怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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最果ての鍵

宝箱の中

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 俺たちは再び鍵捜索に勤しんでいた。数分したところでまたもや飽きて来たらしい下里が倉庫の扉を力で開こうとしていた。
「無駄な事してないで探せよ」
「この世に無駄な事なんて無いんですよぉー!」
 下里が全体重をかけても扉はびくともしない。無駄に疲れた下里は「むぅりー」とドアにもたれかかる。
「……あ!」
「次はどうした」
「鍵見つけました!」
「本当か!」
 顔を明るくした俺たちを見て下里はどこかバツが悪そうに「いえ、その、見つけたんですけど……」と扉の向こうを指す。
「まさか……」
「はい、倉庫の机の上にあります」

 *

「扉は開かず鍵は中……ダメじゃん」
「ミドせんせぇ! スペアキーとか無いんですか!」
「あったらお前ら呼んでねぇよ」
 まあ、道理ではある。堂々としている意味はわからないが。
 最早探すと言う行為も無駄になる。何か解決法が無いかと四人でうんうんと唸る。

「職員室にもう一つあるのでは無いですか?」
 声を出した森当くんに視線が集まる。
「下校時間終了後の見回りに使っている、階数ごと全てのスペアキーがついた板が職員室にあるのでは?」
「それだ! ナイスだよジエーくん!」
「いや、ダメだ」
 早速職員室に向かおうとした下里を止めたのは緑野であった。
「何がダメなんです?」
「確かに鍵はある。だがその鍵では開かないんだ」
「……?」
「いや、その、な。昔無くした事があってだな、その時に……」
「スペアキーを盗んだと」
「拝借しただけだ。そんで代わりに似たような鍵を付けた、確か旧校舎の時のやつ」
「それだとバレるのではありませんか? 見回りの後は鍵を閉める筈です」
「鍵を閉めるのは防犯のためだ、この教室の鍵さえ閉まってれば倉庫の鍵が開いていようと関係ない」
「では、倉庫と外を繋ぐ鍵は?」
「外と繋がる扉は災害の時のために内側から開ける鍵なんだ、外から見回りする偏屈はあないからバレない」
 なるほど、全く関心しないが理には叶っている。ほんと関心しないけど。
「ちなみに、どれくらい騙してます?」
「お前ら全員が中学の頃から」
「ホントあれですねミドせん、ホントアレです」
 下里の責めを華麗に流し、堂々とした態度で緑野は宣言する。
「ま、鍵は宝箱の中って事だ」
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