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1章 月が落ちた日

第4話 他国への侵略

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「……分かった、すぐにイルの協力に向かおう。レイシア、『王国騎士団』を城の前に集めておいてくれないか?」

「分かりました。『王国騎士団』の編成についてはどうされますか?」

 『ケルム王国』には『王国騎士団』という軍事組織が存在しており、前国王であった先代ケルム王の時から組織されていた軍だ。

 だが、レオハルトが即位した後、『征錬術師』と『魔術師』を相手にする為に新たに編成を行い、その結果、現在の『王国騎士団』の戦力は『ノード大陸』でもっとも強力と言われている『王都防衛軍』と並ぶほどのものとなっていた。

「他に協力要請を出している国はあるのか?」

「いえ、今のところはありません」

「なるほど……イルに攻め入っている戦力はどれくらいだ?」

「報告では二、三百人ほどだと聞いています」

 レイシアの言葉に、レオハルトはその表情を訝しげに変えていく。

 確かに、現在攻められているイルは小国であるが、それでも国を攻めるのに二、三百の兵などあり得ないはずだ。

 もし、たったそれだけの軍が攻めてきたとしても、イルには数千ほどの兵が存在している為、調印を強要出来るほどの圧力は無いはずだからだ。

 そんな疑問を抱いたレオハルトはその表情を険しくしながら小さく呟く。

「それはずいぶんと少ないな……」

「そのことは私も気になっていたのですが……」

「陽動の可能性もあるな……。だとすると、王国内の〝騎士団〟の戦力を割くのは避けたいところだな」

「留守の間にこちらに攻めてくる可能性もあると?イルの周辺に別の隊が待ち伏せしている可能性もありますね……」

「その場合、最初から私達を狙っているということになるか……」

 レオハルトが懸念していたのは、それだった。

 イルは周辺の国でも非常に小さく、戦力として見た場合に優先度は低い。

 だからこそ、数年もの間、大陸が二分される中でイルが中立状態を保っていても〝過激派〟は見逃していたのだ。

 その疑問はレイシアも同じだったようで、レオハルトの言葉を代弁するように口にしていた。

「……イルはこれまで〝過激派〟、〝穏健派〟のどちらにも同盟国の調印せず、中立を保ち続けていましたが……まさか、そんな国にまで攻め入るなんて……」

「〝過激派〟もここに来て、こちらの戦力増強に警戒を強めてきたということだろうな」

 レオハルトは国王に即位した後、『ケルム王国』内に魔術を取り入れることを決意し、戦力の増強を図っていた。

 その一つとして、レイシアの住んでいた『魔術師の国レヴィルド』以外に『ノード大陸』には小さな『魔術師』達の集落があり、彼らの保護と同時に志願者には『王国騎士団』での階級を与えていたのだ。

 そして、それらの戦力を用い『魔術師殲滅』を掲げる〝過激派〟に対し、〝穏健派〟の中心に立つ『ケルム王国』は〝解放軍〟という名を掲げて戦争終結の為に同盟国を次々に増やしていき、いまやこの『ノード大陸』で〝過激派〟と対立できるほどに巨大な存在となっていた。
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