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一章 奮闘
一章 第25話 ご~ご~ダンジョンっ! その3 フォーメーション
しおりを挟むアルデ坑道に向かうブル美トラックの車内、リアさんによるダンジョン講座が始まった――
「ダンジョン化は、アルデ坑道のような古い坑道や盗賊たちが盗んだ品物を隠した洞窟、はるか昔に栄華を極めた古い都市などにみられる現象だ。
長い年月をかけて魔素となって蓄積した人々の欲望が、ある日突然それらの場所に意思を持たせ、ダンジョン化が始まると言われている。
ダンジョンは、その奥にある宝物や鉱石を餌にして、さらなる魔素の元となる欲望――つまりは人々を呼び込むのだ。
同時に入り口からあふれ出る魔素は、周囲のモンスターや魔獣をダンジョンに呼び込み出られなくする。それが自然と、宝物の番人となるのだ」
ぽかーん……じゅるりっ
――リアさんは、一生懸命難しい顔をするお猿達を見渡した。
マサ兄ぃが、タツの代貸しの如く、かけてもいないメガネを押し上げる……
「なるほど……
ドライブコース途中の公衆便所(ダンジョン)に
その前にあるアイスやヌードルの自販機(宝物)。
見るからに……な公衆便所の外観(魔素)と
貯まりまくったう○こや、散らしう○こ(番人)。
……という訳ですねぇ」
……残念ながら無謀な挑戦だったようだ。
リアさんの講義が続く――
「番人となったモンスターや魔獣は、宝物を求めて集まる冒険者を駆逐する。
その冒険者の装備や所持品はさらなる宝物となり、倒れた冒険者の無念と欲望はさらなる魔素となる。その魔素でダンジョンは徐々に成長し、奥深くなり、さらに強いモンスターや魔獣を呼び込む力を得る。
そうやってダンジョンはより巨大に、より強固に進化していくのだ。
アルデ坑道は、ダンジョンの中では比較的、歴史の浅いダンジョンで、中にいるモンスターも、他のダンジョンよりは弱いと言われている……が、私は、剣の師匠のパーティーに入れてもらい何度か潜ったが、それでも11層まで行くのがやっとだった」
――11層まで進んで、リアさんのパーティーは運よく握りこぶしほどの金塊を得て引き返したそうだ。
だが、ラウ君が求める金塊は、それよりも大きな、恐らくは先代の鉄像が作れるくらいの大きさのものだ……もっと深くを目指す可能性があるだろう。
急がないと……、頼むからラウ君、無理をしないで引き返してくれ……。
焦りが募る。
キキキキキー「ブヒっ!」
「ここかな?着いたみたいだよ~^^」
おぃら達はブル美トラックの荷台を飛び降り、運転席から降りたトシ兄ぃと合流する。
目の前には、木の枠で囲まれたアルデ坑道の入り口――放出される魔素の影響なのか、なんとも妖しげな雰囲気だ。
ゴクリ――これがダンジョンか……。
「リアさん、ダンジョンパーティーって、普通はどんな感じ進むの?」
おぃらと兄貴達は、ダンジョン自体が始めてだ。ここで焦っても危険が増すばかりだろう。
唯一の経験者リアさんによる、最後の講義が始まった――
「うむ、通常は私のような剣持ちや、巨大シールドを持った盾役の者が前衛を努める。弓使いや槍使いは中衛だ。
【罠見破り】や【回復魔法】のスキルや特技を持つ神官や僧職くずれの者が、後衛で回復やマッピングを担当して、少しずつ進んでいくのだ」
「ははっ、わ、罠とかあるんですね……それに回復魔法とか必要なのですね……」
「うむ、戦闘や罠による影響で、どうしても前衛は怪我は避けれない。
それを回復魔法で癒しつつ、襲い掛かってくるモンスターや魔獣を蹴散らしながら、後衛の魔力の尽きるまでアタックするのが一般的だな」
――講義は終わった。これ以上の座学を重ねる時間の余裕はもうない。
リアさんが皆を見渡す――いよいよ実技だ……
「前衛は私がいこう。回復魔法はマサ兄さんとトシ兄さん、どちらが使えるのだ?
その者に後衛に回ってもらおう」
シィィィン
……あ、あのリアさん、おぃらはともかく兄ぃ達が、もっとも神官と僧侶から遠い存在だとみて解かりませんか……?
マサ兄ぃが、代貸しから渡されたアタッシュケースを開け、にかっと笑いながらアロエンの葉の束を広げるが、怪我が完治するまでに2時間はかかるのだ――そ時間をのんびり使っていたら、ラウ君が危ない。
「か、回復役はいなかったのだな……極力怪我を避けていくしかないな。
敵が弱い間はともかく、階層を進むにつれて、弓矢の罠や飛び出す槍、トラバサミ等の罠も次第に増えていくんだが……」
要は、怪我さえしなければいいのか――ん?
『『『ジぃぃぃー』』』
気がつけば、皆の視線がおぃらに集中している。
ですよね、どうしてもそうなりますよね……
ビュっ――ガンッ「痛っ」
ビヨヨーン――ドスっ「も、モロ……そこは反則」
ガシャン!バキッ! 「ち、縮む……背が縮む」
現在、おぃら達は5層から6層に行く階段に向かって一直線に進んでいる。
ダンジョン内でも、トシ兄ぃのマップ能力が使えたのは有難かった――最短距離を進んで5層まで一気に来れたからだ。
トシ兄ぃの話だと、10層にゆっくりと慎重に進む白い生体反応があるみたいなので、それがおそらくラウ君だろう。
【隠密】の能力を使って、敵との戦闘を極力避けながら進んでいるみたいだ。
ちなみに敵は赤い生体反応で表示されているとの事。ただ、残念ながら罠に関しては、表示はされなみたい。
……そんな訳で、ここに来るまでにおぃらは、弓矢を六回、横壁から突然飛び出してくる槍を四回、トラバサミに足を挟まれるを三回食らっているところだ。
確かに怪我はしないが、時間がもったいないので痛みに悶絶することもできないのが、非常にツラい――
小指の先をタンスの角にぶつけたとき、一人で大きな声を上げて のたうちまわったら、なんかスッキリするだろ? その理屈だ……。
「その角曲がった先に、敵っぽい反応が五体あるよー^^ 大きさからいってオークかな^^」
石版を目の前にフワフワさせたトシ兄ぃが、皆に警告を発する。
時間がもったいないので避けれる敵は避けてきたが、一本道なのでここは避けるのは難しいだろう。
マサ兄ぃが右手にリボルバーを持ち、左手を静かにおぃらの右肩に置く。
同様にリアさんは左手に大剣をもち、右手をおいらの肩に置いて戦闘態勢を取る。ここに来るまでの何度かの戦闘で確立されたフォーメーションだ……
「行きますよ……」
おぃらはふりむきながら小声でささやき、みなの首が縦に振られるのを確認する。
……この角を曲がったら戦闘開始だ。
ドクンドクン……
この瞬間が一番緊張する。い、行くぞ――
「ばーかばーか……お尻ペーンペン!
バーカバーカ……プッ(笑)!」
!?……怒!!『ブヒーッ!』『ブギーッ!』
――左手をおぃらの肩に置いたまま、マサ兄ぃ必殺の【挑発】スキルが発動した。
マサ兄ぃの挑発に、十メートルほど先に たむろしていたオーク共が、血相を変えて叫びながら向かってくる――
ダーンっ! ダーンっ! ダーンっ!
――マサ兄ぃのリボルバーと、トシ兄ぃのオートマティックが火を噴き、オークが3匹ほど倒れる。
オークの残りは、あと二匹。オークに狙われているマサ兄ぃは、素早く後ろに下がってしゃがみこみ、おぃらの後ろに身を隠す……
『ブヒーっ!』――ガンっ!
『ブギーっ!』――ゴンっ!
くぅぅぅ、痛い……容赦なしかよ。
……残る2匹の振りかぶった剣が、おぃらの頭に炸裂し、目の前に火花が散った。
その隙に、オークの横に回りこんだリアさんが、袈裟がけに、オークを一匹切り倒す。
残り一匹――
ダーンっ! ダーンっ!
――銃声が二発!?
ま、まさかっ……
トシ兄ぃの放ったであろう銃弾は、見事、最後のオークを仕留める。
そして
……マサ兄ぃの放った銃弾は、見事おぃらの尻に突き刺さり、おぃらは尻を押さえて悶絶した。
ジタバタジタバタ……
マサ兄ぃ、なに銃口からでる煙を格好つけて吹いてるんですか? 絶対これ兄ぃの銃弾です――
「どうしたっ!? シュウ、怪我でもしたのか? 大丈夫かっ!?」
――悶絶するおぃらに、リアさんが血相を変えて駆け寄ってくる……
ハッ!
ま、まさかマサ兄ぃ、この銃弾はキラーパスだったのかぁぁぁ!?
……実の兄弟よりも血が濃いぃおぃら達の連携は完璧だ――
「ヒーン(泣)ヒーン(涙)」
プルプル……(震えながらマサ兄ぃを指し示す指)
「そーかそーか、よしよし……、
私がちゃんと言っておいてやるからな――
ほらシュウ、もう機嫌を直せ……よしよし……」
――さすが岬くん……いやいや、マサ兄ぃ様の見事なアシストだ。
リアさんが、おぃらの顔を挟み込んで(ナニでかは、言えない)頭をよしよししてくれた。
「マサ兄さん、シュウにちょっかい出すのはダメだぞっ!」
「ブー、ぷいっ!」
山田く~~ん、リアさんに怒られるマサ園児に、ティンゴ飴十本持ってこぉぉぉい――
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