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最果ての鍵
緑野の取引
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誰も部室に入ろうとは言わず、図書室の端のテーブルに座ることにした。
一部で噂になりつつあるらしい怪奇探偵と珍しく根城から這い出た放蕩教師、なんとも奇妙な組み合わせのせいで図書室なのにマトモに本を読んでいる人は少なくなってしまった。
「で、依頼なんだが」
緑野は座るなり切り出した。
「器材倉庫の鍵を無くしたから探してくれ」
「…………」
数秒の沈黙。緑野は言葉を続けない。
「えと、目の前からいきなり消滅したってコトです?」
「いんや、どっかに置いたと思うんだがわかんなくなった」
「つまり、失せ物探しという事でしょうか」
「そういう事」
「……みどセンセ、ひとねちゃんは怪奇探偵なんですよ」
「でも探偵の仕事だろ? 迷子犬探しとかもあるくらいだし」
「いや、そうですけど……」
探偵の仕事ではあっても怪奇探偵の仕事じゃない。そういう雰囲気を感じ取ったのか緑野は話を変える。
「そういえば部室の暑さはなんだ。我慢大会でもするのか?」
「エアコンがお亡くなりに……」
「ふうん」
緑野はゆっくりと立ち上がり部室の前まで行く。そして「入るぞ」と俺たちが返事を返す前に部室へと入っていった。
周りの視線が興味のものから熱気への敵意に変わったので、いやいやながら俺たちも部室に入り扉を閉める。
緑野はエアコンのリモコンを持っていた。ボタンを数回押し、動かない事を確認してポケットに入れる。代わりに出て来たのはいつも緑野が持っている謎機械。
洗濯バサミのようになっているそれでエアコンの配線を挟んでいる。
何かしらの数値と『ピピピ』という電子音、何が分かったのか知らないが緑野は「なるほど」と呟いた。
機械をポケットに戻し、口の端を上げて俺たちの方を見る。
「やっぱお前ら鍵探してくれ」
こちらが断る隙を与えず緑野は付け加える。
「そしたらこのエアコン、動くようにしてやる」
一部で噂になりつつあるらしい怪奇探偵と珍しく根城から這い出た放蕩教師、なんとも奇妙な組み合わせのせいで図書室なのにマトモに本を読んでいる人は少なくなってしまった。
「で、依頼なんだが」
緑野は座るなり切り出した。
「器材倉庫の鍵を無くしたから探してくれ」
「…………」
数秒の沈黙。緑野は言葉を続けない。
「えと、目の前からいきなり消滅したってコトです?」
「いんや、どっかに置いたと思うんだがわかんなくなった」
「つまり、失せ物探しという事でしょうか」
「そういう事」
「……みどセンセ、ひとねちゃんは怪奇探偵なんですよ」
「でも探偵の仕事だろ? 迷子犬探しとかもあるくらいだし」
「いや、そうですけど……」
探偵の仕事ではあっても怪奇探偵の仕事じゃない。そういう雰囲気を感じ取ったのか緑野は話を変える。
「そういえば部室の暑さはなんだ。我慢大会でもするのか?」
「エアコンがお亡くなりに……」
「ふうん」
緑野はゆっくりと立ち上がり部室の前まで行く。そして「入るぞ」と俺たちが返事を返す前に部室へと入っていった。
周りの視線が興味のものから熱気への敵意に変わったので、いやいやながら俺たちも部室に入り扉を閉める。
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何かしらの数値と『ピピピ』という電子音、何が分かったのか知らないが緑野は「なるほど」と呟いた。
機械をポケットに戻し、口の端を上げて俺たちの方を見る。
「やっぱお前ら鍵探してくれ」
こちらが断る隙を与えず緑野は付け加える。
「そしたらこのエアコン、動くようにしてやる」
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