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ロスト・ホーム
怪奇・探偵
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「健斗先輩、昨日の帰りは何処かに寄りましたか?」
「いや、そのまま帰った。今日まで家は出ていない」
「朝の用事を伺ってもよろしいですか?」
「通販の支払いがあってな、銀行に行ってた」
「なるほど……」
森当くんは少しの間考えた後「うん」と自身で納得する。
「僕の行動ルートと被っている所は無いようですね」
十二時間という制約のある以上発生は今日だろう。加えて森当くんとの行動被りは無し。ならば……
「この学校の中って事か」
「はい、そうなるでしょう。細かく言えば前の道路とかもでしょうけど」
「森当くんはそのまま部室に?」
「はい、そうですね。健斗先輩もですか?」
「ああ……いや、トイレに寄った。小の方」
「あっ、そういえば僕も行きました」
「じゃあ道路はもちろんとして共通して通った扉は……」
まず校門、それから校舎入り口。
道中にある一階のトイレの入り口。
防火扉のある場所も扉とするならばそれも一箇所。
図書室及び部室である図書司書室。
「……くらいか?」
「最後二つは無いですね。もしそこならば僕が出て行った時点で解決していて健斗先輩は影響を受けていない筈です」
「あー、そうか。二回通った所は除外できるのか」
そうなれば防火扉も除外となる。
残りは三つ。ならば推理する必要もないだろう。
「とりあえずトイレから回ってみるか」
「はい、そうしましょう」
*
「さて、結果を見るにはもう一度二人と会わないとだけど」
「失敗だったら気まずいですよね……他の二つも回ってからにしませんか?」
「そうしよう」
トイレに入ってすぐ出るという奇妙な動作をして廊下を歩く。
このまま校門に向かおうかというところで後ろからパタパタと足音が響いてきた。
「あ、あの!」
馴染みのある声に反応して森当くんと共に振り返る。そこにいたのは下里くだり、もしかして今ので成功だったのだろうか。
「どうした?」
「その、ですね……」
彼女しては歯切れが悪い。本当に下里くだりなのだろうか?
俺たちの視線を目一杯受けた下里は躊躇を捨てた。
「あの、もしわたしが変な事言ってるなと思ったら『変なやつがいるぞー!』ってオオカミ少年のように走って逃げてくださいね」
あ、下里だわ。多分記憶が戻ってないからこうなってるだけだわ。
「大丈夫、言ってみて」
森当くんも頷いたのを見て下里は再度口を開く。
「その、二人とも……怪奇現象に巻き込まれてませんか?」
「巻き込まれてるけど……」
「やっぱり! わたしたちでよければ相談に乗りますよ」
恐らく下里の記憶は戻っていない。でも怪奇現象を知る下里は俺たち二人を心配してきてくれたのだ。そのおかげで根本的な事に気づけた。
「そうか、怪奇探偵だ」
怪奇現象に対して切るべき、頼るべきは怪奇探偵なのだ。たとえ俺たちの事を忘れていようとひとねは怪奇探偵、ならば彼女に依頼すればいいのだ。
「いや、そのまま帰った。今日まで家は出ていない」
「朝の用事を伺ってもよろしいですか?」
「通販の支払いがあってな、銀行に行ってた」
「なるほど……」
森当くんは少しの間考えた後「うん」と自身で納得する。
「僕の行動ルートと被っている所は無いようですね」
十二時間という制約のある以上発生は今日だろう。加えて森当くんとの行動被りは無し。ならば……
「この学校の中って事か」
「はい、そうなるでしょう。細かく言えば前の道路とかもでしょうけど」
「森当くんはそのまま部室に?」
「はい、そうですね。健斗先輩もですか?」
「ああ……いや、トイレに寄った。小の方」
「あっ、そういえば僕も行きました」
「じゃあ道路はもちろんとして共通して通った扉は……」
まず校門、それから校舎入り口。
道中にある一階のトイレの入り口。
防火扉のある場所も扉とするならばそれも一箇所。
図書室及び部室である図書司書室。
「……くらいか?」
「最後二つは無いですね。もしそこならば僕が出て行った時点で解決していて健斗先輩は影響を受けていない筈です」
「あー、そうか。二回通った所は除外できるのか」
そうなれば防火扉も除外となる。
残りは三つ。ならば推理する必要もないだろう。
「とりあえずトイレから回ってみるか」
「はい、そうしましょう」
*
「さて、結果を見るにはもう一度二人と会わないとだけど」
「失敗だったら気まずいですよね……他の二つも回ってからにしませんか?」
「そうしよう」
トイレに入ってすぐ出るという奇妙な動作をして廊下を歩く。
このまま校門に向かおうかというところで後ろからパタパタと足音が響いてきた。
「あ、あの!」
馴染みのある声に反応して森当くんと共に振り返る。そこにいたのは下里くだり、もしかして今ので成功だったのだろうか。
「どうした?」
「その、ですね……」
彼女しては歯切れが悪い。本当に下里くだりなのだろうか?
俺たちの視線を目一杯受けた下里は躊躇を捨てた。
「あの、もしわたしが変な事言ってるなと思ったら『変なやつがいるぞー!』ってオオカミ少年のように走って逃げてくださいね」
あ、下里だわ。多分記憶が戻ってないからこうなってるだけだわ。
「大丈夫、言ってみて」
森当くんも頷いたのを見て下里は再度口を開く。
「その、二人とも……怪奇現象に巻き込まれてませんか?」
「巻き込まれてるけど……」
「やっぱり! わたしたちでよければ相談に乗りますよ」
恐らく下里の記憶は戻っていない。でも怪奇現象を知る下里は俺たち二人を心配してきてくれたのだ。そのおかげで根本的な事に気づけた。
「そうか、怪奇探偵だ」
怪奇現象に対して切るべき、頼るべきは怪奇探偵なのだ。たとえ俺たちの事を忘れていようとひとねは怪奇探偵、ならば彼女に依頼すればいいのだ。
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