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第25話 魔法の師匠③
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「―では、アシックくん、ユミィさん。今日から本格的にあなた達に魔法を教えていきます。準備は良いですか?」
「はい、お師匠様」
お師匠様を当主様や父上達から紹介された日の翌日、俺とユミィは早朝から『分家』の中庭へと来ていた。
さっそく気合を入れるべく、俺がお師匠様の言葉にしっかりと頷いてみせると、何やらお師匠様が小さく「コホン」と咳払いを返してくる。……何だろう?
俺とユミィが顔を見合わせていると、お師匠様はどこかバツの悪そうな顔を浮かべながらこんな事を口にしてきた。
「えーと……その前に、私の事は今後は『リリア先生』と呼んで頂けると助かります」
え? いきなり?
おかしいな、昨日はお師匠様って呼んでたのに……何かあったのかな?
「僕は構いませんけど……良いのですか?」
「はい。やはりこう……しっくり来ないので」
「でも、実際、これから魔法を教えてもらうお師匠様なわけですし、そちらの方が違和感は無いと思ったんですが……何かあったんですか?」
「え? い、いえ、別に何かあったというわけでは……ただ単に身分が高いわけでも無いのに、私が様付けで呼ばれる事に違和感があるというか……そ、それに名前で呼んでもらった方が他の人と混同しにくいし、良いと思ったんです」
まあ、確かに言われてみればそれはあるか。
今後、俺やユミィに新しいお師匠様が付くとは限らないけど、もしそうなったら全員が「お師匠様」となってしまうわけだしね。そういう意味では、確かに「お師匠様」って呼び方よりは「リリア先生」と呼んだ方が分かりやすいよな。
「分かりました。今後はリリア先生とお呼びする事にいたしますね」
「ええ、ぜひそうして頂けると助かります」
「では、リリア先生。本日は私とアシック様は何をすれば良いのでしょうか?」
「その事なんですが……まず、お二人は魔法学校の試験の基準についてはご存知ですか?」
そういえば、そういう話は全然知らないな……。
そもそも、前までは当主様からの圧力が強かったし、そこまで良い学校に通えるかどうかなんて分からなかったからね。でも、そうか……天才呼ばわりされてるリーヴが通う予定の学校だし、考えてみれば試験も相当なレベルなんだよな。
そんな風に考えていると、ふとユミィが不安げな表情で俺を見ていた事に気付く。
俺はユミィに微笑み返した後、リリア先生に続きを促すように言葉を投げ掛けた。
「実は魔法学校についての話もつい最近聞かされたばかりで、そういった話はさっぱりなんです。やはり相応の実力が必要とされるんでしょうか?」
「はい。入学時の試験では、初級魔法を一つ完全にマスターしている事が条件です。属性はどれでも構いません。ただ、それが出来ないと目指している魔法学校に入学する事は出来ません」
「やっぱり、『本家』の長男が通おうとしている学校なだけあってかなりすごい学校なんですね……ちなみに、マスターしている、というのはどれくらいのレベルなんでしょうか?」
「ええ、それは―」
俺の問い掛けにリリア先生は口をそこまで開いた後、ゆっくりと俺の方に視線を向け直す。……どうしたんだろう?
そして、首を横に振った後、言い掛けた言葉を否定するように声を返してきた。
「―いえ、マスターしているかどうかというのは説明が難しいので、教えていく過程で私が判断し、お伝えします」
なるほど……やっぱり、相当なレベルなんだろうな。
まあ、リーヴがそこまでのレベルに達しているかは知らないけど、リリア先生がここまで言うくらいだし、覚悟はしておいた方が良いだろう。
「分かりました。では、リリア先生、本日もよろしくお願いします」
「ええ、よろしくお願いします」
そうして、リリア先生による魔法の授業が始まった。
「はい、お師匠様」
お師匠様を当主様や父上達から紹介された日の翌日、俺とユミィは早朝から『分家』の中庭へと来ていた。
さっそく気合を入れるべく、俺がお師匠様の言葉にしっかりと頷いてみせると、何やらお師匠様が小さく「コホン」と咳払いを返してくる。……何だろう?
俺とユミィが顔を見合わせていると、お師匠様はどこかバツの悪そうな顔を浮かべながらこんな事を口にしてきた。
「えーと……その前に、私の事は今後は『リリア先生』と呼んで頂けると助かります」
え? いきなり?
おかしいな、昨日はお師匠様って呼んでたのに……何かあったのかな?
「僕は構いませんけど……良いのですか?」
「はい。やはりこう……しっくり来ないので」
「でも、実際、これから魔法を教えてもらうお師匠様なわけですし、そちらの方が違和感は無いと思ったんですが……何かあったんですか?」
「え? い、いえ、別に何かあったというわけでは……ただ単に身分が高いわけでも無いのに、私が様付けで呼ばれる事に違和感があるというか……そ、それに名前で呼んでもらった方が他の人と混同しにくいし、良いと思ったんです」
まあ、確かに言われてみればそれはあるか。
今後、俺やユミィに新しいお師匠様が付くとは限らないけど、もしそうなったら全員が「お師匠様」となってしまうわけだしね。そういう意味では、確かに「お師匠様」って呼び方よりは「リリア先生」と呼んだ方が分かりやすいよな。
「分かりました。今後はリリア先生とお呼びする事にいたしますね」
「ええ、ぜひそうして頂けると助かります」
「では、リリア先生。本日は私とアシック様は何をすれば良いのでしょうか?」
「その事なんですが……まず、お二人は魔法学校の試験の基準についてはご存知ですか?」
そういえば、そういう話は全然知らないな……。
そもそも、前までは当主様からの圧力が強かったし、そこまで良い学校に通えるかどうかなんて分からなかったからね。でも、そうか……天才呼ばわりされてるリーヴが通う予定の学校だし、考えてみれば試験も相当なレベルなんだよな。
そんな風に考えていると、ふとユミィが不安げな表情で俺を見ていた事に気付く。
俺はユミィに微笑み返した後、リリア先生に続きを促すように言葉を投げ掛けた。
「実は魔法学校についての話もつい最近聞かされたばかりで、そういった話はさっぱりなんです。やはり相応の実力が必要とされるんでしょうか?」
「はい。入学時の試験では、初級魔法を一つ完全にマスターしている事が条件です。属性はどれでも構いません。ただ、それが出来ないと目指している魔法学校に入学する事は出来ません」
「やっぱり、『本家』の長男が通おうとしている学校なだけあってかなりすごい学校なんですね……ちなみに、マスターしている、というのはどれくらいのレベルなんでしょうか?」
「ええ、それは―」
俺の問い掛けにリリア先生は口をそこまで開いた後、ゆっくりと俺の方に視線を向け直す。……どうしたんだろう?
そして、首を横に振った後、言い掛けた言葉を否定するように声を返してきた。
「―いえ、マスターしているかどうかというのは説明が難しいので、教えていく過程で私が判断し、お伝えします」
なるほど……やっぱり、相当なレベルなんだろうな。
まあ、リーヴがそこまでのレベルに達しているかは知らないけど、リリア先生がここまで言うくらいだし、覚悟はしておいた方が良いだろう。
「分かりました。では、リリア先生、本日もよろしくお願いします」
「ええ、よろしくお願いします」
そうして、リリア先生による魔法の授業が始まった。
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