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「しっかしすげーな」
俺は森にそびえ立つ木々を見て思わずつぶやいていた。
両腕を伸ばしてみてもまるで届かない幹の円周。どこまで伸びているか分からないほどの高さ。
樹齢一体何年なんだ?といった感じの木がでんでんと大量に立っているのだから。
「こんな木は見たことがありませんわ。リンガール大陸とは一体……」
「不思議ですけど、素敵なとこです。なんというや癒されるというか。流れる小川も物凄く澄んでいますし」
「ああ、そうだな。風もなんだか森特有の風とは違うよな」
森特有の苔むしたような匂いではなく、まるで山のほとりの湖畔を流れているような風だ。
「あ、ほら。見てくださいですわ!」
アリゼッタが上方を指さした先には、赤紫色のリンゴのような実が大量になっていた。
太い木々とは別の種類。
俺は僅かな期待を込めながら風魔法を使用し、5メートル程跳躍した。
滞空時間も風魔法で伸ばし紫色の身を2個もぎ取る。
「アリゼッタ、鑑定頼むよ」
「任せてですわ」
「食べられる物だったらいいですね」
アリゼッタの鑑定結果が表示される。
『パプルンの実 希少度2 糖度が高く食用可能。食べると僅かな疲労回復も得る』
「ふむ。折角だから一つ食べてみるか? 俺が皮剥いて切ってやろう」
そう口にするとパプルンの実を二人に奪い取られる。
「そういうのは私たちの役目ですわ。ね、エリーゼ」
「そうですよ。エトワイアはちょっと待っていてくれればいいんです」
こういう時だけは仲良くなるな、と二人が顔を見合わせ頷き合っているのを見て、なんとなくおかしく思う。
二人の仲が良くなるのは俺にとって嬉しいことであるんだが。
剥いてくれた果実の中身はオレンジ色をしたリンゴのような見た目で、本当に甘くうまかった。
二人の口にも合ったようでカゴが埋まる程度に集めておくことにした。
「本当に美味しかったですわ」
「そうですね。先生にお土産として持って行って帰ってあげたいところです」
エリーゼの言葉を聞いて、大事なことを忘れていたことを思い出す。
「あーそうか、やばいな。1週間戻らなかったら俺たちの事は死んだことにしてくれって言ってしまったな」
「あ! そうですわ。どうみても……あと数日で戻れそうな気はしませんわね」
「大陸が違いますから……。ご心配にご迷惑をかけてしまいますね」
「そう……だな……。だが俺たちにはどうしようもないことだ。国作りとしての段取りは伝えてあるし、問題と言えば外交だったが……」
「エトワイア、それは今気にしても仕方のないことですわ。私たちがいなければ国法を覆すという目的は、お父上様しか知らないのですから」
俺は国王である父親、アージャにしかその話はしていない。というより聞かれたのだが。
他の皆は単純に俺が国作りに精を出しているとしか考えていないはずだ。
「でも今私たちの状況が不明な時に、国のことを考えるエトワイアは流石だと思います。私は目の前の事で頭がいっぱいでした」
「いや、まぁ、な……。正直言えば国よりお前らの方が大切だよ」
「まぁ!」
「もう!」
驚いた顔を見せつつも、すぐに嬉しそうに俺の両腕を掴んでくる二人。
両手に華が過ぎるな、と思いつつ歩いていると目的の場所が見えてきたようだった。
俺は森にそびえ立つ木々を見て思わずつぶやいていた。
両腕を伸ばしてみてもまるで届かない幹の円周。どこまで伸びているか分からないほどの高さ。
樹齢一体何年なんだ?といった感じの木がでんでんと大量に立っているのだから。
「こんな木は見たことがありませんわ。リンガール大陸とは一体……」
「不思議ですけど、素敵なとこです。なんというや癒されるというか。流れる小川も物凄く澄んでいますし」
「ああ、そうだな。風もなんだか森特有の風とは違うよな」
森特有の苔むしたような匂いではなく、まるで山のほとりの湖畔を流れているような風だ。
「あ、ほら。見てくださいですわ!」
アリゼッタが上方を指さした先には、赤紫色のリンゴのような実が大量になっていた。
太い木々とは別の種類。
俺は僅かな期待を込めながら風魔法を使用し、5メートル程跳躍した。
滞空時間も風魔法で伸ばし紫色の身を2個もぎ取る。
「アリゼッタ、鑑定頼むよ」
「任せてですわ」
「食べられる物だったらいいですね」
アリゼッタの鑑定結果が表示される。
『パプルンの実 希少度2 糖度が高く食用可能。食べると僅かな疲労回復も得る』
「ふむ。折角だから一つ食べてみるか? 俺が皮剥いて切ってやろう」
そう口にするとパプルンの実を二人に奪い取られる。
「そういうのは私たちの役目ですわ。ね、エリーゼ」
「そうですよ。エトワイアはちょっと待っていてくれればいいんです」
こういう時だけは仲良くなるな、と二人が顔を見合わせ頷き合っているのを見て、なんとなくおかしく思う。
二人の仲が良くなるのは俺にとって嬉しいことであるんだが。
剥いてくれた果実の中身はオレンジ色をしたリンゴのような見た目で、本当に甘くうまかった。
二人の口にも合ったようでカゴが埋まる程度に集めておくことにした。
「本当に美味しかったですわ」
「そうですね。先生にお土産として持って行って帰ってあげたいところです」
エリーゼの言葉を聞いて、大事なことを忘れていたことを思い出す。
「あーそうか、やばいな。1週間戻らなかったら俺たちの事は死んだことにしてくれって言ってしまったな」
「あ! そうですわ。どうみても……あと数日で戻れそうな気はしませんわね」
「大陸が違いますから……。ご心配にご迷惑をかけてしまいますね」
「そう……だな……。だが俺たちにはどうしようもないことだ。国作りとしての段取りは伝えてあるし、問題と言えば外交だったが……」
「エトワイア、それは今気にしても仕方のないことですわ。私たちがいなければ国法を覆すという目的は、お父上様しか知らないのですから」
俺は国王である父親、アージャにしかその話はしていない。というより聞かれたのだが。
他の皆は単純に俺が国作りに精を出しているとしか考えていないはずだ。
「でも今私たちの状況が不明な時に、国のことを考えるエトワイアは流石だと思います。私は目の前の事で頭がいっぱいでした」
「いや、まぁ、な……。正直言えば国よりお前らの方が大切だよ」
「まぁ!」
「もう!」
驚いた顔を見せつつも、すぐに嬉しそうに俺の両腕を掴んでくる二人。
両手に華が過ぎるな、と思いつつ歩いていると目的の場所が見えてきたようだった。
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