怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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最果ての鍵

最後の閉め方

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「開かずの間」
 ひとねはこの怪奇現象をそう呼んだ。
「言葉通りに受け取るのであれば何かしら悪い物を外に出さない為に開く機能を封じられた扉という事になりますが……」
「ああ、だが今回はそんな不穏な物じゃない。ただ扉を封じて開かずの間にしてしまうというだけ、それだけの怪奇現象だ」
「開かずの間、ですか。具体的には?」
「閉じた手段で扉が開かなくなる」
「なるほど、では……」
「いや、すまん、待ってくれ」
 どんどんと進んでいく二人を静止する。森当くんがひとねの話相手になると行間が省略されすぎていけない。
「少し前から思ってたがよくひとねの話についていけるな」
「僕も健斗先輩に同じ印象を抱いてますよ。こういうミステリの話以外ではまさに以心伝心ではありませんか」
「それはまあ、長い付き合いだからな」
 この場合年月ではなく共にした時間となるが。
 俺の反論を受けた森当くんは柔らかなイケメン笑顔を浮かべる。
「僕もそれと同じ事ですよミステリ愛好家ですから、ミステリとの付き合いは長いのです」
「わたし怪奇現象の話はミステリじゃなくてホラーとかファンタジーな気がするけど」
「まあ、そこは個人の定義になりますね。僕にとってはコレもミステリ、推理小説だけでなく神秘や不思議だってミステリというでしょう?」
「ああ、ワールド不思議発見! たまに見る」
「ま、ミステリはともかくだ。ひとね、俺たちにも分かるよう教えてくれ」
「そうだね。繰り返しになるがこの扉は『閉じた手段で開かなくなる』さて、今回閉じた手段はなんだろうか」
 ひとねの問いかけにいち早く手を挙げたのは下里。
「鍵!」
「鍵はかけられてないって話だっただろう」
「あ、そっか。なら……ドアノブ?」
「半分正解」
「むむう……」
 森当くんは分かっているだろうから次に考えるのは俺だろう。
 ひとねは『少し』でも無く『大方』でも無く『半分正解』だといった。こう言う時は極力正確に話そうとするひとねの事だ、意味がある気がする。
 ドアノブの半分……鍵を一部と考えるわけではないだろう。ならばドアノブを回すと引っ込むアレか? それでは半分とは言わないだろう。
「…………」
 ドアノブは目の前に見えるこのドアノブで間違いないだろう。それが半分ならば……
「こちら側のドアノブからは開かない、か?」
「ああ、その通り」
「なら向こう側からなら開くって事?」
「そうなるね。ま、密室相手にそれは無意味だけど」
「ううん、密室じゃないよ」
 下里は扉の上半分を占めるガラスから部屋を覗く。
「奥の方に扉があるの、位置的に……裏門の近くじゃないかな?」
 答えを求めるべく四人で静かな緑野の方を見る。一応話は聞いていたらしく、首を左右に振る。
「ダメだ、鍵がかかってる」
「あっちの鍵はもらってないんです?」
「いや、貰った」
「なら……」
「無くした倉庫の鍵と一緒に付いてる。二つも別に持つのが面倒で二重カン……キーホルダーに付いてるあの輪っかで繋がってるんだ」
「つまり、端的に言うと……?」
「ああ、無くした」
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