5 / 28
第23話 魔法の師匠
しおりを挟む
「―では、まずお二人がどこまで魔法が使えるか、実際に確認させて頂いても良いですか?」
そう言って、中庭内でお師匠様はゆっくりと杖を構える。
互いに自己紹介を終えた俺達は『本家』の屋敷から離れ、お師匠様から魔法を教えてもらう為に『分家』にある中庭へと移動していた。
何故、わざわざ『本家』ではなく『分家』なのか?
答えは簡単、『本家』にはリーヴや奥様も居るし、今見られると学校入学まで隠す事が出来ないからだ。
それに、リーヴも奥様も街へ出掛ける事はあっても『分家』の屋敷に来る事はない。そういう事もあって、ここは魔法の勉強をするにはうってつけで、今後は『分家』の屋敷内にあるこの中庭で魔法を教えてもらう事になったのだ。
そんな中、俺はお師匠様の問い掛けにゆっくりと頷きながら答える。
「分かりました。ちなみに、魔法はそのままここで使って確認するのでしょうか?」
「そうですね……先程のお話では、お二人は初級魔法をすでに習得しているという事でしたよね?」
「はい、魔導書で記載されていた初級魔法であれば使えます」
「えっと……アシック様ほど安定していませんが、私も一応一通り使えます」
「いや、まあ……多少安定していなくても、その年齢で初級魔法を一つ二つ使えるどころか、一通り使えてしまう時点で驚きますけどね……。それはともかく、どうせなら的か何かあった方がやりやすいでしょう。それなら、例えばここにある木を的にして―」
そう言って、お師匠様が周りにゆっくりと視線を向けた時だった。
屋敷のすぐ近くに生えている木―厳密には、俺が雷の魔法で黒焦げにしてしまった木を見ると、どこか困惑したような表情で声を上げた。
「えっと……これは雷でも落ちたのですか?」
「あ、いや、それは……その……僕がやりました」
初めて魔法を使う時に危うく火事にしてしまいそうだった事を思い出し、少し恥ずかしさが出てくる。まあ、水の魔法を先に覚えていたし、実際に火事になる事は無かっただろうけど、それでも失敗は失敗だ。
すると、それを聞いたユミィとお師匠様がそれぞれ対照的な反応を見せた。
「さすがアシック様……! これほど大きな木をこんな黒焦げにしてしまうなんて……!」
「これをアシックくんが……? まだ十歳にも満たないのに……?」
「えっと……まあ……」
俺の手を掴んで笑顔で跳ねるユミィに対し、驚いて俺と黒焦げになった木を交互に見て来るお師匠様。なんか、悪い事をしたみたいで少し後ろめたい……いや、黒焦げにしたのは間違いなく悪い事なんだけどさ。
しかし、やがてお師匠様はゆっくりとため息を吐くと、小さく肩を竦めてみせる。
そして、片手で持っていた杖を軽く持ち直しながら俺へと近付きどこか疲れた様子でため息を吐いてみせると、慈愛に満ちたその目を俺へと向けてくる。
「……どうやら、私は知らずにすごい仕事を引き受けてしまったのかもしれませんね」
そうしてこぼした言葉と共に見せた笑顔は、とても魅力的で今まで感じた事のない年上女性の雰囲気に俺は少しドキッとしたのだった。
そう言って、中庭内でお師匠様はゆっくりと杖を構える。
互いに自己紹介を終えた俺達は『本家』の屋敷から離れ、お師匠様から魔法を教えてもらう為に『分家』にある中庭へと移動していた。
何故、わざわざ『本家』ではなく『分家』なのか?
答えは簡単、『本家』にはリーヴや奥様も居るし、今見られると学校入学まで隠す事が出来ないからだ。
それに、リーヴも奥様も街へ出掛ける事はあっても『分家』の屋敷に来る事はない。そういう事もあって、ここは魔法の勉強をするにはうってつけで、今後は『分家』の屋敷内にあるこの中庭で魔法を教えてもらう事になったのだ。
そんな中、俺はお師匠様の問い掛けにゆっくりと頷きながら答える。
「分かりました。ちなみに、魔法はそのままここで使って確認するのでしょうか?」
「そうですね……先程のお話では、お二人は初級魔法をすでに習得しているという事でしたよね?」
「はい、魔導書で記載されていた初級魔法であれば使えます」
「えっと……アシック様ほど安定していませんが、私も一応一通り使えます」
「いや、まあ……多少安定していなくても、その年齢で初級魔法を一つ二つ使えるどころか、一通り使えてしまう時点で驚きますけどね……。それはともかく、どうせなら的か何かあった方がやりやすいでしょう。それなら、例えばここにある木を的にして―」
そう言って、お師匠様が周りにゆっくりと視線を向けた時だった。
屋敷のすぐ近くに生えている木―厳密には、俺が雷の魔法で黒焦げにしてしまった木を見ると、どこか困惑したような表情で声を上げた。
「えっと……これは雷でも落ちたのですか?」
「あ、いや、それは……その……僕がやりました」
初めて魔法を使う時に危うく火事にしてしまいそうだった事を思い出し、少し恥ずかしさが出てくる。まあ、水の魔法を先に覚えていたし、実際に火事になる事は無かっただろうけど、それでも失敗は失敗だ。
すると、それを聞いたユミィとお師匠様がそれぞれ対照的な反応を見せた。
「さすがアシック様……! これほど大きな木をこんな黒焦げにしてしまうなんて……!」
「これをアシックくんが……? まだ十歳にも満たないのに……?」
「えっと……まあ……」
俺の手を掴んで笑顔で跳ねるユミィに対し、驚いて俺と黒焦げになった木を交互に見て来るお師匠様。なんか、悪い事をしたみたいで少し後ろめたい……いや、黒焦げにしたのは間違いなく悪い事なんだけどさ。
しかし、やがてお師匠様はゆっくりとため息を吐くと、小さく肩を竦めてみせる。
そして、片手で持っていた杖を軽く持ち直しながら俺へと近付きどこか疲れた様子でため息を吐いてみせると、慈愛に満ちたその目を俺へと向けてくる。
「……どうやら、私は知らずにすごい仕事を引き受けてしまったのかもしれませんね」
そうしてこぼした言葉と共に見せた笑顔は、とても魅力的で今まで感じた事のない年上女性の雰囲気に俺は少しドキッとしたのだった。
1
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
悪行貴族のはずれ息子【第1部 魔法講師編】
白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
★作者個人でAmazonにて自費出版中。Kindle電子書籍有料ランキング「SF・ホラー・ファンタジー」「児童書>読み物」1位にWランクイン!
★第2部はこちら↓
https://www.alphapolis.co.jp/novel/162178383/450916603
「お前みたいな無能は分家がお似合いだ」
幼い頃から魔法を使う事ができた本家の息子リーヴは、そうして魔法の才能がない分家の息子アシックをいつも笑っていた。
東にある小さな街を領地としている悪名高き貴族『ユーグ家』―古くからその街を統治している彼らの実態は酷いものだった。
本家の当主がまともに管理せず、領地は放置状態。にもかかわらず、税の徴収だけ行うことから人々から嫌悪され、さらに近年はその長男であるリーヴ・ユーグの悪名高さもそれに拍車をかけていた。
容姿端麗、文武両道…というのは他の貴族への印象を良くする為の表向きの顔。その実態は父親の権力を駆使して悪ガキを集め、街の人々を困らせて楽しむガキ大将のような人間だった。
悪知恵が働き、魔法も使え、取り巻き達と好き放題するリーヴを誰も止めることができず、人々は『ユーグ家』をやっかんでいた。
さらにリーヴ達は街の人間だけではなく、自分達の分家も馬鹿にしており、中でも分家の長男として生まれたアシック・ユーグを『無能』と呼んで嘲笑うのが日課だった。だが、努力することなく才能に溺れていたリーヴは気付いていなかった。
自分が無能と嘲笑っていたアシックが努力し続けた結果、書庫に眠っていた魔法を全て習得し終えていたことを。そして、本家よりも街の人間達から感心を向けられ、分家の力が強まっていることを。
やがて、リーヴがその事実に気付いた時にはもう遅かった。
アシックに追い抜かれた焦りから魔法を再び学び始めたが、今さら才能が実ることもなく二人の差は徐々に広まっていくばかり。
そんな中、リーヴの妹で『忌み子』として幽閉されていたユミィを助けたのを機に、アシックは本家を変えていってしまい…?
◇過去最高ランキング
・アルファポリス
男性HOTランキング:10位
・カクヨム
週間ランキング(総合):80位台
週間ランキング(異世界ファンタジー):43位
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
身バレしないように奴隷少女を買ってダンジョン配信させるが全部バレて俺がバズる
ぐうのすけ
ファンタジー
呪いを受けて冒険者を休業した俺は閃いた。
安い少女奴隷を購入し冒険者としてダンジョンに送り込みその様子を配信する。
そう、数年で美女になるであろう奴隷は配信で人気が出るはずだ。
もしそうならなくともダンジョンで魔物を狩らせれば稼ぎになる。
俺は偽装の仮面を持っている。
この魔道具があれば顔の認識を阻害し更に女の声に変える事が出来る。
身バレ対策しつつ収入を得られる。
だが現実は違った。
「ご主人様は男の人の匂いがします」
「こいつ面倒見良すぎじゃねwwwお母さんかよwwww」
俺の性別がバレ、身バレし、更には俺が金に困っていない事もバレて元英雄な事もバレた。
面倒見が良いためお母さんと呼ばれてネタにされるようになった。
おかしい、俺はそこまで配信していないのに奴隷より登録者数が伸びている。
思っていたのと違う!
俺の計画は破綻しバズっていく。
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達より強いジョブを手に入れて無双する!
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚。
ネット小説やファンタジー小説が好きな少年、洲河 慱(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りに雑談をしていると突然魔法陣が現れて光に包まれて…
幼馴染達と一緒に救世主召喚でテルシア王国に召喚され、幼馴染達は【勇者】【賢者】【剣聖】【聖女】という素晴らしいジョブを手に入れたけど、僕はそれ以上のジョブと多彩なスキルを手に入れた。
王宮からは、過去の勇者パーティと同じジョブを持つ幼馴染達が世界を救うのが掟と言われた。
なら僕は、夢にまで見たこの異世界で好きに生きる事を選び、幼馴染達とは別に行動する事に決めた。
自分のジョブとスキルを駆使して無双する、魔物と魔法が存在する異世界ファンタジー。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つ物なのかな?」で、慱が本来の力を手に入れた場合のもう1つのパラレルストーリー。
11月14日にHOT男性向け1位になりました。
応援、ありがとうございます!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる