12 / 46
12
しおりを挟む
目頭の舌から目尻にかけて太い線を引き、そのまま折り曲げて顎の方へ払う。
それを黒の塗料で行ったのだが、鏡を見たら金髪碧眼にそれは確かにおかしい感じであった。
〇ののけ姫みたいな感じを意識してみたのだが完全な失敗だ。
ポジティブに変装にはなるので良しとすることにした。
まずは農地改革と牧畜関連の改革からやろうと思っている。
異世界といえば農業を改革していくのは基本。
知識をひけらかすようであるが、そこに暮らす人々が豊かになるのだから問題はない。
というわけで俺たちは王城から離れ、王都内の農業を行っている場所へと赴いていた。
やはりというか視線を集めてしまったが、俺たちの素性に気付いた人間はいない様子だ。
怪しすぎて目が合うと背けられてしまう程であったが。
「やっぱりこんな格好は恥ずかしいですわ」
「そう? 凄く似合っていて可愛いと思いますよ。むしろ前着ていたドレスがそんな感じじゃなかったですっけ?」
「ドレスと街を歩く格好は違いますわ。そ、それに眼鏡と帽子もつけてますし」
「ふふ、私も眼鏡と帽子をつけてますよ。でもいいじゃないですか、エトワイアは堂々としてるんですから」
「それって間接的に俺の事を罵倒していないか?エリーゼ。エリーゼは確かに一番普通の格好だとは思うが」
のどかな街並み。そこを歩きながら3人で会話しながら歩いていく。
適度に湿り気のある風が俺たちの間を通り抜け、日の光が黒が多めの服を僅かに温める。
ローゼンストーン王国は農地、工業地、住宅地とおおまかな区域分けがされており、農地がある西方面は歩けばそれなりに時間がかかる。
既に俺は農業と牧場用の土地が隣接する場所を購入し、既に数人かの人も雇っている。
王城から一人執事を派遣してはいるが、その執事チャールズ以外は俺たちの素性を全く知らない。
「ここがエトワイアの言っていた場所ですか。中々に広い場所ですねぇ」
「本当ね。けどなんで私たちが農業を行うわけ?」
「ただ指示をするだけでも農業の改革は行える。けれどそれでは民草の本当の支持は得られない。
俺たちが汗水たらして仕事する事で、人々は俺たちに付いてくるようになるんだ」
行おうとしているのは金稼ぎでも国作りでもない。
人々の信頼を得て支持を集める事。同じ土俵に立ってやってみせないと、人は本心からは認めてくれない。
「といっても一からやるのは流石に時間がかかり過ぎる。だから魔法の力と人の力、その上で効率の良いやり方を皆に見せつけてやるわけだ」
住み込みもできるようになっている牧舎の中へと入ると、農夫の格好をしているが凛とした佇まいのチャールズが出迎えてくれた。
「お待ちしておりました、エト様」
エトというのはこれから外で活動するときの俺の名前だ。
アリゼッタはアリゼ。エリーゼはリーゼと名乗ることにしている。
「ああ、これからよろしく頼む。頼んでおいたものは用意できているか?」
「はい、勿論でございます。このようなものを何に使われるのですか……?」
「それは成功してからのお楽しみだ」
チャールズに用意しておいて貰ったのは白に灰色が混じった粉。純度が若干低いが紛れもない石灰だ。
それを黒の塗料で行ったのだが、鏡を見たら金髪碧眼にそれは確かにおかしい感じであった。
〇ののけ姫みたいな感じを意識してみたのだが完全な失敗だ。
ポジティブに変装にはなるので良しとすることにした。
まずは農地改革と牧畜関連の改革からやろうと思っている。
異世界といえば農業を改革していくのは基本。
知識をひけらかすようであるが、そこに暮らす人々が豊かになるのだから問題はない。
というわけで俺たちは王城から離れ、王都内の農業を行っている場所へと赴いていた。
やはりというか視線を集めてしまったが、俺たちの素性に気付いた人間はいない様子だ。
怪しすぎて目が合うと背けられてしまう程であったが。
「やっぱりこんな格好は恥ずかしいですわ」
「そう? 凄く似合っていて可愛いと思いますよ。むしろ前着ていたドレスがそんな感じじゃなかったですっけ?」
「ドレスと街を歩く格好は違いますわ。そ、それに眼鏡と帽子もつけてますし」
「ふふ、私も眼鏡と帽子をつけてますよ。でもいいじゃないですか、エトワイアは堂々としてるんですから」
「それって間接的に俺の事を罵倒していないか?エリーゼ。エリーゼは確かに一番普通の格好だとは思うが」
のどかな街並み。そこを歩きながら3人で会話しながら歩いていく。
適度に湿り気のある風が俺たちの間を通り抜け、日の光が黒が多めの服を僅かに温める。
ローゼンストーン王国は農地、工業地、住宅地とおおまかな区域分けがされており、農地がある西方面は歩けばそれなりに時間がかかる。
既に俺は農業と牧場用の土地が隣接する場所を購入し、既に数人かの人も雇っている。
王城から一人執事を派遣してはいるが、その執事チャールズ以外は俺たちの素性を全く知らない。
「ここがエトワイアの言っていた場所ですか。中々に広い場所ですねぇ」
「本当ね。けどなんで私たちが農業を行うわけ?」
「ただ指示をするだけでも農業の改革は行える。けれどそれでは民草の本当の支持は得られない。
俺たちが汗水たらして仕事する事で、人々は俺たちに付いてくるようになるんだ」
行おうとしているのは金稼ぎでも国作りでもない。
人々の信頼を得て支持を集める事。同じ土俵に立ってやってみせないと、人は本心からは認めてくれない。
「といっても一からやるのは流石に時間がかかり過ぎる。だから魔法の力と人の力、その上で効率の良いやり方を皆に見せつけてやるわけだ」
住み込みもできるようになっている牧舎の中へと入ると、農夫の格好をしているが凛とした佇まいのチャールズが出迎えてくれた。
「お待ちしておりました、エト様」
エトというのはこれから外で活動するときの俺の名前だ。
アリゼッタはアリゼ。エリーゼはリーゼと名乗ることにしている。
「ああ、これからよろしく頼む。頼んでおいたものは用意できているか?」
「はい、勿論でございます。このようなものを何に使われるのですか……?」
「それは成功してからのお楽しみだ」
チャールズに用意しておいて貰ったのは白に灰色が混じった粉。純度が若干低いが紛れもない石灰だ。
0
お気に入りに追加
275
あなたにおすすめの小説
王太子が悪役令嬢ののろけ話ばかりするのでヒロインは困惑した
葉柚
恋愛
とある乙女ゲームの世界に転生してしまった乙女ゲームのヒロイン、アリーチェ。
メインヒーローの王太子を攻略しようとするんだけど………。
なんかこの王太子おかしい。
婚約者である悪役令嬢ののろけ話しかしないんだけど。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
私はモブのはず
シュミー
恋愛
私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。
けど
モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。
モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。
私はモブじゃなかったっけ?
R-15は保険です。
ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。
注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。
馬鹿王子は落ちぶれました。 〜婚約破棄した公爵令嬢は有能すぎた〜
mimiaizu
恋愛
マグーマ・ティレックス――かつて第一王子にして王太子マグーマ・ツインローズと呼ばれた男は、己の人生に絶望した。王族に生まれ、いずれは国王になるはずだったのに、男爵にまで成り下がったのだ。彼は思う。
「俺はどこで間違えた?」
これは悪役令嬢やヒロインがメインの物語ではない。ざまぁされる男がメインの物語である。
※『【短編】婚約破棄してきた王太子が行方不明!? ~いいえ。王太子が婚約破棄されました~』『王太子殿下は豹変しました!? 〜第二王子殿下の心は過労で病んでいます〜』の敵側の王子の物語です。これらを見てくだされば分かりやすいです。
婚約破棄された悪役令嬢が聖女になってもおかしくはないでしょう?~えーと?誰が聖女に間違いないんでしたっけ?にやにや~
荷居人(にいと)
恋愛
「お前みたいなのが聖女なはずがない!お前とは婚約破棄だ!聖女は神の声を聞いたリアンに違いない!」
自信満々に言ってのけたこの国の王子様はまだ聖女が決まる一週間前に私と婚約破棄されました。リアンとやらをいじめたからと。
私は正しいことをしただけですから罪を認めるものですか。そう言っていたら檻に入れられて聖女が決まる神様からの認定式の日が過ぎれば処刑だなんて随分陛下が外交で不在だからとやりたい放題。
でもね、残念。私聖女に選ばれちゃいました。復縁なんてバカなこと許しませんからね?
最近の聖女婚約破棄ブームにのっかりました。
婚約破棄シリーズ記念すべき第一段!只今第五弾まで完結!婚約破棄シリーズは荷居人タグでまとめておりますので荷居人ファン様、荷居人ファンなりかけ様、荷居人ファン……かもしれない?様は是非シリーズ全て読んでいただければと思います!
【本編完結】婚約者には愛する人がいるのでツギハギ令嬢は身を引きます!
ユウ
恋愛
公爵令嬢のアドリアーナは血筋だけは国一番であるが平凡な令嬢だった。
魔力はなく、スキルは縫合という地味な物だった。
優しい父に優しい兄がいて幸せだった。
ただ一つの悩みごとは婚約者には愛する人がいることを知らされる。
世間では二人のロマンスが涙を誘い、アドリア―ナは悪役令嬢として噂を流されてしまう。
婚約者で幼馴染でもあるエイミールには友人以上の感情はないので潔く身を引く事を宣言するも激怒した第一皇女が王宮に召し上げ傍付きに命じるようになる。
公爵令嬢が侍女をするなど前代未聞と思いきや、アドリア―ナにとっては楽園だった。
幼い頃から皇女殿下の侍女になるのが夢だったからだ。
皇女殿下の紹介で素敵な友人を紹介され幸せな日々を送る最中、婚約者のエイミールが乗り込んで来るのだったが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる