怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

文字の大きさ
上 下
131 / 150
ロスト・ホーム

怪奇・探偵

しおりを挟む
「健斗先輩、昨日の帰りは何処かに寄りましたか?」
「いや、そのまま帰った。今日まで家は出ていない」
「朝の用事を伺ってもよろしいですか?」
「通販の支払いがあってな、銀行に行ってた」
「なるほど……」
 森当くんは少しの間考えた後「うん」と自身で納得する。
「僕の行動ルートと被っている所は無いようですね」
 十二時間という制約のある以上発生は今日だろう。加えて森当くんとの行動被りは無し。ならば……
「この学校の中って事か」
「はい、そうなるでしょう。細かく言えば前の道路とかもでしょうけど」
「森当くんはそのまま部室に?」
「はい、そうですね。健斗先輩もですか?」
「ああ……いや、トイレに寄った。小の方」
「あっ、そういえば僕も行きました」
「じゃあ道路はもちろんとして共通して通った扉は……」
 まず校門、それから校舎入り口。
 道中にある一階のトイレの入り口。
 防火扉のある場所も扉とするならばそれも一箇所。
 図書室及び部室である図書司書室。
「……くらいか?」
「最後二つは無いですね。もしそこならば僕が出て行った時点で解決していて健斗先輩は影響を受けていない筈です」
「あー、そうか。二回通った所は除外できるのか」
 そうなれば防火扉も除外となる。
 残りは三つ。ならば推理する必要もないだろう。
「とりあえずトイレから回ってみるか」
「はい、そうしましょう」

 *

「さて、結果を見るにはもう一度二人と会わないとだけど」
「失敗だったら気まずいですよね……他の二つも回ってからにしませんか?」
「そうしよう」
 トイレに入ってすぐ出るという奇妙な動作をして廊下を歩く。
 このまま校門に向かおうかというところで後ろからパタパタと足音が響いてきた。
「あ、あの!」
 馴染みのある声に反応して森当くんと共に振り返る。そこにいたのは下里くだり、もしかして今ので成功だったのだろうか。
「どうした?」
「その、ですね……」
 彼女しては歯切れが悪い。本当に下里くだりなのだろうか?
 俺たちの視線を目一杯受けた下里は躊躇を捨てた。
「あの、もしわたしが変な事言ってるなと思ったら『変なやつがいるぞー!』ってオオカミ少年のように走って逃げてくださいね」
 あ、下里だわ。多分記憶が戻ってないからこうなってるだけだわ。
「大丈夫、言ってみて」
 森当くんも頷いたのを見て下里は再度口を開く。
「その、二人とも……怪奇現象に巻き込まれてませんか?」
「巻き込まれてるけど……」
「やっぱり! わたしたちでよければ相談に乗りますよ」
 恐らく下里の記憶は戻っていない。でも怪奇現象を知る下里は俺たち二人を心配してきてくれたのだ。そのおかげで根本的な事に気づけた。
「そうか、怪奇探偵だ」
 怪奇現象に対して切るべき、頼るべきは怪奇探偵なのだ。たとえ俺たちの事を忘れていようとひとねは怪奇探偵、ならば彼女に依頼すればいいのだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

雨の向こう側

サツキユキオ
ミステリー
山奥の保養所で行われるヨガの断食教室に参加した亀山佑月(かめやまゆづき)。他の参加者6人と共に独自ルールに支配された中での共同生活が始まるが────。

Arachne 2 ~激闘! 敵はタレイアにあり~

ミステリー
学習支援サイト「Arachne」でのアルバイトを経て、正社員に採用された鳥辺野ソラ。今度は彼自身がアルバイトスタッフを指導する立場となる。さっそく募集をかけてみたところ、面接に現れたのは金髪ギャルの女子高生だった! 年下の女性の扱いに苦戦しつつ、自身の業務にも奮闘するソラ。そんな折、下世話なゴシップ記事を書く週刊誌「タレイア」に仲間が狙われるようになって……? やけに情報通な記者の正体とは? なぜアラクネをターゲットにするのか? 日常に沸き起こるトラブルを解決しながら、大きな謎を解いていく連作短編集ミステリ。 ※前作「Arachne ~君のために垂らす蜘蛛の糸~」の続編です。  前作を読んでいなくても楽しめるように書いたつもりですが、こちらを先に読んだ場合、前作のネタバレを踏むことになります。  前作の方もネタバレなしで楽しみたい、という場合は順番にお読みください。  作者としてはどちらから読んでいただいても嬉しいです! 第8回ホラー・ミステリー小説大賞 にエントリー中! 毎日投稿していく予定ですので、ぜひお気に入りボタンを押してお待ちください! ▼全話統合版(完結済)PDFはこちら https://ashikamosei.booth.pm/items/6627473 一気に読みたい、DLしてオフラインで読みたい、という方はご利用ください。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...