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1章 焦り
1章ー15
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ニヤついた笑顔でメイアがドワーフ翁へ言う。
「親方、人を集めてくれる? できれば口の固い人を?」
「了解じゃ、あとは検証実験の場所の確保じゃのう。確か、村の倉庫が空いてた筈じゃ。そこを臨時検証実験場にしよう」
ドワーフ翁の言葉にミュティも小さく首を振り、付け加えてメイアへ問う。
「賛成です。それでメイア姉さん、検証要項はとりあえず精霊結晶の種類、封入された精霊の量的観点から見た質、あとは回転運動ぐらいですか?」
「そうねえ、とりあえずその3つの観点から人海戦術で絞り込みをかけましょう? どの精霊結晶を組み合わせて、どの位の質で統一したモノを、どれくらい回転させれば多くの精霊が引き出せるのか。これが肝ね。願わくば、あの子達が見せた現象が、最低値であることを望むわ」
「そうじゃのう? あの程度の精霊の現出が限界だったら、調べる気も失せるわい」
「ふふふ、そうね。確認してみましょう。特に精霊結晶の種類と質は、結構時間かかると思うわ。精霊の種類は凄まじく多いし、結晶の質に関してもピンキリだからね? 2人は場所と検証機器、材料の確保に動いてくれる? 私は先に、この手の現象が他の企業や研究所で確認されてるかどうか、軽く調べてみるわ。いいかしら、命彦?」
ドワーフ翁の言葉に苦笑を返して言うメイアの発言に、命彦も首を縦に振って応えた。
「分かった。3人とも慎重に頼むぞ?」
「勿論よ、新現象だったら情報統制が不可欠だもの。ところで命彦、ある程度検証ができて現象についての理解が深まったら、頼みがあるんだけど……」
メイアの頼みをすぐに察して、命彦が苦笑する。
「言わんでもいい。実験と検証の予算は俺が個人的に出す、姉さんもいいか?」
「ええ。私も少し予算を出すわ。あの現象、個人的に調べたいもの」
命彦の言葉に命絃も賛同すると、ミサヤがふと気付いたのか、メイアへ問いかけた。
「この一件、先に店の幹部達へ話を通しておくべきでは? 場合によっては、メイアの作ったあの魔法増幅装置よりも、よっぽど世間への影響力を持ちますよ? 相当の儲け話に化けると思われます」
「そうね……いやでも、明確に再現できる確証が得られてから、皆へ言うべきだと思うわ? 今はまだ検証段階だもの、気が早いと思う。できればもっと多くの精霊を引き出す方法も見つけたいしね?」
「ふむ? ……分かった。ひとまずはこの場にいる者達で、この一件を進めるとしよう」
メイアの考えも一理あると思い、命彦がそう言うと、横にいた命絃がせっつくように命彦へ言った。
「命彦、私達も一度自宅へ戻りましょ? この新現象、あるいは類似現象について、ご先祖様の文献に記載があるかどうか、すぐにでも確認したいわ」
「分かった、俺も手伝うよ。ミサヤも手伝ってくれ」
「承知致しました」
席を立った命彦が、素早く進む話に置いて行かれ気味の舞子に問う。
「舞子、お前はこの後はどうするんだ?」
「あ、はい! 一応セレリウス部長に戦闘訓練をつけてもらう予定ですが?」
「ふむ。ソル姉と会うわけか……もう一度言っとくが、ここで見聞きしたことについては、現時点において、たとえソル姉が相手でも、他言無用だぞ? 分かってるか?」
「そうよ舞子? ソル姉さんを驚かせるためにも、まだ黙っといてね?」
「勿論分かってますよ! 誰にも話しませんから!」
「うむ。約束だぞ? それじゃあとりあえず一旦解散だ。メイア、何か分かったことがあれば、自宅の方へ連絡をくれ」
「分かったわ」
「あとミュティ、手がかりをくれたあの子達には、後で何か礼がしたい。そのことをきちんと伝えてから、家に帰してあげてくれるか?」
「ふふふ、分かりました。楽しみに待つよう、2人には伝えておきます」
命彦が未だに一生懸命、精霊結晶を探している幼女達を見つつ、ミュティへ言うと、ミュティは苦笑して答えた。
「よし。それじゃ姉さん、ミサヤ、行こう!」
「はい。自宅へ空間転移しますね」
命彦は少し浮ついた様子で、【精霊本舗】から姉達と共に自宅へ戻った。
事態が動いたのは、まさかのその日のウチであった。
自宅の工房の地下倉庫で、文献を調べていた命彦達が夕飯を食べに居間へ戻ると、時期良くメイアから命彦のポマコンへ連絡が届いたのである。
「お、メイアからだ。……すぐに店へ来て!だとさ?」
「あら、随分早いわね?」
「そうですね。こちらは収穫がありませんでしたが、あっちは動きがあったのでしょうか?」
「行ってみればわかるさ。メイアのことだ、どうでも良いことで俺達を呼ぶわけがねえ」
「確かにね、ミサヤ、転移を頼めるかしら?」
「致し方ありませんね? 外に出ましょう」
命彦達がミサヤの《空間転移の儀》で【精霊本舗】店舗棟の屋上へ瞬間移動すると、メイアが待っていた。
「メイア、俺たちを呼び出したってことは、例の現象の再現、上手くいったのか?」
「ええ、まさかここまで早く再現できるとは、私も想定外だったわ。親方達が検証場で待ってるから、場所を移しましょう」
メイアに先導されて、命彦達は夕飯のいい匂いが漂う店舗棟3階の社宅階に移動し、入り口の扉を潜った。
扉の先には、社宅階層に亜空間を内包し、その亜空間内に作られた社員達が家族で暮らす村が広がっている。
すれ違う社員やその家族達に軽く挨拶しつつ、村の道を進んで、命彦達は村の一角にある空き倉庫の前に辿り着いた。
「ここがドム爺の言ってた検証場所か?」
「ええ。外部に漏らす社員がいるとは考えにくいけど、一応人目を気にしてここにしたの。さあ、入って」
メイアが倉庫の扉を開くと、顔見知りの職人達にテキパキと指示を出す、ドワーフ翁とその孫娘のミュティがいた。ドワーフ翁とミュティがすぐにメイアに気付き、笑顔を浮かべた。
「おお、メイア嬢! 戻ったか」
「命彦達を連れて来たわ、進捗はどう?」
「どうもこうもありませんよ! 凄い発見ですよ、この現象!」
興奮気味に答えるミュティ。その横で職人達がある機械を命彦達に見せるように起動させ、回転させた。
地水火風、黄色と青色、赤色と緑色に煌めく、相当質の良い精霊結晶を隣接させて束のように固定した機械が、すぐに回転を始める。
「若兄様、姉様方も、あれをよく見といてくださいね!」
ミュティが機械を指差していると、精霊の爆発が起こった。
「うおっ!」
「こ、これって!」
「回転したあの機械から物凄い量の精霊達が噴出しています!」
驚きに目を丸くする命彦達の前で、むせ返るほど濃密に精霊を発生させた機械に近づいて、メイアが語った。
「端的に言って、精霊結晶を活用したこの新現象は全く未知のモノだった。私の調べた限りでは、この現象に関する記述は皆無。どこの企業や研究所でも未発見の現象だった。そして……」
メイアが機械に手を触れて、ニヤリと笑って言葉を続ける。
「この新現象の発生及び現象自体の増幅には、いくつかの条件があることが判明したのよ。第1に、地水火風の4種の精霊結晶が接触した状態にあること。第2に、接触した4種の精霊結晶が相当程度質の近いものであること。第3に、4種の精霊結晶が接触状態のまま、回転運動させる必要があること。以上よ」
メイアの発言を聞き、命彦達は不思議そうに口を開いた。
「ふむ……それだけ聞くと、他所の研究所や魔法具開発企業でも、この新現象が簡単に見つかりそうだが?」
「そうね? でもどうして、どこの企業や研究所でも、この新現象を見過ごしていたのかしら? ウチのご先祖様の文献でさえ、それらしい現象が未記載だったし」
「そうですね、意思魔法の家系とはいえ、魂斬家でも魔法具開発は定期的に行っていた筈。魔法具開発につきものの精霊結晶についても、当然よく触れていたわけですし、気付いても良さそうですが……」
この命彦達の疑問に、メイアとドワーフ翁、ミュティが答えた。
「恐らく、精霊結晶の種類と質の調整、そして廃材という認識のせいでしょうね? 通常、魔法具開発の際に出る精霊結晶ってクズゴミ扱いだから、どの精霊結晶も一緒くたにまとめて集積されるわ。地水火風以外の精霊結晶が混じるし、結晶の質もてんでバラバラの状態よ?」
「そうじゃのう。その状態で回転運動を加えても、手を突っ込んでかき回したりしても、精霊を引き出す新現象は発生せず、誰もが気づかぬまま放置するわけじゃ。ほいでそのまま捨てるか、農場の肥料として農家に売られるか、伝統工芸品やら宝飾品やらの飾りとして、利用されるかが関の山じゃった。一応自然由来だからまとめて捨てても、放っておけばそのうち土へ還る。見た目的には色のついたガラス片に近いし、肥料としての活用以外に、使い道が限られていたんじゃ」
「ところがどっこい、ここ【精霊本舗】では、廃材を利用して趣味の魔法具作りを行うお祖父ちゃんがいるので、精霊結晶を属性ごとにある程度分別しています。お祖父ちゃんがよく持ち出す地水火風の精霊結晶と、それ以外の精霊結晶とがそもそも分離しているため、他の企業や研究所より、新現象が見つけやすい環境にあったわけです」
「とはいえ、質がバラバラの地水火風の精霊結晶ではいくら接触状態で回転運動を与えても、新現象は発生せん。それ故に今までわしらも気づかんかったわけじゃ。使える結晶を探して、滅茶苦茶かき混ぜとったがのう? それらしい現象は今の今まで見とらんかった。これは純粋にワウ子やルウ子の手柄と言えるのう」
「ええ。貧乏性と子ども達の遊び心が招いた新発見とも言えるわね? 国内外を問わず、この現象は未確認のモノよ。魔法や精霊関連の論文もできる限り調べたけど、類似現象に関する論文も皆無。魔法使いの一族として、千年以上の歴史を持つ魂斬家でも未発見の現象ってことは、他の家系でも未発見の可能性が高いし、何よりも、すでにこの新現象が見つかっていたら、今頃は精霊魔法だけを増幅する魔法増幅装置が出来てる筈だわ」
「確かに……ってことは、本当に世紀の発見と言えるわけか!」
命彦の目に歓喜の感情が宿った。
「親方、人を集めてくれる? できれば口の固い人を?」
「了解じゃ、あとは検証実験の場所の確保じゃのう。確か、村の倉庫が空いてた筈じゃ。そこを臨時検証実験場にしよう」
ドワーフ翁の言葉にミュティも小さく首を振り、付け加えてメイアへ問う。
「賛成です。それでメイア姉さん、検証要項はとりあえず精霊結晶の種類、封入された精霊の量的観点から見た質、あとは回転運動ぐらいですか?」
「そうねえ、とりあえずその3つの観点から人海戦術で絞り込みをかけましょう? どの精霊結晶を組み合わせて、どの位の質で統一したモノを、どれくらい回転させれば多くの精霊が引き出せるのか。これが肝ね。願わくば、あの子達が見せた現象が、最低値であることを望むわ」
「そうじゃのう? あの程度の精霊の現出が限界だったら、調べる気も失せるわい」
「ふふふ、そうね。確認してみましょう。特に精霊結晶の種類と質は、結構時間かかると思うわ。精霊の種類は凄まじく多いし、結晶の質に関してもピンキリだからね? 2人は場所と検証機器、材料の確保に動いてくれる? 私は先に、この手の現象が他の企業や研究所で確認されてるかどうか、軽く調べてみるわ。いいかしら、命彦?」
ドワーフ翁の言葉に苦笑を返して言うメイアの発言に、命彦も首を縦に振って応えた。
「分かった。3人とも慎重に頼むぞ?」
「勿論よ、新現象だったら情報統制が不可欠だもの。ところで命彦、ある程度検証ができて現象についての理解が深まったら、頼みがあるんだけど……」
メイアの頼みをすぐに察して、命彦が苦笑する。
「言わんでもいい。実験と検証の予算は俺が個人的に出す、姉さんもいいか?」
「ええ。私も少し予算を出すわ。あの現象、個人的に調べたいもの」
命彦の言葉に命絃も賛同すると、ミサヤがふと気付いたのか、メイアへ問いかけた。
「この一件、先に店の幹部達へ話を通しておくべきでは? 場合によっては、メイアの作ったあの魔法増幅装置よりも、よっぽど世間への影響力を持ちますよ? 相当の儲け話に化けると思われます」
「そうね……いやでも、明確に再現できる確証が得られてから、皆へ言うべきだと思うわ? 今はまだ検証段階だもの、気が早いと思う。できればもっと多くの精霊を引き出す方法も見つけたいしね?」
「ふむ? ……分かった。ひとまずはこの場にいる者達で、この一件を進めるとしよう」
メイアの考えも一理あると思い、命彦がそう言うと、横にいた命絃がせっつくように命彦へ言った。
「命彦、私達も一度自宅へ戻りましょ? この新現象、あるいは類似現象について、ご先祖様の文献に記載があるかどうか、すぐにでも確認したいわ」
「分かった、俺も手伝うよ。ミサヤも手伝ってくれ」
「承知致しました」
席を立った命彦が、素早く進む話に置いて行かれ気味の舞子に問う。
「舞子、お前はこの後はどうするんだ?」
「あ、はい! 一応セレリウス部長に戦闘訓練をつけてもらう予定ですが?」
「ふむ。ソル姉と会うわけか……もう一度言っとくが、ここで見聞きしたことについては、現時点において、たとえソル姉が相手でも、他言無用だぞ? 分かってるか?」
「そうよ舞子? ソル姉さんを驚かせるためにも、まだ黙っといてね?」
「勿論分かってますよ! 誰にも話しませんから!」
「うむ。約束だぞ? それじゃあとりあえず一旦解散だ。メイア、何か分かったことがあれば、自宅の方へ連絡をくれ」
「分かったわ」
「あとミュティ、手がかりをくれたあの子達には、後で何か礼がしたい。そのことをきちんと伝えてから、家に帰してあげてくれるか?」
「ふふふ、分かりました。楽しみに待つよう、2人には伝えておきます」
命彦が未だに一生懸命、精霊結晶を探している幼女達を見つつ、ミュティへ言うと、ミュティは苦笑して答えた。
「よし。それじゃ姉さん、ミサヤ、行こう!」
「はい。自宅へ空間転移しますね」
命彦は少し浮ついた様子で、【精霊本舗】から姉達と共に自宅へ戻った。
事態が動いたのは、まさかのその日のウチであった。
自宅の工房の地下倉庫で、文献を調べていた命彦達が夕飯を食べに居間へ戻ると、時期良くメイアから命彦のポマコンへ連絡が届いたのである。
「お、メイアからだ。……すぐに店へ来て!だとさ?」
「あら、随分早いわね?」
「そうですね。こちらは収穫がありませんでしたが、あっちは動きがあったのでしょうか?」
「行ってみればわかるさ。メイアのことだ、どうでも良いことで俺達を呼ぶわけがねえ」
「確かにね、ミサヤ、転移を頼めるかしら?」
「致し方ありませんね? 外に出ましょう」
命彦達がミサヤの《空間転移の儀》で【精霊本舗】店舗棟の屋上へ瞬間移動すると、メイアが待っていた。
「メイア、俺たちを呼び出したってことは、例の現象の再現、上手くいったのか?」
「ええ、まさかここまで早く再現できるとは、私も想定外だったわ。親方達が検証場で待ってるから、場所を移しましょう」
メイアに先導されて、命彦達は夕飯のいい匂いが漂う店舗棟3階の社宅階に移動し、入り口の扉を潜った。
扉の先には、社宅階層に亜空間を内包し、その亜空間内に作られた社員達が家族で暮らす村が広がっている。
すれ違う社員やその家族達に軽く挨拶しつつ、村の道を進んで、命彦達は村の一角にある空き倉庫の前に辿り着いた。
「ここがドム爺の言ってた検証場所か?」
「ええ。外部に漏らす社員がいるとは考えにくいけど、一応人目を気にしてここにしたの。さあ、入って」
メイアが倉庫の扉を開くと、顔見知りの職人達にテキパキと指示を出す、ドワーフ翁とその孫娘のミュティがいた。ドワーフ翁とミュティがすぐにメイアに気付き、笑顔を浮かべた。
「おお、メイア嬢! 戻ったか」
「命彦達を連れて来たわ、進捗はどう?」
「どうもこうもありませんよ! 凄い発見ですよ、この現象!」
興奮気味に答えるミュティ。その横で職人達がある機械を命彦達に見せるように起動させ、回転させた。
地水火風、黄色と青色、赤色と緑色に煌めく、相当質の良い精霊結晶を隣接させて束のように固定した機械が、すぐに回転を始める。
「若兄様、姉様方も、あれをよく見といてくださいね!」
ミュティが機械を指差していると、精霊の爆発が起こった。
「うおっ!」
「こ、これって!」
「回転したあの機械から物凄い量の精霊達が噴出しています!」
驚きに目を丸くする命彦達の前で、むせ返るほど濃密に精霊を発生させた機械に近づいて、メイアが語った。
「端的に言って、精霊結晶を活用したこの新現象は全く未知のモノだった。私の調べた限りでは、この現象に関する記述は皆無。どこの企業や研究所でも未発見の現象だった。そして……」
メイアが機械に手を触れて、ニヤリと笑って言葉を続ける。
「この新現象の発生及び現象自体の増幅には、いくつかの条件があることが判明したのよ。第1に、地水火風の4種の精霊結晶が接触した状態にあること。第2に、接触した4種の精霊結晶が相当程度質の近いものであること。第3に、4種の精霊結晶が接触状態のまま、回転運動させる必要があること。以上よ」
メイアの発言を聞き、命彦達は不思議そうに口を開いた。
「ふむ……それだけ聞くと、他所の研究所や魔法具開発企業でも、この新現象が簡単に見つかりそうだが?」
「そうね? でもどうして、どこの企業や研究所でも、この新現象を見過ごしていたのかしら? ウチのご先祖様の文献でさえ、それらしい現象が未記載だったし」
「そうですね、意思魔法の家系とはいえ、魂斬家でも魔法具開発は定期的に行っていた筈。魔法具開発につきものの精霊結晶についても、当然よく触れていたわけですし、気付いても良さそうですが……」
この命彦達の疑問に、メイアとドワーフ翁、ミュティが答えた。
「恐らく、精霊結晶の種類と質の調整、そして廃材という認識のせいでしょうね? 通常、魔法具開発の際に出る精霊結晶ってクズゴミ扱いだから、どの精霊結晶も一緒くたにまとめて集積されるわ。地水火風以外の精霊結晶が混じるし、結晶の質もてんでバラバラの状態よ?」
「そうじゃのう。その状態で回転運動を加えても、手を突っ込んでかき回したりしても、精霊を引き出す新現象は発生せず、誰もが気づかぬまま放置するわけじゃ。ほいでそのまま捨てるか、農場の肥料として農家に売られるか、伝統工芸品やら宝飾品やらの飾りとして、利用されるかが関の山じゃった。一応自然由来だからまとめて捨てても、放っておけばそのうち土へ還る。見た目的には色のついたガラス片に近いし、肥料としての活用以外に、使い道が限られていたんじゃ」
「ところがどっこい、ここ【精霊本舗】では、廃材を利用して趣味の魔法具作りを行うお祖父ちゃんがいるので、精霊結晶を属性ごとにある程度分別しています。お祖父ちゃんがよく持ち出す地水火風の精霊結晶と、それ以外の精霊結晶とがそもそも分離しているため、他の企業や研究所より、新現象が見つけやすい環境にあったわけです」
「とはいえ、質がバラバラの地水火風の精霊結晶ではいくら接触状態で回転運動を与えても、新現象は発生せん。それ故に今までわしらも気づかんかったわけじゃ。使える結晶を探して、滅茶苦茶かき混ぜとったがのう? それらしい現象は今の今まで見とらんかった。これは純粋にワウ子やルウ子の手柄と言えるのう」
「ええ。貧乏性と子ども達の遊び心が招いた新発見とも言えるわね? 国内外を問わず、この現象は未確認のモノよ。魔法や精霊関連の論文もできる限り調べたけど、類似現象に関する論文も皆無。魔法使いの一族として、千年以上の歴史を持つ魂斬家でも未発見の現象ってことは、他の家系でも未発見の可能性が高いし、何よりも、すでにこの新現象が見つかっていたら、今頃は精霊魔法だけを増幅する魔法増幅装置が出来てる筈だわ」
「確かに……ってことは、本当に世紀の発見と言えるわけか!」
命彦の目に歓喜の感情が宿った。
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