼もしたいからうちにおいで? さっきは驚いて逃げ出しちゃってごめんなさい」

「ああ、いや、構わないよ。それが普通だし、そうすべきだと思う。
 相手が得体のしれない時は、とりあえず距離を置いたほうがいいと思うからね」

「そうなの……? なら、よかった」

「あとそうだな。俺の名前はエトワイア。んで、こっちのドリルみたいな髪の毛のお姉さんがアリゼッタ。金髪のお姉さんがエリーゼな」

「ド、ドリルってなんですの? でも、なんとなく不愉快な例えをされたような気がしますの!」

「いや、そんなことはないぞ。アリゼッタに凄く似合ってて俺は可愛いと思っている。物凄く可愛いぞ!」

 ついついドリルという単語を使ってしまい、それをごまかすために冷や汗が流れそうになる。
 顔が真っ赤になったアリゼッタとは裏腹に、今度はエリーゼが拗ねたような顔をしているし。

「エ、エリーゼの金髪ロングもすごく似合ってて可愛いと思ってるぞ。二人ともよくそんなばっちしの髪形をチョイスしてるな!」

「なんだか私達いつもエトワイアにごまかされているような気がするんですの」

「そうですよね。でも、それでも嬉しくなってしまう私たちは単純なんでしょうか……」

「いやいや、二人は賢いし、いつも俺は……いや、勿論ごまかしとかじゃなく本心から言っているんだが」

 慌てふためく俺を見てかアミーニャが笑い出した。

「あっははは。お兄さんたち仲いいんだね。羨ましいよ、私は…………だから…………」

 けれど最後に少し寂しそうな顔を見せる。
 ぼそぼそと何かを言ったようだが聞き取ることはできなかった。
 そのまま背中を向けて「付いてきて」と振り向いたその顔は笑顔に戻っていた。
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