怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

文字の大きさ
上 下
119 / 150
最果ての鍵

鍵の役割

しおりを挟む
「ポケットの中も♪ 机の中も♪ 探したけれど見つからないよぅ♪ まだ探さなきゃダメですか?」
「ダメに決まってるだろ」
 替え歌に諦めを混ぜてきた下里にツッコミを入れ、部屋を見渡す。
 あらかた探し尽くした感がある。部屋を四つに分けて探したので誰かがサボっていたら分からないが、エアコンの故障という危機的状況を前に手を抜く奴はいないだろう。

 それでも飽きて来たらしい下里は「最悪開けば一時解決では?」と言って倉庫のドアノブを回してドアをガタガタと揺らす。
「やっぱり開かないですねー」
「いや、おかしいだろ」
「どうかしましたか?」
 俺の否定を聞いて森当くんとひとねがこちらに来た。
 俺は下里と位置を交代し、やっていたように扉を開こうとする。
 ドアノブを回し、ドアを引く。もちろん扉は開かない。
「な、おかしいだろ?」
「確かにおかしいね」
 ひとねに向けて出したパスは森当くんにも届いたらしい、隣でうんうんと頷いている。
「ちょっとー! わたしだけ分かんないんですけど! 万人に分かるよう説明責任を果たせー!」
 万人にというのは難しいが下里になら……少なくともこのタイプの扉の鍵を閉めた事がある人になら説明できるだろう。

 前述の通りこの扉の鍵はドアノブについている。ドアノブについている鍵が全てソレかは知らないけれど少なくとも我が校の鍵は共通。
「下里、この扉の鍵をかけるとどうなる?」
「扉が開かなくなります」
「どういう風に?」
「……どーいう事です?」
「教室の入口ならスライド出来なくなる。ここはどうなる」
「えと……あっ! ドアノブが回らなくなり……ます?」
 言っている間に下里も気づいたらしい。
 そう、鍵が閉まっているならばドアノブは回らない。しかし今この扉は『ドアノブが回るが扉は開かない』状態なのだ。

「……なんででしょうね」
「あ、何か引っかかってるとか?」
「押しなら可能性はあるかもだが引きだからな」
 念のために確認したが隙間に引っ掛かりも無い。
「少し失礼します」
 森当くんが俺と位置を交代し、同じように扉を開こうとする。もちろん開かない。
 その後、ドアノブを回したままその横、ドアの隙間を見ている。
「ドアノブの空回りでもないですね。引っかけはドアノブを回せば解除されています」
「開くはずなのに開かない?」
 まさに奇妙奇天烈奇怪。と、いうか
「ひとね、これは……」
 全員の視線を受けたひとねはスマホから目を離す。
「ああ、怪奇現象だろうね」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

Arachne 2 ~激闘! 敵はタレイアにあり~

ミステリー
学習支援サイト「Arachne」でのアルバイトを経て、正社員に採用された鳥辺野ソラ。今度は彼自身がアルバイトスタッフを指導する立場となる。さっそく募集をかけてみたところ、面接に現れたのは金髪ギャルの女子高生だった! 年下の女性の扱いに苦戦しつつ、自身の業務にも奮闘するソラ。そんな折、下世話なゴシップ記事を書く週刊誌「タレイア」に仲間が狙われるようになって……? やけに情報通な記者の正体とは? なぜアラクネをターゲットにするのか? 日常に沸き起こるトラブルを解決しながら、大きな謎を解いていく連作短編集ミステリ。 ※前作「Arachne ~君のために垂らす蜘蛛の糸~」の続編です。  前作を読んでいなくても楽しめるように書いたつもりですが、こちらを先に読んだ場合、前作のネタバレを踏むことになります。  前作の方もネタバレなしで楽しみたい、という場合は順番にお読みください。  作者としてはどちらから読んでいただいても嬉しいです! 第8回ホラー・ミステリー小説大賞 にエントリー中! 毎日投稿していく予定ですので、ぜひお気に入りボタンを押してお待ちください! ▼全話統合版(完結済)PDFはこちら https://ashikamosei.booth.pm/items/6627473 一気に読みたい、DLしてオフラインで読みたい、という方はご利用ください。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

処理中です...