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第2話 名前と猶予
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「んで! 部長を倒すのが仕事でもあるんだけど……折角なんで困ってる人とかを助けて貰おうかな?」
「ん……。それはいいんだけどな、肩入れしないほうがいいみたいに言ってなかったか?」
「そうなんだけどー。そうなんだけどさ、勿体ないじゃん? それに殺すために生きるよりも救うために生きる方が良くない?」
「確かにそうだな。そうかもしれん」
「でしょ? それにさー君には僕の世界グラディールを知ってもらうべきだとも思うんだよ、うん。
人とも触れて、亜人にも触れて、そして……魔族とも。自分の目で見て、そして感じて欲しい」
「おいおい、それ、大丈夫なのか? いがみあってるんだろ?」
「それを何とかするのが君の仕事さ。確かに戦争は起こるべくして起こる。けれど、手を取り合ったほうがいいに決まってるでしょ?」
「ん、まぁ、平和が一番だ」
「うんうん。自然の流れに任すがまま。それが本来最高だよ。けれどね、もう既に自然の流れじゃなくなってるんだ。だから、分かるよね?」
「ああ、分かったような気がする」
「よしっ!」
少年はパチンと手を叩くとにっこりと微笑んだ。
これで雄二がやるべきことは大体説明が終わったようだ。
まずは部長をなんとかすること。
殺す、と明言していたがそこは雄二の判断にゆだねられている。
次に世界を知ること。
そこで見たこと、感じたことを材料に人々を救い行動していく。
最後。
これははっきりとは言っていなかったが、種族間での協和を少年は望んでいる。
もっともこれははっきりと口にしなかったことから、実現する可能性は低いと思っているようだ。
「じゃあ、君自身についてを説明しておくよ」
「ああ、ステータスとか叫べばいいのか?」
少年は雄二の問いかけに意味深な笑いを浮かべただけだ。
そのまま頭の上に浮いていた輪っかのような物を外すと、雄二に向かって投げつける。
しゅるんとなんの抵抗もなく体に吸い込まれていき、雄二の身体は温かみを伴う神々しい光に包まれた。
「これ、僕の加護。もう君の言うステータスを開けるよ。ステータスね、ステータス……はい、そう頭の中で考えてみて」
雄二は半信半疑ながらもステータスと頭の中で考えてみる。
それだけで目の前に正方形の板が文字が記された状態で出現した。
名称 ユゼル
種族 人族
年齢 16歳
レベル 1
職業 鍛冶師
体力 200
魔力 200
攻撃力 50
防御力 40
力 100
防御 100
敏捷 40
運 10
魔法
なし
スキル
採集Lv1、加工Lv1、解体Lv1、剣術Lv1、体術Lv1
ユニークスキル
アイテムボックス、鑑定、全言語理解(知的生命体のみ)
ミソロジースキル
愉悦の鍛冶Lv0
加護
グラディールの加護
「ええと……突っ込みたいことが山ほどあるんだが……」
「あっはっはっは。だろうね~。まずは名前からかな?」
「あ、ああ、そうだ。誰なんだ、ユゼルってのは」
「お気に召さなかった? 今僕が考えたんだけど、変えれるよ? 変えとく?」
「というより今のままじゃ駄目なのか? 名前が変わるとなんとなくこそばゆいんだが」
「うん、言い忘れてたことがあってね。ええっと、部長?のことなんだけど、彼の事を見極めてもらいたいと思ってるんだ」
「見極める? 見極めるってどういうことだ?」
「問答無用で殺しちゃうのは可哀想だし、君にそれをやらせるのも悪い気がする。だから、彼が本当に倒すべき存在かどうかを見極めて欲しい」
少年――おそらくグラディールという名前の少年の言葉を聞き雄二は考え込んだ。
今の今までは、あの部長が異世界にチートを持って転生して良いことになるわけがないと思っていたのだ。
だが、確かに言われてみればその通りだと感じた。
自分の目で見て、そして感じて。
グラディールがそう言っていたのを思い出している。
もしかしたら部長が改心し、その力を人々を守るためにでも役立ててくれるのではないかと期待した。
「なるほど、分かったよ。つまり部長に接触する必要がある。だから名前や年齢を変えているわけだな」
「そうそう! 勿論、見た目も変えちゃうけどね。イケメン? ってのがいいかな?」
「イケ……。それができるなら是非そうしてくださいお願いします」
「あっはっはっは。お安い御用さ! で、名前はどうする??」
「そういう理由ならユゼルでいいや。別になんでもいいんだけどな、ユゼルっぽい見た目にしてくれよな!」
「オーケイ! だんだん乗り気になってきたみたいだね? で、年齢まではいいとして……職業?」
「ああ、そうだ。なぜ鍛冶師なんだ? 戦闘に便利な職業の方がいいんじゃないか?」
「ボクの……しゅみ。ってのじゃ駄目かな? 君にはただ戦いを生きるだけになって欲しくないんだよね」
「世界を見て回れって言ってたか。だが……鍛冶師なぁ。なんかもっと錬金術師とか……なかったのか?」
「あるよ。あるけど、それだと僕の加護を最大限に受けられない。ミソロジースキルに愉悦の鍛冶ってのがあるでしょ? それが、僕の――グラディールの加護の力」
「後に聞こうと思ってたことだったけどな。なんなんだ? 愉悦の鍛冶って」
雄二が――いや、ユゼルが尋ねるとグラディールは両手を広げくるくると回りだした。
「僕は愉悦を司っている。面白い事こそ最高であり最上だ! といっても、最初はその力は使えない。採集と加工を繰り返しその力を高めないといけないんだ」
「はぁ。ぜんっぜん分からん。分からんけど……まぁ面白いのはいいことだと思う」
「そう言ってくれて嬉しいよ。うん、君ならその力を間違った方向にも使わないだろうしね」
「ま、善処するよ。何が間違っているかってのはよく分からないけど」
「それは君が自分で判断するんだ。あ、そうそう、ステータスの画面を触れば詳細を見ることができるから」
「ふぅん。便利なもんだな」
「グラディールに言ってから確認してね。僕とはコンタクトを取れなくなるけど……ま、大丈夫っしょ!」
「あん……グラディールは軽いな、ほんと。ちなみに俺は部長が飛ばされる何年前に飛ばされるんだ?」
「そうだねぇ……。いつでもいいよ、いつがいい? おっと、部長?は20歳の姿で転生したようだからあまり差が開かないようにしてね」
「分かった。じゃあ3年前……にしてくれるか? 近付くとき歳が下の方が部長にはやりやすい。年上には媚びへつらう人だからな」
「おっけい。一度飛んじゃうとやり直しがきかないから――――本当にお願いします」
グラディールは最後に言葉を正すと丁寧に腰を折った。
ここまであっけらかんとしていた彼の急激な変貌にとまどっているうちに、ユゼルの意識は少しずつ薄れて消えていった。
「ん……。それはいいんだけどな、肩入れしないほうがいいみたいに言ってなかったか?」
「そうなんだけどー。そうなんだけどさ、勿体ないじゃん? それに殺すために生きるよりも救うために生きる方が良くない?」
「確かにそうだな。そうかもしれん」
「でしょ? それにさー君には僕の世界グラディールを知ってもらうべきだとも思うんだよ、うん。
人とも触れて、亜人にも触れて、そして……魔族とも。自分の目で見て、そして感じて欲しい」
「おいおい、それ、大丈夫なのか? いがみあってるんだろ?」
「それを何とかするのが君の仕事さ。確かに戦争は起こるべくして起こる。けれど、手を取り合ったほうがいいに決まってるでしょ?」
「ん、まぁ、平和が一番だ」
「うんうん。自然の流れに任すがまま。それが本来最高だよ。けれどね、もう既に自然の流れじゃなくなってるんだ。だから、分かるよね?」
「ああ、分かったような気がする」
「よしっ!」
少年はパチンと手を叩くとにっこりと微笑んだ。
これで雄二がやるべきことは大体説明が終わったようだ。
まずは部長をなんとかすること。
殺す、と明言していたがそこは雄二の判断にゆだねられている。
次に世界を知ること。
そこで見たこと、感じたことを材料に人々を救い行動していく。
最後。
これははっきりとは言っていなかったが、種族間での協和を少年は望んでいる。
もっともこれははっきりと口にしなかったことから、実現する可能性は低いと思っているようだ。
「じゃあ、君自身についてを説明しておくよ」
「ああ、ステータスとか叫べばいいのか?」
少年は雄二の問いかけに意味深な笑いを浮かべただけだ。
そのまま頭の上に浮いていた輪っかのような物を外すと、雄二に向かって投げつける。
しゅるんとなんの抵抗もなく体に吸い込まれていき、雄二の身体は温かみを伴う神々しい光に包まれた。
「これ、僕の加護。もう君の言うステータスを開けるよ。ステータスね、ステータス……はい、そう頭の中で考えてみて」
雄二は半信半疑ながらもステータスと頭の中で考えてみる。
それだけで目の前に正方形の板が文字が記された状態で出現した。
名称 ユゼル
種族 人族
年齢 16歳
レベル 1
職業 鍛冶師
体力 200
魔力 200
攻撃力 50
防御力 40
力 100
防御 100
敏捷 40
運 10
魔法
なし
スキル
採集Lv1、加工Lv1、解体Lv1、剣術Lv1、体術Lv1
ユニークスキル
アイテムボックス、鑑定、全言語理解(知的生命体のみ)
ミソロジースキル
愉悦の鍛冶Lv0
加護
グラディールの加護
「ええと……突っ込みたいことが山ほどあるんだが……」
「あっはっはっは。だろうね~。まずは名前からかな?」
「あ、ああ、そうだ。誰なんだ、ユゼルってのは」
「お気に召さなかった? 今僕が考えたんだけど、変えれるよ? 変えとく?」
「というより今のままじゃ駄目なのか? 名前が変わるとなんとなくこそばゆいんだが」
「うん、言い忘れてたことがあってね。ええっと、部長?のことなんだけど、彼の事を見極めてもらいたいと思ってるんだ」
「見極める? 見極めるってどういうことだ?」
「問答無用で殺しちゃうのは可哀想だし、君にそれをやらせるのも悪い気がする。だから、彼が本当に倒すべき存在かどうかを見極めて欲しい」
少年――おそらくグラディールという名前の少年の言葉を聞き雄二は考え込んだ。
今の今までは、あの部長が異世界にチートを持って転生して良いことになるわけがないと思っていたのだ。
だが、確かに言われてみればその通りだと感じた。
自分の目で見て、そして感じて。
グラディールがそう言っていたのを思い出している。
もしかしたら部長が改心し、その力を人々を守るためにでも役立ててくれるのではないかと期待した。
「なるほど、分かったよ。つまり部長に接触する必要がある。だから名前や年齢を変えているわけだな」
「そうそう! 勿論、見た目も変えちゃうけどね。イケメン? ってのがいいかな?」
「イケ……。それができるなら是非そうしてくださいお願いします」
「あっはっはっは。お安い御用さ! で、名前はどうする??」
「そういう理由ならユゼルでいいや。別になんでもいいんだけどな、ユゼルっぽい見た目にしてくれよな!」
「オーケイ! だんだん乗り気になってきたみたいだね? で、年齢まではいいとして……職業?」
「ああ、そうだ。なぜ鍛冶師なんだ? 戦闘に便利な職業の方がいいんじゃないか?」
「ボクの……しゅみ。ってのじゃ駄目かな? 君にはただ戦いを生きるだけになって欲しくないんだよね」
「世界を見て回れって言ってたか。だが……鍛冶師なぁ。なんかもっと錬金術師とか……なかったのか?」
「あるよ。あるけど、それだと僕の加護を最大限に受けられない。ミソロジースキルに愉悦の鍛冶ってのがあるでしょ? それが、僕の――グラディールの加護の力」
「後に聞こうと思ってたことだったけどな。なんなんだ? 愉悦の鍛冶って」
雄二が――いや、ユゼルが尋ねるとグラディールは両手を広げくるくると回りだした。
「僕は愉悦を司っている。面白い事こそ最高であり最上だ! といっても、最初はその力は使えない。採集と加工を繰り返しその力を高めないといけないんだ」
「はぁ。ぜんっぜん分からん。分からんけど……まぁ面白いのはいいことだと思う」
「そう言ってくれて嬉しいよ。うん、君ならその力を間違った方向にも使わないだろうしね」
「ま、善処するよ。何が間違っているかってのはよく分からないけど」
「それは君が自分で判断するんだ。あ、そうそう、ステータスの画面を触れば詳細を見ることができるから」
「ふぅん。便利なもんだな」
「グラディールに言ってから確認してね。僕とはコンタクトを取れなくなるけど……ま、大丈夫っしょ!」
「あん……グラディールは軽いな、ほんと。ちなみに俺は部長が飛ばされる何年前に飛ばされるんだ?」
「そうだねぇ……。いつでもいいよ、いつがいい? おっと、部長?は20歳の姿で転生したようだからあまり差が開かないようにしてね」
「分かった。じゃあ3年前……にしてくれるか? 近付くとき歳が下の方が部長にはやりやすい。年上には媚びへつらう人だからな」
「おっけい。一度飛んじゃうとやり直しがきかないから――――本当にお願いします」
グラディールは最後に言葉を正すと丁寧に腰を折った。
ここまであっけらかんとしていた彼の急激な変貌にとまどっているうちに、ユゼルの意識は少しずつ薄れて消えていった。
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