3 / 3
3.王子
しおりを挟む
衛兵の言葉にアラン様は眉をひそめる。……あぁ、私はアラン様にも嫌われてしまったんだろうか。
もう何を言っても、言い訳のようにしか聞こえないだろう。
諦めた私が肩を落として地面へと目を向けると、そんな私の肩に優しく手が置かれた。
「イーファ、大丈夫かい?」
「アラン様……?」
「可哀想に……せっかくの綺麗なドレスが台無しだ。大の男が寄ってたかって女性に暴力を働くとは、許せる事ではない」
「あ、あの……私は……」
「ん? どうした?」
私の言葉に、いつものような軽い調子で返してくれるアラン様。
パーティで挨拶する時と変わらず笑みを向けてくれる彼に思わず涙が出そうになっていると、彼の後ろから衛兵達の声が上がってきた。
「あ、アラン様! すぐにその者から離れて下さい! そこの女は、ブレン様と婚姻中にもかかわらず、他の男に手を出すような汚らわしい女なのです! 『聖女』の力を使い、我が国を乗っ取ろうと画策しておるやもしれぬのですから!」
「そ、そのような事、考えた事もありません!」
「黙れ! ブレン様からも最悪の場合、切り捨てて構わないと言われているのだ! そのような命令を婚約相手であるブレン様から出されるなど、相当な事に違いない!」
「お、おい! それは極秘扱いだろ!」
「そんな……ブレン様が……?」
衛兵達の声に私の視界が真っ暗になっていく。あの方は妹との浮気を知られない為に私を消そうとしている……?
あまりにも酷い現実に打ちのめされた私がカタカタと震えていると、アラン様がそっと手を差し伸べてくれた。
驚く私に彼は軽く微笑んでみせると、ゆっくりと立ち上がり衛兵達の方へと声を上げる。
「……その話は本当か?」
「あ、え?」
「彼女が国を乗っ取ると画策し、それに危機感を抱いたブレン殿が彼女を始末しろと……そう命令したのかと聞いている」
「そ、そうでございます! 我々はあくまでもブレン様に危険が及ばぬ為、剣を抜いただけに過ぎず―」
「無論、その証拠は上がっているのだろうな?」
「はい……? 証拠……ですか?」
アラン様の言葉に衛兵達が顔を見合わせると、私の近くに居たアラン様は近くで待機していた護衛に視線を向ける。そして、いつものような甘い顔ではなく、とても鋭い視線と声を衛兵達へと向けた。
「彼女がそのような野蛮な事をするという事実の確認が出来ているのかと聞いたのだ。剣を構えた以上、それだけの証拠も集まっているのだろう?」
「い、いえ……そ、それは……」
「よもや、証拠も無く彼女を処刑しようとしていたと? 例え命令であるとはいえ、この国では無用な殺生は禁じられているはずだ」
「お、お許し下さい! わ、我々はブレン様の命令で仕方なく―」
「では、そのブレン殿の前にお前達を連行し、真実を暴かせてもらおうか」
「あ、アラン陛下! お、お許しを―」
「黙れ。場合によってはお前達にも罰を下す……連れて行け」
もう何を言っても、言い訳のようにしか聞こえないだろう。
諦めた私が肩を落として地面へと目を向けると、そんな私の肩に優しく手が置かれた。
「イーファ、大丈夫かい?」
「アラン様……?」
「可哀想に……せっかくの綺麗なドレスが台無しだ。大の男が寄ってたかって女性に暴力を働くとは、許せる事ではない」
「あ、あの……私は……」
「ん? どうした?」
私の言葉に、いつものような軽い調子で返してくれるアラン様。
パーティで挨拶する時と変わらず笑みを向けてくれる彼に思わず涙が出そうになっていると、彼の後ろから衛兵達の声が上がってきた。
「あ、アラン様! すぐにその者から離れて下さい! そこの女は、ブレン様と婚姻中にもかかわらず、他の男に手を出すような汚らわしい女なのです! 『聖女』の力を使い、我が国を乗っ取ろうと画策しておるやもしれぬのですから!」
「そ、そのような事、考えた事もありません!」
「黙れ! ブレン様からも最悪の場合、切り捨てて構わないと言われているのだ! そのような命令を婚約相手であるブレン様から出されるなど、相当な事に違いない!」
「お、おい! それは極秘扱いだろ!」
「そんな……ブレン様が……?」
衛兵達の声に私の視界が真っ暗になっていく。あの方は妹との浮気を知られない為に私を消そうとしている……?
あまりにも酷い現実に打ちのめされた私がカタカタと震えていると、アラン様がそっと手を差し伸べてくれた。
驚く私に彼は軽く微笑んでみせると、ゆっくりと立ち上がり衛兵達の方へと声を上げる。
「……その話は本当か?」
「あ、え?」
「彼女が国を乗っ取ると画策し、それに危機感を抱いたブレン殿が彼女を始末しろと……そう命令したのかと聞いている」
「そ、そうでございます! 我々はあくまでもブレン様に危険が及ばぬ為、剣を抜いただけに過ぎず―」
「無論、その証拠は上がっているのだろうな?」
「はい……? 証拠……ですか?」
アラン様の言葉に衛兵達が顔を見合わせると、私の近くに居たアラン様は近くで待機していた護衛に視線を向ける。そして、いつものような甘い顔ではなく、とても鋭い視線と声を衛兵達へと向けた。
「彼女がそのような野蛮な事をするという事実の確認が出来ているのかと聞いたのだ。剣を構えた以上、それだけの証拠も集まっているのだろう?」
「い、いえ……そ、それは……」
「よもや、証拠も無く彼女を処刑しようとしていたと? 例え命令であるとはいえ、この国では無用な殺生は禁じられているはずだ」
「お、お許し下さい! わ、我々はブレン様の命令で仕方なく―」
「では、そのブレン殿の前にお前達を連行し、真実を暴かせてもらおうか」
「あ、アラン陛下! お、お許しを―」
「黙れ。場合によってはお前達にも罰を下す……連れて行け」
10
お気に入りに追加
71
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
私の味方は王子殿下とそのご家族だけでした。
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のコーデリア・アレイオンはミストマ・ストライド公爵から婚約破棄をされた。
婚約破棄はコーデリアの家族を失望させ、彼女は責められることになる。
「私はアレイオン家には必要のない存在……将来は修道院でしょうか」
「それならば、私の元へ来ないか?」
コーデリアは幼馴染の王子殿下シムルグ・フォスターに救われることになる。
彼女の味方は王家のみとなったが、その後ろ盾は半端ないほどに大きかった。
【完結】幼馴染に告白されたと勘違いした婚約者は、婚約破棄を申し込んできました
よどら文鳥
恋愛
お茶会での出来事。
突然、ローズは、どうしようもない婚約者のドドンガから婚約破棄を言い渡される。
「俺の幼馴染であるマラリアに、『一緒にいれたら幸せだね』って、さっき言われたんだ。俺は告白された。小さい頃から好きだった相手に言われたら居ても立ってもいられなくて……」
マラリアはローズの親友でもあるから、ローズにとって信じられないことだった。
あなたの愛が正しいわ
来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~
夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。
一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。
「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」
[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
元婚約者は入れ替わった姉を罵倒していたことを知りません
ルイス
恋愛
有名な貴族学院の卒業パーティーで婚約破棄をされたのは、伯爵令嬢のミシェル・ロートレックだ。
婚約破棄をした相手は侯爵令息のディアス・カンタールだ。ディアスは別の女性と婚約するからと言う身勝手な理由で婚約破棄を言い渡したのだった。
その後、ミシェルは双子の姉であるシリアに全てを話すことになる。
怒りを覚えたシリアはミシェルに自分と入れ替わってディアスに近づく作戦を打ち明けるのだった。
さて……ディアスは出会った彼女を妹のミシェルと間違えてしまい、罵倒三昧になるのだがシリアは王子殿下と婚約している事実を彼は知らなかった……。
私の主張は少しも聞いてくださらないのですね
四季
恋愛
王女マリエラは、婚約者のブラウン王子から、突然婚約破棄を告げられてしまう。
隣国の王族である二人の戦いはやがて大きな渦となり、両国の関係性をも変えてしまうことになって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる