怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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悪魔と狸と時々探偵

彼女のやる気は眠りについて

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「ここも違うみたいだな」
 二か所目の神社を探し終わった後ひとねはため息をついた。
「疲れた。小腹も空いたし休憩にしよう」
 そう言って迷いなく道を進む。これは……
「よし。ここがいい。ここにしよう」
 ひとねは外にあるメニューすら見ずに店の扉に手をかけた。
「ひとね、ここではどんな甘味を食べるんだ?」
「そりゃあもちろん一日十個限定の特別スイーツだ! 朝から仕込んでいるから昼に売られるモノで、由来というのがここの人は元々鞄職人だったらしくて……」
 破顔していたひとねは少し止まってから冷静な顔になる。
「……みたいなものが売っていたりしたらいいなー。とか?」
「そうかそうか」
 これが目的かよこの野郎。
「まあとりあえず入ろう」
 ひとねはそう言って一度離していた手をまた扉に……
「……ん?」
「どうしたひとね」
「開いていない」
「その店なら三日ほど前からなんかいないわよー」
 たまたま居たおばちゃんが通り過ぎながらひとねに絶望を与えて行った。
「通りで並んでいる人がいないと思った。帰るぞ」
「ちょ、ちょっと! 僕の身体は!」
 今まで黙っていた男が声を上げた。男を少しの間見つめたひとねは何度目か分からないため息をついた。
「ああ……まあ、やるか……うん」
「や……」
 やる気がねぇ!!

 *

「おまえも探せよー」
「さがしているさ」
 返って来たのは土に絵を描きながらのやる気ない返事。お前はあの男の人が土の中に埋まっているとでも思っているのか。それこそ大事件じゃねぇか。
「僕の身体はどこに……」
 石に座ってうなだれる男……お前も探せよ。
「ほどけたー」
「靴紐くらい自分で結べ」
「違う、髪が」
「……ああもう!」
 ひとねのポニーテールは凄まじく長く、ポニーというよりドラゴンテイルみたいな感じになっているのだ。
 基本的に座っている地下図書館内では問題ないのだが、外に出ると地面に擦ってしまうくらいなのでお団子ヘアーにしているのだ。
 団子にしてもなお残るからお団子ポニーにしているのだが……案外できるものなのだな。
「痛い。もう適当でいいから」
「よくねぇよ」
 会話とかでもわかる通りやっているのは俺だ。
「ほい、出来上がり」
 少し動いたくらいでほどけてしまうのならまだダメだな。また勉強をし直さなければ……いや、まてまてなぜ俺が勉強を……
「いや、違うな」
 今はそれどころではない。問題は狸寝入りだ。
「ひとね、本当に神社はここで最後なのか?」
「ああ」
「じゃあ寺の方も見て回るか?」
「まあ、寺は一つみたいだし……まあ、嫌々」
 嫌々なのかよ。
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