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第23話 魔法の師匠

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「―では、まずお二人がどこまで魔法が使えるか、実際に確認させて頂いても良いですか?」

 そう言って、中庭内でお師匠様はゆっくりと杖を構える。

 互いに自己紹介を終えた俺達は『本家』の屋敷から離れ、お師匠様から魔法を教えてもらう為に『分家』にある中庭へと移動していた。

 何故、わざわざ『本家』ではなく『分家』なのか?

 答えは簡単、『本家』にはリーヴや奥様も居るし、今見られると学校入学まで隠す事が出来ないからだ。

 それに、リーヴも奥様も街へ出掛ける事はあっても『分家』の屋敷に来る事はない。そういう事もあって、ここは魔法の勉強をするにはうってつけで、今後は『分家』の屋敷内にあるこの中庭で魔法を教えてもらう事になったのだ。

 そんな中、俺はお師匠様の問い掛けにゆっくりと頷きながら答える。

「分かりました。ちなみに、魔法はそのままここで使って確認するのでしょうか?」

「そうですね……先程のお話では、お二人は初級魔法をすでに習得しているという事でしたよね?」

「はい、魔導書で記載されていた初級魔法であれば使えます」

「えっと……アシック様ほど安定していませんが、私も一応一通り使えます」

「いや、まあ……多少安定していなくても、その年齢で初級魔法を一つ二つ使えるどころか、一通り使えてしまう時点で驚きますけどね……。それはともかく、どうせなら的か何かあった方がやりやすいでしょう。それなら、例えばここにある木を的にして―」

 そう言って、お師匠様が周りにゆっくりと視線を向けた時だった。

 屋敷のすぐ近くに生えている木―厳密には、俺が雷の魔法で黒焦げにしてしまった木を見ると、どこか困惑したような表情で声を上げた。

「えっと……これは雷でも落ちたのですか?」

「あ、いや、それは……その……僕がやりました」

 初めて魔法を使う時に危うく火事にしてしまいそうだった事を思い出し、少し恥ずかしさが出てくる。まあ、水の魔法を先に覚えていたし、実際に火事になる事は無かっただろうけど、それでも失敗は失敗だ。

 すると、それを聞いたユミィとお師匠様がそれぞれ対照的な反応を見せた。

「さすがアシック様……! これほど大きな木をこんな黒焦げにしてしまうなんて……!」

「これをアシックくんが……? まだ十歳にも満たないのに……?」

「えっと……まあ……」

 俺の手を掴んで笑顔で跳ねるユミィに対し、驚いて俺と黒焦げになった木を交互に見て来るお師匠様。なんか、悪い事をしたみたいで少し後ろめたい……いや、黒焦げにしたのは間違いなく悪い事なんだけどさ。

 しかし、やがてお師匠様はゆっくりとため息を吐くと、小さく肩を竦めてみせる。

 そして、片手で持っていた杖を軽く持ち直しながら俺へと近付きどこか疲れた様子でため息を吐いてみせると、慈愛に満ちたその目を俺へと向けてくる。

「……どうやら、私は知らずにすごい仕事を引き受けてしまったのかもしれませんね」

 そうしてこぼした言葉と共に見せた笑顔は、とても魅力的で今まで感じた事のない年上女性の雰囲気に俺は少しドキッとしたのだった。
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