怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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最果ての鍵

一応の確認

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 もちろん依頼は受ける事となった。今回ばかりはひとねも面倒だとは言わない。
 と、言うわけで図書室を出て少し。学校の最果てに到着。

 森当くんが物珍しそうに部屋を見渡す。ひとねも森当君ほどではないが色々と興味を示しているようだ。
「此処が科学実験室ですか」
「そーです。コーヒーと飴がある素敵な部屋です」
 一年の授業でこの部屋は使わない。しかし下里は勝って知ったる場所らしく緑野に指示されて五人分のコーヒーを淹れてきた。
「それにしても下里、よくこの部屋入ろうと思ったな」
 緑野の近寄るなオーラはドアも壁も貫通して廊下を漂う。用事も無いのにそれを突破できるのは下里くらいであろう。
「なんだかコーヒーの良い匂いがしたので」
「……そうか」
 下里の交友関係に疑問を持つのはもう止めよう。別次元だ。
「ところで器材倉庫というのは何処なのでしょうか?」
「ん、ああ。アレだ」
 緑野が指したのは部屋の端にある扉。こちらから見れば引くタイプである。
 倉庫と呼ばれてはいるが普通に部屋である。
 鍵穴はドアノブについている。教室の入口はスライド式だが他の場所は大体同じドアノブ式だ。
「とりあえず鍵を無くした経緯を教えてもらえますか?」
 森当くんの華麗なる進行に促され、緑野は口から飴を離し、話し始めた。
「数時間前だな、最後の二時間は授業が無かったから昼を食べた後仮眠しててな。
 ああ、器材倉庫の中で。寝るときはいつもあそこだ。
 で、五限の終わりのチャイムで目を覚ました。パソコンを持ってこの部屋に来た。二度寝? したかったけど仕事が残ってたからな。
 三十分程この場所に座って仕事して、USBが必要になったから器材倉庫に取りに行こうとしたら鍵が閉まってたんだ」
 飴が口に入る。最初に声を出したのは森当くんだった。
「その鍵、普段は何処に置いているのですか?」
「倉庫の棚の上、基本的に閉めないからな」
「では、今回閉めたのは」
「わからん、寝ぼけてたんじゃねぇの?」
「なるほど」
 森当くんが納得したタイミングで下里が隣にいる緑野のポケットに手を突っ込む。
「こういうのはポケットに入ってたりするんですよ、全部出してください」
「一応確認はしたぞ」
 渋々と言った様子でポケットの中身が出されていく。
 飴、ガム、謎の機械、部室のエアコンのリモコン……
「なんで持って来てるんですか」
「本体は壊れてなかった。お前らが探してる間にこっちを調べようと思ってな」
 ともかくポケットの中に鍵はなかった。やはり探すしかないらしい。
「ま、聞いた限りこの部屋にあるだろう。手分けして探そう」
 エアコンが壊れているのが相当嫌らしい、珍しくひとねが率先して動き出した。
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