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俺の部屋に入ってくるのは豪奢な服を身に纏い、赤いマントを羽織る立派な口髭をもつ男性。
言葉が正しいのであるならば、ローゼンストーンの国王ことアージャ・ローゼンストーン。いわゆる俺の父親だ。
手に持っているのは俺の部屋の鍵。
ドアのカギを閉めるとドカッとベッドに腰を下ろす。
「二人ともいい女だ。エトワイアの言いたいことはよく分かる。
儂も一夫一妻制でなければ正妻をもっと欲しかったところだからな」
笑いながら言うアージャに、アリゼッタとエリーゼが慌てた様子で立ち上がり腰を折った。
「ご無沙汰しております。ローラント公爵家アリゼッタです」
「御前で私のような者が失礼いたします。シャーネル男爵家エリーゼと申します」
二人は勿論初対面という訳ではないが、突然国王が現れたので驚いているということなのだろう。
「ああ、そんなにかたくならんでも良い。知らん仲じゃないのだ」
「それより父上、なぜ鍵を開けて入って来られたのですか!? 話を聞いていたとは、まさか聞耳を……?」
「お前が一人抜け出したと聞いたからな。おそらくここではないかと推測したのだ。
この部屋はある仕掛けを行えば、中で話している内容が聞けるというのは、お前が作った仕掛けではなかったか?」
全く知らない事だったが、確かにエトワイアの知識を探ってみれば、そういった仕掛けも動かし方も入っている。
どうやら裏切者を探りだすための仕掛けのようで、中々に用心深い男だったのだと感じた。
「そ、そうでした。しかし、全て話を聞かれてしまったとは……」
「お前も知っている通り、このアリゼッタとの婚約は儂とローラント公爵の間で結んだ約束だ。
破棄することも、エリーゼと婚約することも本来は認められぬ。例えアリゼッタに問題があったとしてもな」
長年人の上に立っている人間だからか、そこには練達の気のような物を感じる。
じろりと向ける眼光もアリゼッタをすくませて、口を挟む余裕を与えない。
「だがな、エトワイアが賢王となり一夫一妻制を覆すことが出来るのであれば、儂はそれを認めても良い」
「父上、言質はとったぞ。俺は必ずこの国を変え支持を受けてみせる。こいつらは俺の女だからな!」
「エトワイア……」
「エトワイア様……」
アージャは大きくうなずいてから声を上げて笑い出した。
「あっはっはっは。よう言うた、よう言うた。それが叶った時には儂も正妻を一人貰おうかの」
「そんなことを言っていると母上に言いつけますよ。
とりあえず俺は人々の支持を集め、国法改正を目指しますので。父上にも何かとご協力願うこともあるかもしれませんが……、若い正妻のためによろしくお願いします」
「くっくっく。若い正妻な……、リーシアには言うでないぞ。怒ると手が付けられんのは知っておると思うがな。
いやはや、お前が国王になった時の事を考えると不安に思っとったが一皮むけたのだな。はっはっはっは」
リーシアというのが現王妃である俺の母親。王子の記憶から判断するにリアルの顔は年の割には中々に美人だと思う。
父上であり国王であるアージャはそんな会話を交わし、満足げな表情を浮かべ部屋を出て行った。
言葉が正しいのであるならば、ローゼンストーンの国王ことアージャ・ローゼンストーン。いわゆる俺の父親だ。
手に持っているのは俺の部屋の鍵。
ドアのカギを閉めるとドカッとベッドに腰を下ろす。
「二人ともいい女だ。エトワイアの言いたいことはよく分かる。
儂も一夫一妻制でなければ正妻をもっと欲しかったところだからな」
笑いながら言うアージャに、アリゼッタとエリーゼが慌てた様子で立ち上がり腰を折った。
「ご無沙汰しております。ローラント公爵家アリゼッタです」
「御前で私のような者が失礼いたします。シャーネル男爵家エリーゼと申します」
二人は勿論初対面という訳ではないが、突然国王が現れたので驚いているということなのだろう。
「ああ、そんなにかたくならんでも良い。知らん仲じゃないのだ」
「それより父上、なぜ鍵を開けて入って来られたのですか!? 話を聞いていたとは、まさか聞耳を……?」
「お前が一人抜け出したと聞いたからな。おそらくここではないかと推測したのだ。
この部屋はある仕掛けを行えば、中で話している内容が聞けるというのは、お前が作った仕掛けではなかったか?」
全く知らない事だったが、確かにエトワイアの知識を探ってみれば、そういった仕掛けも動かし方も入っている。
どうやら裏切者を探りだすための仕掛けのようで、中々に用心深い男だったのだと感じた。
「そ、そうでした。しかし、全て話を聞かれてしまったとは……」
「お前も知っている通り、このアリゼッタとの婚約は儂とローラント公爵の間で結んだ約束だ。
破棄することも、エリーゼと婚約することも本来は認められぬ。例えアリゼッタに問題があったとしてもな」
長年人の上に立っている人間だからか、そこには練達の気のような物を感じる。
じろりと向ける眼光もアリゼッタをすくませて、口を挟む余裕を与えない。
「だがな、エトワイアが賢王となり一夫一妻制を覆すことが出来るのであれば、儂はそれを認めても良い」
「父上、言質はとったぞ。俺は必ずこの国を変え支持を受けてみせる。こいつらは俺の女だからな!」
「エトワイア……」
「エトワイア様……」
アージャは大きくうなずいてから声を上げて笑い出した。
「あっはっはっは。よう言うた、よう言うた。それが叶った時には儂も正妻を一人貰おうかの」
「そんなことを言っていると母上に言いつけますよ。
とりあえず俺は人々の支持を集め、国法改正を目指しますので。父上にも何かとご協力願うこともあるかもしれませんが……、若い正妻のためによろしくお願いします」
「くっくっく。若い正妻な……、リーシアには言うでないぞ。怒ると手が付けられんのは知っておると思うがな。
いやはや、お前が国王になった時の事を考えると不安に思っとったが一皮むけたのだな。はっはっはっは」
リーシアというのが現王妃である俺の母親。王子の記憶から判断するにリアルの顔は年の割には中々に美人だと思う。
父上であり国王であるアージャはそんな会話を交わし、満足げな表情を浮かべ部屋を出て行った。
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