怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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最果ての鍵

鍵の役割

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「ポケットの中も♪ 机の中も♪ 探したけれど見つからないよぅ♪ まだ探さなきゃダメですか?」
「ダメに決まってるだろ」
 替え歌に諦めを混ぜてきた下里にツッコミを入れ、部屋を見渡す。
 あらかた探し尽くした感がある。部屋を四つに分けて探したので誰かがサボっていたら分からないが、エアコンの故障という危機的状況を前に手を抜く奴はいないだろう。

 それでも飽きて来たらしい下里は「最悪開けば一時解決では?」と言って倉庫のドアノブを回してドアをガタガタと揺らす。
「やっぱり開かないですねー」
「いや、おかしいだろ」
「どうかしましたか?」
 俺の否定を聞いて森当くんとひとねがこちらに来た。
 俺は下里と位置を交代し、やっていたように扉を開こうとする。
 ドアノブを回し、ドアを引く。もちろん扉は開かない。
「な、おかしいだろ?」
「確かにおかしいね」
 ひとねに向けて出したパスは森当くんにも届いたらしい、隣でうんうんと頷いている。
「ちょっとー! わたしだけ分かんないんですけど! 万人に分かるよう説明責任を果たせー!」
 万人にというのは難しいが下里になら……少なくともこのタイプの扉の鍵を閉めた事がある人になら説明できるだろう。

 前述の通りこの扉の鍵はドアノブについている。ドアノブについている鍵が全てソレかは知らないけれど少なくとも我が校の鍵は共通。
「下里、この扉の鍵をかけるとどうなる?」
「扉が開かなくなります」
「どういう風に?」
「……どーいう事です?」
「教室の入口ならスライド出来なくなる。ここはどうなる」
「えと……あっ! ドアノブが回らなくなり……ます?」
 言っている間に下里も気づいたらしい。
 そう、鍵が閉まっているならばドアノブは回らない。しかし今この扉は『ドアノブが回るが扉は開かない』状態なのだ。

「……なんででしょうね」
「あ、何か引っかかってるとか?」
「押しなら可能性はあるかもだが引きだからな」
 念のために確認したが隙間に引っ掛かりも無い。
「少し失礼します」
 森当くんが俺と位置を交代し、同じように扉を開こうとする。もちろん開かない。
 その後、ドアノブを回したままその横、ドアの隙間を見ている。
「ドアノブの空回りでもないですね。引っかけはドアノブを回せば解除されています」
「開くはずなのに開かない?」
 まさに奇妙奇天烈奇怪。と、いうか
「ひとね、これは……」
 全員の視線を受けたひとねはスマホから目を離す。
「ああ、怪奇現象だろうね」
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